なぜ、芹澤 優は歓声がなくともライブでイヤモニを外すのか?そして、1stフルアルバム「YOUr No.1」の収録曲でこだわったこととは?約3年ぶりの単独インタビューで紐解く声優アーティストとしての流儀
声優アーティストの芹澤 優さんが自身初となるフルアルバム「YOUr No.1」を2022年10月5日にリリースする。
声優としては人気・注目作に次々と出演し、アーティストとしては3度目のライブツアー「Yu Serizawa 3rd Live Tour 2022 YOUr No.1」で宮城、大阪、愛知、福岡、東京と全国各地でのファンを熱くしている芹澤 優さん。
今回の1stフルアルバム「YOUr No.1」はデビューシングルである「最悪な日でもあなたが好き。」やYouTubeで300万再生を突破した「デビきゅー」、芹澤 優 with DJ KOO & MOTSUとしてリリースした「EVERYBODY! EVERYBODY!」と「YOU YOU YOU」などを収録。
さらにこのアルバムのために新録した「シンデレラストーリー」、「Close to you」など5曲も収録されているということで、彼女のファンならずとも必聴の内容となっている。
今回、声優とアーティストの“二刀流”を体現している彼女にアニメイトタイムズはインタビューを実施した。声優アーティストとしての単独インタビューとしては実に2019年11月以来となる。
まずは、アーティストとして、この3年間で印象に残っていることについて訊いた。
なぜ、芹澤 優はステージでイヤモニを外すのか?
――ソロアーティストとしてのインタビューは、2ndシングル「デビきゅー」発売記念インタビュー(2019年11月)以来となります。そこから2022年までで、活動の中で印象に残っていることは何かありますか?
芹澤優さん(以下、芹澤):KOOさん、MOTSUさんと一緒に、「芹澤 優 with DJ KOO & MOTSU」として、「EVERYBODY! EVERYBODY!/「YOU YOU YOU」をリリースしたことですね。それを「ANIMAX MUSIX」で歌えたことは、ソロアーティストとして感動しましたし、印象に残っています。
『i☆Ris』として大型のアニソンフェスに出たことはありましたが、ソロで呼んでいただけるとは思っていなかったというか...もちろん、出たい気持ちはあったけれど、まだまだそんな器ではないと思っていたんです。
横浜アリーナに自分が一人で立っているなんて、信じられなくて...。すごく嬉しかったですし、そこにKOOさん、MOTSUさんがいてくれたのが本当に心強かったです。
あとは、「デビきゅー」のMVが300万回以上再生されているのも驚きましたし、ありがたいなと思いました。
――なるほど。2020年以降は、コロナの影響でライブの形も変わり、無観客での配信ライブなどが増えましたよね。芹澤さんも2020年12月に「Yu Serizawa 26th Birthday Live ~BLUE BLUE PARTY~」でオンラインライブを実施していました。
芹澤:そうですね。最初のころはソロデビューして数年で持ち曲も多くない中で、できることだけをやっていた感じだったんですが。
ただ、コロナ禍に入ってから、ファンに会えないという苦しさはありつつも、妥協して何かをやるのではなく、「今しかできないものをもっと追及したいな」と思うようになりました。
自分のライブプロデュースにここまで関わっている声優もあまりいないと思っていて。
私が思う、コロナ禍でしかできないライブをやろうと意識するようになりましたし、年中ライブのことを考えるようになった気がします。
「ピンチはチャンス」という言葉があるように、「いつも通りのライブをオンラインでやる」ではなく、「声が出せない環境、配信でしかできないライブって何だろう?」といっぱい考えられるきっかけになりました。
――実際、「Yu Serizawa 26th Birthday Live ~BLUE BLUE PARTY~」では、セットが変わっていく演出がありましたね。
芹澤:あれだけセットを組んで、ライブをやる方もあまりいらっしゃらないと思いますし、「Yu Serizawa 2nd Live Tour 2021 好きな人がいるだけで。」も、ファンのみんなは声が出せない状況だったので、朗読パートを作ったり、バラードも増やしたりと、構成を練ってみました。
もし声が出せる状況で、あのライブをやったら、「もっと叫ばせてくれよ」と思うかもしれなかったので(笑)。あのライブはあの時期だったから生まれたものだと思いますね。
――3年のアーティスト活動を見ていて、個人的な感想になるのですが、芹澤さんのライブがいわゆる楽しく騒げるライブから、思わず泣けてきたり、胸に染みる時間へシフトしてきた気がします。
芹澤:あはは(笑)。泣かせにいったりはしていないですが、ファンの方の目線が変わってきているのを感じたからかもしれません。ライブというのは間違いなくファンのみんなが一番大事で、今の皆さんを見た時に、「楽しいだけじゃないものも受け取ってくれるんじゃないかな」と思ったんです。
あとは純粋に、その時の私に不安な気持ちがあったからというのもあると思います。去年は声は出せないし、みんなの顔がマスクで半分しか見えないし、不安がかなりありました。
でも「それを乗り越えなきゃ」という思いが乗って、泣けるライブになったのかもしれません。
ライブはその時の私をすごく表現するものだと思っていて。「好きな人がいるだけで。」というタイトルも、ファンの方に会えない時間を経て生まれたテーマですし。ファンの方からもらったものや、それを受けての思いを表現すると、今は「楽しい」より「泣ける」ものになる、ということだと思います。
――なるほど。ちなみになのですが、客席から声が出せない状況でも、芹澤さんが本来コールが響くシーンでイヤモニを外す姿にグッときている方も多いと思います。
芹澤:あれはもうクセですね。あとは「コロナ禍でも変わんねーぞ、私は」とファンのみんなに感じてほしいのもあります。
あと、私には皆さんの声がちゃんと聞こえてますよ(ニッコリ)。
――心の声がステージにはちゃんと届いている、と。ソロアーティストとして5周年を迎えました。節目だから何かが大きく変わるということは無いと思いますが、最近こだわるようになったことなどはありますか?
芹澤:ビジュアルまわりは、年々綺麗にならなきゃどうしようもないと思うので、「絶対太らないぞ」「顔ちっちゃくするぞ」「可愛い衣装着るぞ」というようにこだわっています。
自分が誰かにとって、憧れの存在になってきているのかもしれないと感じることが今年は多いんです。女性ファンの割合も(ファン全体の)半分近くに増えている感じがして、その子たちが「優ちゃんみたいになりたい」とよく言ってくれるんです。「好き」じゃなくて「なりたい」ってすごいことだな、と思いました。
「声優もアイドルもやりたい」と、まさに私のようになりたいと思ってくれた子がいるのに、「最近、劣化してきたな」とか「歌ヘタになった」とは言われないようにしたいので、絶対に質が落とさないようにと思っています。
――自身を磨くことを継続している、と。
芹澤:ええ。後は、こだわらなくなった..ですかね。
――こだわらなくなった?
芹澤:そうですね。歌う楽曲の方向性やライブの演出などは、前よりこだわらなくなりました。いろんな意見を聞いてやっていきたいな、という気持ちが年々強くなっていると思います。
――以前より表現できる幅が広くなったからこその意識の変化なのかもしれませんね。
芹澤:自分にちょっと自信が持ててきたからか、誰かに「これやってみなよ」と言われた時に、「それ苦手なんだよな」と思っても、「やってみたらできるかも」と考えるようになりました。人にお任せできる部分は、けっこうお任せするようになったと思います。