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一点モノで勝負するべき。『マイホームヒーロー』諏訪部順一が語る演者としての矜持

この作品をアニメ化しようと思った人たちはチャレンジャーだと思います──ジェットコースタークライムサスペンス『マイホームヒーロー』哲雄役・諏訪部順一さんインタビュー

「この作品をアニメ化しようと思った人たちはチャレンジャーだと思います」

──アフレコのお話についても、もう少しお伺いさせてください。掛け合いが大切な作品だとも思うのですが、今回はどういった環境でアフレコされていたのでしょうか?

諏訪部:分散収録だったので、ブース内のマイク本数と同じ数、最大4人まで同時に収録できる環境でした。鳥栖家の他二人を演じる大原さやかさんと白田千尋さんとは一緒に掛け合って演じられました。家族のシーンは哲雄のベースになるものなので、一緒にやれて本当に良かったです。

その反面、敵対している人たちとはほとんど御一緒できずで。それこそ、麻取義辰役の三木眞一郎さん、窪役の大塚明夫さん、志野役の山寺宏一さんとはスタジオで一度もお会いしていません。ですから、オンエアを観るのが楽しみです。まぁ、一緒に演じられてはいませんが、そこはプロなので(笑)。どうぞご安心ください。しっかり噛み合ったバチバチの掛け合いが繰り広げられていることと思います。

第1話の収録を始める前に、主要関係者のご紹介タイムがあったのですが、亀井隆監督が「この作品、正直に言うとテレビアニメにはしにくい作品です」的なことをおっしゃって。キャスト陣も思わず「ですよね〜」と(笑)。「マイホームヒーロー」をアニメ化しようと思った人たちはチャレンジャーだと思います。表現の制約もある中、最大限「面白いものを作ってやろう!」という気概で取り組まれたことでしょう。重要なポジションを任されたからには、期待以上のものを出さなければ! と身が引き締まりまる思いでした。

──大原さやかさん、 白田千尋さんとは収録を重ねていく上で、絆が深まっていったところも?

諏訪部:歌仙役の大原さんは同じ事務所の後輩ですし、付き合いも長いので、自然な近しい空気感は演技の上でも出せているのではないかと思います。零花役の白田さんは今回初共演でしたが、彼女とは実際に親子くらいの年齢差があるので、これまた役同士のような空気感は作りやすかったですね。これくらいの年頃の娘がいたとしたら……とイメージするのが楽でした(笑)。

収録の合間のちょっとした雑談で、白田さんから親御さんの話をいろいろと伺いました。その関係性や思いなどの情報は、零花と掛け合うシーンを演じる上で非常に参考になりました。娘を持つ父親のリアリティが増したと思います。

──ご一緒には収録できなかったとのことですが、哲雄と敵対するキャスト陣も豪華ですよね。

諏訪部:そうですね。半グレチーム、とてつもなく強敵ですね。自分が演じるのは「強い役」ばかりというイメージをお持ちの方も多いようですが、このラインナップを知って、そういう皆さんも安心されたのではないでしょうか(笑)。

収録をはじめて意外だったのが、監督から「もっと若く」というディレクションを受けたことです。くたびれたおじさん感をしっかり出して演じたところ「そうではなく……」と。まぁ、現代の47歳は確かにそこまで老けてないですからね。それに自分の実年齢より若いですし(笑)。というわけで、当初イメージしていたよりも若めで演じることになりました。

また、「もうちょっとカッコ良くしてください」というディレクションもありました。練り上げた自分の計画を実行している時などは、カッコ良くキメて欲しいと。表面的なものではなく、事を成し遂げようとする男の覚悟から滲み出てくる内面的カッコ良さ。そういったものがしっかり伝わるよう頑張りました。多面的に表現することで、哲雄という人物により厚みが出たように思います。

──諏訪部さんの中でヒーロー像のようなものはあるのでしょうか。

諏訪部:自分としては、困っているときに助けてくれる存在がヒーローだと思います。解決できない大変なことに直面しているときに、救いの手を差し伸べてくれたり、状況を大きく好転させてくれたり。

それにしても、『マイホームヒーロー』というタイトルだけ見ると、どんな内容かわからないですよね。ほのぼのとした家庭の日常を描くような、コメディ系作品だと思っている人もいるのでは? 実際はその真逆のような血みどろの物語ですが(笑)。

どの作品にも“一点モノ”で勝負する

──ところで諏訪部さんはホラーやミステリー作品のファンであるということもたびたび公言されています。また音楽や映像企画の構成やプロデュース、作詞やデザインなど作り手としても活躍されていますが、そうした経験がストーリーテラーである哲雄役に生きた部分はありましたか?

諏訪部:ホラー作品、ミステリー作品はこどもの頃から好きです。読者、視聴者として多くの作品に触れてきました。その中で蓄積してきた様々なものが、自分の表現の下支えになっているのは間違いないと思います。まぁそれはホラーやミステリーに限った話ではありませんが(笑)。

しかし、過去見聞きして蓄えてきたものをテンプレートとして活用しているわけではありません。それらのメモリーは、演出サイドの要望を汲み取る時に共通言語として使用することが多いですね。新たな役を演じる時は、既成の〇〇みたいな感じ、という事は絶対にしません。新たに向き合うその人物はオンリーワンの存在ですから。役作りは常にオーダーメイド。特注の一点モノです。

だからこそ原作がある作品に出演する際は、あらかじめしっかり読むようにしています。周りに流されるような役や、その世界のことを理解していない様な役の場合は、むしろ先のことを知らないでおいた方がその場の感情をリアルに表現できるかもしれませんが、点で物語を見ていると先々辻褄が合わなくなるようなこともぶっちゃけあります。連載途中でいつの間にか路線変更するキャラって時々いますよね(笑)。アニメは後出しですから。原作ではもはやできないそういった整合性の微調整を演技のニュアンスでできることがあります。演出サイドさえ見落とすかもしれない機微を取りこぼさず拾っていき、キャラクターの骨子がよりしっかりとすれば、魅力もさらに深まると思うんですよね。「マイホームヒーロー」も、先を知っているのと知らないのとでは、人物の理解度が大幅に変わってくる作品です。ですから、あらかじめ世に出ている分の原作はしっかりと読み込みました。

──諏訪部さんのお仕事に対する矜持を感じます。

諏訪部:だけど難しいですよね。本番ですべて思った通りに演じられるわけではないですし、思った通りにやれてもイマイチに感じられることもありますし。リテイクにならなかったセリフでも、たまに「あそこもう1回やらせてもらえませんか」とお願いすることがあります。他のキャストのご迷惑にならないようなところでしたら。本来はそういうの禁じ手なので、どうしても…… な時だけ(苦笑)。

──諏訪部さんほどの方でも、そう思われることがあるんですね。

諏訪部:まだまだ小僧みたいなものですから(笑)。それに、すべてに満足がいくようになったら、成長は止まる気がするんですよね。

多くの人がそれぞれのポジションで最高を目指してこそ、より良い作品が生み出されると思います。どんな作品でも、どんな役でも、等しく真摯に向き合って、全力で取り組まなければならないといつも思っています。

(C)山川直輝・朝基まさし・講談社/「マイホームヒーロー」製作委員会
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