音楽
ブルエンの新たなアンセム「Z.E.R.O.」と「青」制作秘話を明かす

「作品との出会いによって、新たな僕らが開花しました」BLUE ENCOUNTインタビュー『コードギアス 反逆のルルーシュ R2』エンディングテーマ「Z.E.R.O.」創作の経緯を語る

自分のフィルターから見たルルーシュの話をしよう

――改めて、『コードギアス 反逆のルルーシュ R2』のエンディング主題歌のお話をいただいたときのお気持ちを教えて下さい。

田邊:実はお話をいただくまできちんと作品を見たことがなかったんです。もちろん名前は知っていたので、「すっげえありがてえ!」って思っていたんですが……それこそORANGE RANGEさん、FLOWさんなどの先輩方が主題歌のほうをチェックしていたんですよね。

で、お話をいただいた前後に、Netflixで配信がはじまってたんですよ。1話見たら止まらなくなってしまって。「これ、本当に15年前の作品?」と思いました。今でも通用するストーリーボードだし、まさにさっき言っていたハリウッドっぽい展開だなって。こんな素晴らしい作品を日本で作っていたんだと驚きました。それで一気に見て、その気持ちのまま歌詞を書きました。

――作品の本質をついた歌詞ですよね。

田邊:オープニングを飾る先輩方はずっと作品に携わられてきてる方なので、僕らは「最終回の話をしよう」というか。自分のフィルターから見たルルーシュの話をしよう、と思って書きました。

――最終回まで放送されたことのある作品だからこそ、ネタバラシもできるというか。

田邊:そうなんです。ゼロレクイエムを経て世界が平和になった、そのルルーシュの功績を讃えるレクイエムにしたかった。まさにそういう楽曲になったように思っています。エリア11と呼ばれてきたものに対しての奪還というか。あくまでそこは日本人としてのゼロで挑んでいるなと思っていて、最後だけ敢えて「零」と漢字表記にしました。

――最後の言葉は<零になって壊す>ですが、冒頭はまるで聖歌のようなシンガロングではじまり、その直後に<大義を貫くため>という宣言するかのような言葉があって。この作品ならではのはじまりだなと思いました。

田邊:おっしゃるとおりです。最初、正義にしようかと思ったんですよ。でも正義にしてしまうと……なんか違うのかなと。そもそもルルーシュは正義と思ってたのかなと、僕自身考察していて。でもそこに属していた黒の騎士団や、敵……それぞれに善というか、やらなければいけないことがあって。それは平たく言えば大義になるのかなと思って、一言目で大義という言葉を使いました。でも一言目でなかなか大義って使わないので……学校の校歌のようというか(笑)。

――ある種、軍歌に近いような気もします。

田邊:あ、まさに軍歌の感覚もあったんです。うちのじいちゃんが軍歌を歌う人だったんですよ。カラオケがすごく好きで、よく一緒に行ってて。僕は当たり前にヒットチャートを歌うんですけど、それが終わったら軍歌が流れ出すっていう。うちのじぃちゃんは中国上海駐屯地にいたから中国語がすごく上手で。ずっと中国語の軍歌を聴いていました。

でも軍歌のテイストになりすぎてしまうと思想が強めになってしまう。それを中和したのがレクイエムというジャンルでした。だからこそ最初は聖歌隊が歌っているかのような綺麗さではじまって。バンドインしたら、その歌メロが実は仲間に掲げて歌っているものだった……っていう幕開けにしたかったんです。

それで冒頭はメジャー調のコードで、すっごく綺麗に味付けをして。鍵盤とアコースティックギターだけで味をつけて、ばーんと入っていくっていう。この生命、仲間に捧げる……っていう感覚で歌っているような感じ。見終わってすぐに書いた歌詞ということもあって、その気持ちが溢れました。

――最初の歌詞の時点で、現在の歌詞に近いものが生まれていたんですか?

田邊:そうですね。でも当初は最後のサビが最初に来ていたんです。最初から(答えを)言っちゃおう、って。でもそれはさすがにアニメサイドさんから「ちょっとネタバレになるかもしれませんね」ということでアレンジしたんですけど、自分の中では仕上がっていました。ラスサビだからこのワードを入れたのではなくて<僕を殺して>というワードを入れたかった。

――ああ、なるほど。その言葉はいつものブルエンからすると、意外なワードでもありますよね。タイアップならではの化学反応という感じがします。

田邊:<僕を許して>とかね。普段同じことを言うんだったら「ごめんね」「ごめんなさい」とかだったと思います。<聖者になんてなれないと本当は知っていたのに>とかも、この作品を見なかったら出てこなかったワードだろうなと。この作品のおかげで今まで出てこなかったセンテンスがばーっと生まれてくるようになって。作品によって自分の中の新しい部分が出てきたというのが面白いです。

作品との出会いって本当に大切だなと思いました。自分の中にない色があると創作意欲を掻き立てられますね。

――制作エピソード、もっとおうかがいしたいです。

田邊:あ、それで言うと……仮歌を録る前は、サビが全然違うメロディだったんです。

――えっ、そうなんです?

田邊:はい。自分の中ではまったく気に入ってなくて。スタジオで曲を作る日に「この曲のままだと良くならないかも」「多分採用されないな」「納得いかないな」って思いながら家を出たんです。で、いろいろな交通手段を経て、乗り換えで渋谷駅の銀座線のホームに立ったときに、このメロディが浮かんできました。

――新しくなった銀座線のホームで(笑)。

田邊:そうです(笑)。おっと、これは合うんじゃないか!と思って。そのまま頭の中でそのメロディを歌いながら、忘れないように忘れないように……と、電車に乗って、スタジオに行って。で、スタジオに入ってすぐ「おはようございます! すみません、これ録っていいですか!」って。で、一気にこの曲が主役になりました。

高村:前のメロディとか全然思い出せないくらい、一気に持っていかれましたね。世界が一気に広がった。

田邊:前のものは、エンディングとしては成り立っていたと思うんです。でもそれだけだと納得いかなくて。このサビになったときに、オープニングでもエンディングでもどっちでもいける曲になったなと思いました。その物語のどこに入っても大丈夫だなと。

――江口さん、辻村さんの反応はどんな感じだったんですか?

江口:実はもう1曲、別の候補曲があったんですよ。そっちのほうになりそうだな、と思いながら制作を進行していて。でもこのサビに変わった瞬間に「こっちのほうが合いそうだ」って。

田邊:もう1曲も今までになかったような、ダークな楽曲になったんです。それもめちゃくちゃ格好良いとは思ってるんですけど、それを遥かに超える出来でした。こっちのほうが作品を彩れるし、抱きしめられるしって。

辻村:僕は壮大な曲だなと思っていました。もらったときにはイントロがついていて、それが頭から離れなかったんです。太陽の日差しを見ると同時に流れてくる現象がありました。そのたびに、この曲、すげえ良いなって。あとは、自分たちがライブでどのような創造ができるかってところも大切にしているんです。でもバンドの意思として、この歌詞を伝えるというのも違和感がないですし。

「ポラリス」(2019年発表『僕のヒーローアカデミア』第4期オープニングテーマ)も、バンドの意思と重なっていたんですよね。そういうことが今回も出てきたんじゃないかなと思いました。プラス、ダークな世界観というところで、音を重くしたり、あえてラフにやったりっていうところも想像できて。そのイメージを膨らませながら作っていきました。

――現在回っているツアー"BLUE ENCOUNT TOUR 2022-2023"でも披露されているんですよね。

田邊:そうですね。ツアーのセットリストに欠かせない曲になりました。歌ってるとき、気持ちいいんですよね。洋楽のアーティストになってる、俺って(笑)。

一同:(笑)

田邊:あと、歌ってるときに別の自分が憑依するんですよ。言葉が出てきたこともそうですけど、歌録りのときもそうで。サビもファルセットでいってますけど、もともとは地声で歌っていて。でも何回も録って、聴き比べていくうちに「ここは裏声でいきましょう、ラストのサビは一行目だけ地声で、次は裏声で」とか。そこも新たな自分が憑依しました。だから気持ちがいいんです。

――最高の曲ができましたね。

田邊:そうですね。この作品をもって、新たなブルエンが開花したなと思っています。

「青」はブルエンの主題歌

――「Z.E.R.O.」には<淡い黒だった>という言葉がありますが、そこから一転、2曲目は先行配信されている「青」。BLUE ENCOUNTを象徴する曲となっていますが、改めてどのような決意が込められた曲なのかを教えて下さい。

田邊:色ばっかり使っていますね(笑)。これはアニメ的アプローチで言うとしたら、BLUE ENCOUNTというアニメの主題歌です。その感覚でしかないですね。これだけキャリアを重ねてきた今だからこそ、ノンタイアップで世に放ったときに「BLUE ENCOUNTの主題歌だ」と思ってくれたら嬉しいなと。

それでいて(聴いてくれた)その人の主題歌にもなる。自分たちに言ってるし、自分たちの背中を押してる曲だけど、気づいたら誰かの背中を押してる曲になればいいなと思っていました。これって、BLUE ENCOUNTのメッセージソングの昔からの作り方なんですよね。そのムーブメントで作ることができた感覚があったので、これもまた歌ってて気持ちが良いです。良いものって、総じてそういうものなんだなと思っています。

MVもタイアップもない曲ですけど、今年の夏フェスはすべてこの曲で締めて、それをみんなが聴いてくれていて。アニメのクライマックスくらいみんなの拳が上がっていました。まさにBLUE ENCOUNTの今の名刺になったなと思っています。久しぶりにこんなにも作れたなと。でも歌詞は難産でしたね。

――自分たちの主題歌なわけですもんね。改めて対峙しなければいけない。

田邊:そうなんですよね。それこそ5年前の僕らと、今の僕らは全然違っていて。今はどんな僕らになったんだろう?って見つめ直した結果、こういうAメロになりました。選んだ今が間違っているか、間違っていないか、考えた上で、それを考える必要はない。そういうものを書けたのかなと。

――「Z.E.R.O.」も「青」もそうなんですけど、知っている人から見るとものすごいストレートなタイトルですよね。

田邊:そうですね。分かりやすい。タイトルはいつも……めちゃくちゃ迷うんです。タイトルをむしろ最後に持ってきます。ただ「青」に関しては最初から決まっていましたが、「Z.E.R.O.」は最後の最後まで迷ってました。

今はCDで見るより先にスマホの画面でタイトルを見て、選んで、人差し指で再生するというのが当たり前になってきて。だからよりタイトルは大切だと思います。すごい時代になったなとは思いますけど、表現者としてタイトルでも魅せるのは正しいことなのかなと思います。

――ツアーの最終公演が日本武道館にて2023年2月11日に行われます。武道館後、辻村さんが活動拠点をアメリカに移すことが発表されました。新しいスタイルのブルエンも楽しみです。

辻村:3月からアメリカに行くことになりました。こういうタイミングで「青」を書いてくれたのはありがたいです。だからこそ、思い切って行く意味もあるのかなと思っています。やっぱり中途半端な気持ちでは行きたくなくて。今もこれからもメンバーですけど、離れたらライバルにもなると思っていて。違った生活を送るからこそ、今後、自分なりの挑み方ができると思います。だから修行をしにいくような感覚でもあるんですよ。また(日本で)合流したときに、良い感性が各々働いて、また良い楽曲ができたらなと思っています。

高村:うんうん。

田邊:互いの成長をぶつけ合っていく形になるのかなと。彼が得たものは楽曲を通して伝えていけたらと思います。これで一緒にライブをやったときには、また違った楽しさがあると思いますし。

辻村:帰ってきたときに「青」をやれるとなると、それだけで染みると思います。やればやるほど、「青」という楽曲の濃さが変わってくるんだろうなと。

田邊:僕はこれからも辻村に手紙を書くように……ある日突然、辻村のことを書いた曲を作ってみようかなと……。

一同:(笑)

――それこそ、ものすごいストレートなタイトルになるかもしれませんね(笑)。

田邊:自由なスタイルの曲も作っていきたいなと思いますし、これからもアニメという物語の一部にもなれたら嬉しいですね。そして、これまでずっとやってきたことは、世界のどこにいてもできるよ、ってことを提示していきたいなと思っています。今、すごくワクワクしているんですよ。その気持をツアーで表現できていますね。すごく良いツアーです。武道館はそのまま表現したいなと思っています。

[文・逆井マリ]

BLUE ENCOUNT 楽曲配信

■「Z.E.R.O.」
https://kmu.lnk.to/ZERO

■「青」
https://kmu.lnk.to/_Ao

BLUE ENCOUNT プロフィール

Vo. Gt. 田邊駿一、Gt. 江口雄也、Ba. 辻村勇太Dr. 高村佳秀

熊本発、都内在住4人組。

エモーショナルかつ等身大の言葉の数々をストレートに伝えるライブパフォーマンスに多くの共感を集める、超共感型エモーショナルロックバンド。

2014年9月にEP『TIMELESS ROOKIE』でメジャーデビュー後、数々のアニメ主題歌やドラマ主題歌を担当し、2021年4月には自身初となる横浜アリーナ単独公演2daysを敢行。

2022年6月にはバンドとしての決意を示す最新楽曲「青」をリリースし、来年2月に約六年半ぶりとなる武道館でのワンマンライブを控えている。

◆HP:http://blueencount.jp/
◆Twitter:https://twitter.com/BLUEN_official
◆LINE公式アカウント:@blueencount
◆Instagramアカウント:@blueencount_0fficial

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