“誰かを肯定できる力”を贈りたい。今欲しい言葉を詰め込んだ、伊藤美来さんの4枚目のアルバム「This One's for You」インタビュー
声優・伊藤美来さんの4枚目のアルバム『This One's for You』が2023年2月15日(水)にリリースされた。今回も完成度の高い、最高傑作になったと思っている。
これまでリリースしたシングルやカップリングの曲を、アルバムのどこに入れるのか。曲順を最初に決めてから新曲を発注していくというスタイルで伊藤美来のアルバムは作られているそうだが、その作り方のおかげで、アルバムの流れが素晴らしい! 曲単体で聴くような時代になってきた中で、それは珍しいことなのかもしれないが、彼女の作品をぜひアルバム通して聴いてほしいと思っている。
今回は伊藤さんに、アルバム収録曲の魅力をたっぷり語ってもらった。
チーム伊藤美来としてちゃんとやれている! 身についてきた自信
──今年は声優として、デビュー10年目の年になるんですよね。やはり成長は感じますか?
伊藤美来さん(以下、伊藤):15歳にデビューしたので、そこから考えると大人になったなぁと思います(笑)。がむしゃら感みたいなところから、ちゃんと自分で考えて理解できる脳みそができたんじゃないかなと……。以前は変な方向に考えたり、考える余裕もなかったりしたんですけど、今は自分自身の在り方や「こうなりたい」「こうでありたい」というのが自分の中に生まれてきたと思うので。
──声優として現場に出る機会が増えたのも、とても大きかったですよね。
伊藤:そうですね。現場に出させていただくと、たくさんの声優さんにお会いできますし、先輩方のお芝居を近くで見ることができるので、そこで吸収できることは吸収して、自分のものにしようと思っていました。
──ディレクションに応える瞬発力が声優には必要だと思いますが、それも経験して身につくものですからね。
伊藤:これをやってと言われて「違うか……」みたいな感じで、何度も試させてもらって時間がかかってしまうこともあるんですけど、それでもいい作品ができるなら頑張るぞ!って思いながら、食らいつく感じでやっていました。
──そのおかげなのか、役の幅も広がってきた感じがしていて、今も『久保さんは僕を許さない』で演じている久保明菜はお姉さんの役ですし、『スパイ教室』のグレーテもしっかりした感じだなぁと思いながら見ています。
伊藤:本当にたまたま赤い髪のキャラクターが続きましたけど、明菜に関しては、自分にも弟がいるので、明菜が妹にうわ~ってなっている感覚は、わかるな~と思いながら演じていました。
……でも確かにそうですね。私としても、新しい扉を開けなければ!と思っているので、死にものぐるいでアフレコに臨んでいましたね。
──音楽活動も10年となりますが、ソロでデビューしたのは2016年になります。ソロも10年、さらにその先を目指していくとは思うのですが、こちらもデビュー時からの変化はありますか?
伊藤:当時から比べると、自分の意見をしっかり伝えられていると思います。こういう曲を歌ってみたいとか、同じ目線で話せるようになってきたかな。
──最初から制作に積極的に携わるスタイルだったのですか?
伊藤:どうなんでしょう。20歳でのデビューで、その頃はどこへ行ってもあたふたしていたから(笑)、見かねて、大人の方たちで色々なことは決めてくれていたと思います。楽曲も選んでもらって、私はそこに全力を注ぐ、みたいな。
その中で、私はこういう感じの音楽が好きだなとか、歌いやすいなとか、曲を作るモチベーションとかも含めて、自分自身をよく理解できるようになってきたのかなと思います。
──マインド的に変わったことというと?
伊藤:自分がやっていることに対して、ちょっとずつ自信が持てるようになってきました。以前は「これで本当にいいのかな?」とか「全力でぶつかったけど、認めてもらえたのかな」って思っていたんです。たとえばネガティブな意見があったら、それを見てしまって不安になったり、周りの意見に左右されがちだったんですね。でも今は、まったく同じような意見が来ても、私はちゃんとやれてるぞ!という自信が身についてきたと思うんです。
──その自信はどうやって得られたのですか?
伊藤:ポジティブな意見にちゃんと目を向けられるようになったと思います。応援してくださる方々の意見を優先的に聞けるようになったんですよね。あとはやっぱり、たくさん苦労を重ねて、大変だったな、頑張ったな!という経験をしていくと、それが自信にも繋がるんだなって思いました。私たちは間違えていないんだ! チーム伊藤美来として、ちゃんとやれているんだ!と思えるようになったというか。
──歌に対するアプローチも自分で判断していったり?
伊藤:こっちもいいけど、こういう歌い方でやってみてもいいですか?みたいなことは言えるようになって、より考えるようになったし、自分で選択肢が持てるようになりました。試してみて、それが良ければそれを使うし、使わないときもあるし、ディスカッションができるようになってきたんですよね。
──今回のアルバムでもいろんな歌い方をしていますしね。
伊藤:そうですね。いろんな挑戦をしたので、いろんな歌声が詰まったアルバムになったと思います。