マンガ・ラノベ
ライブ公演『ぼくの地球を守って』レポート|30年の記憶と記録

唯一無二の傑作漫画“ぼく地球”が音楽、朗読、歌、映像で蘇る 「ぼくの地球を守って LIVE 〜BRIDGE of LIGHT〜」公演レポート

1986年から1994年にかけて「花とゆめ」で連載された『ぼくの地球を守って』(日渡早紀/白泉社刊)。

音楽、朗読、歌、映像で構成する豪華なライブ公演「ぼくの地球を守って LIVE 〜BRIDGE of LIGHT〜」が2023年3月11日(土)・12日(日)、埼玉のところざわサクラタウン・ジャパンパビリオンホールにて開催された。

今なお世代を超えて読み継がれる不朽の名作が、音楽、朗読、歌、映像で丁寧に表現されたライブ公演(12日・昼公演)の模様をレポートとしてお届けする。

一気に蘇る愛おしい記憶

坂口亜梨子(声:白鳥由里)と小林輪(声:冬馬由美)による開演アナウンスで客席の期待が最高潮に達する中、スクリーンに映し出されたのは1991年の東京上空。そして流れる音楽は、名盤として名高いイメージアルバムより、物語の始まりを予感させる『1991 TOKYO』。クラクション、雑踏、団地…そして東京タワー。

32年の時を飛び越え、会場は一気に主人公・亜梨子が月を見上げた1991年の東京へとタイムスリップしていく。

ぼく地球ライブの為に編成された、指揮者・一色知希氏率いる“ぼく地球管弦楽団”による演奏は、バックスクリーンに実写映像、アニメ映像、そして原作イラストを背負いながら、『ぼく地球』の世界を深く色彩豊かに描いていく。

物語の始まりを予感させる『おおいなる光〜宇宙からの音楽(メッセージ)〜』 、主人公・坂口亜梨子の日常が目に浮かぶような『時の雫』、小学生の小林輪が新体操のリボンをくるくるさせながら登場しそうな『あ・ぶ・な・いBubble Gum Boy〜輪〜』と、長年CDで聴き続けた楽曲たちを生演奏で聴くという幸福に、ギュッと心が締め付けられるような感覚に陥っていく。

そして、スポットライトに当てられ登場したのは、亜梨子(白鳥由里)と輪(冬馬由美)。覚醒する前のガキンチョ輪と、引っ越してきたばかりの東京に戸惑っている亜梨子の出会い。白鳥さんと冬馬さん、ふたりの声を聴くだけで、台詞を聴くだけで、全てのシーンが頭の中で甦ったという方も多かったのではないだろうか。

「ねぇ——東京タワー、あれ、僕にくれない?」

まさかその台詞を、2023年に自分の耳で聴くことができるなんてと、張り詰めていた感情が崩壊する。

場面は変わり、2人の前世の記憶となる“月基地”へ。

動植物と心を通わせることができる、キチェ=サージャリアンの木蓮(篠原恵美)と、孤独を抱えた天才エンジニアである紫苑(速水奨)との出会い。不器用なふたりが真逆の感情を抱えて月へ行き、向き合い戸惑う姿が、繊細に声で表現されていく。

続く演奏『ムーン・パラダイス』と『透明な未来』は、紫苑が養父ラズロ、ジーニャン星系の珍獣キャーと過ごした78日間の記憶を辿っていく。チェロが紫苑の心を、ギターがラズロの心を歌うように、重なり合って奏でられていく。

紫苑への想いが昂まった中、再び速水さんが登場。

一度は帰る場所を見つけた紫苑が再び一人になり、誰とも心を通わせられない苦しさと寂しさに苛まれる姿、同級生の玉蘭に対して抱くコンプレックス……彼の葛藤に、胸が押しつぶされそうになる。

没入感が高まる中、濵田理恵さんが登場し『夢のすみか』を生歌唱。間奏ではソロバイオリンの美しい音色が響き渡り、濱田さんの滑らかで芯のある歌声に会場全体が酔いしれた。

 

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