獣とはすべての表現の縛りを乗り越えられる唯一の存在――悠木碧さんがシナリオを手掛ける漫画『キメラプロジェクト：ゼロ』第1巻発売記念インタビュー

初期案は“SNSで応援される魔法少女”!?

――設定自体かなり凝られていますよね。たくさんアイディアもあったとのことで。

悠木：実は、最初期は「SNSで応援される魔法少女」の話を書こうと思っていて。でも魔法少女ものがすごく増えたので、これはちょっと違うなと。書いていても私の癖に刺さらなかったんですよ。

――そちらもすごく気になる内容です。

悠木：“SNSで応援される魔法少女”って……要するに私のことじゃないですか（笑）。キメリオたちの、言葉によって性質を変容するというのも、つまりはそういうことなんです。

そこから“SNSで応援される魔法少女”を膨らませていったらキメリオという別の異質な生き物が生まれて、そして人間と対比するという構造にたどり着きました。

――最初はいくつか案があったんですか？

悠木：そうですね。その中でも『キメプロ』はすごくしっくりきたといいますか。グッときた度合いが高かったので、それからは『キメプロ』一本で進めています。

獣は“自由”が詰まったコンテンツ

――ずばり獣の魅力とは？

悠木：すべての表現の縛りを乗り越えられる唯一の存在なんです。表現において今っていろいろと難しいじゃないですか。

――えぇ。クリエイターさんたちは大変な部分もあるでしょうね。

悠木：いろいろな人たちに配慮しながら物を作るのはすごく難しいと思います。でも、キメリオたちはファンタジーでありつつ、可愛くて、セクシーな部分もあって。獣という存在はこれからの時代、最も自由に表現を出来る存在だと思いますし、表現したいことを人に代わって表してくれる“自由”が詰まったコンテンツなんですよ。

――獣をひとつの概念としても捉えられているんですね。

悠木：フォルムももちろんめちゃめちゃ好きです！　人にはない曲線の良さであったり、人にはない質感であったり。そしてその良さを人に想像させるのが獣たちで。人間の場合、肌の質感であったりはあまり変わりませんが、想像上の獣たちはまだ誰も触ったことがないじゃないですか。

――たしかに創作で見る獣たちはどんな肌触りなのか、とか気になることがあります。

悠木：質感を想像させるキャラクター性って、ものすごく艶かしくて。それだけで1個表現が加わっているんですよ。想像する質感は皆それぞれ違うでしょうけど、出会いを想像させるだけでも大きなエンタメになっているなって。それが人間のキャラクターより獣のキャラクターに魅力を感じる理由です。

あと、特装版のドラマCDには音が付いているんですけど、キメリオたちの足って、それぞれ違う材質で出来ているので、「この子は羊です」「この子は鳥です」とか、「飛んで移動します」とか。ドラマCDではそれが音で再現されていて大興奮しました！　いつもお世話になっている今野さんという音響効果の方に頼んだんですけど、プロはすごいなと思いましたし、ひとつのアートになっていて。そしてそれもキメリオたちが獣だからこその表現で。改めて、想像した分だけ理想になっていくなと感じました。

――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

悠木：ここまで応援していただいた方も、これから『キメラプロジェクト』に触れていただく方も、皆さんここまでインタビューを読んでいただいてありがとうございます。

本当に私の性癖だけで作ったぞ、という一作になっております（笑）。多分、グッとくる人にはとことん刺さるという自信があって。なぜなら私が大興奮しながら作ったからです！（笑）

「私も興奮したよ！」という方がいらっしゃったら……いつか一緒にお酒を飲みに行こうね！　そして『キメラプロジェクト：ゼロ』をぜひお手に取っていただけたら幸いです！

[インタビュー MoA]