「自分がやってきたことを武器に」「ガッツが大事」大久保瑠美さん、駒田 航さん、白田千尋さんら歴代受賞者が語る、81オーディションまでの道のり【短期連載第3回】
大久保さんが一生忘れられない「81ACTOR'S STUDIO」の特別授業
──ここからは「81ACTOR'S STUDIO」時代のお話をお伺いさせてください。現在、81ACTOR'S STUDIOには、ことば(演技実習)の授業の他、声楽、肉体訓練(ダンス、日本舞踊など)、特別授業、スタジオ実習などの実践的な授業があります。皆さんもこうした授業を受けられているのでしょうか?
駒田:そうですね。ことばという演技のレッスンがベースにあって、空手、日本舞踊とダンス、声楽……と、実践的に学んでいきました。
大久保:特別授業は月に1回ありました。他のクラスの先生の授業を受けたり、スタジオでの実習を行ったり、いつもとは違う先生にお話を聞いたり。私は現在の養成所に移転する前だったので、場所は違ったのですが、内容は一緒なんじゃないかな。
白田:私の時は特別授業に瑠美さんがいらっしゃいました。
大久保:あ、思い出した! コロナ禍のタイミングに。
白田:そうです。先輩の話を聞かせていただきました。まさに取材を受けているこの場所で(笑)。
駒田:へえ!
大久保:確か……開口一番に「空手の授業の成績が良くなくても所属はできます」と言った記憶があります。私は空手が本当にできなかったんですよ。先生も呆れてたんじゃないかな。でも苦手なことをどれだけガッツを持ってやれるかを先生は見ていたと思っています。できないことが悪いんじゃなく、できなくても頑張れるかどうかが大事だと思っていました。
私以外にも空手が苦手で、悪い成績だったらどうしよう、と気にしている子がいたんですね。でも真面目に取り組んでいれば大丈夫だよ、って話をした気がします。
──そこでもガッツを見てるということなんですね。
大久保:おそらく。
──特別授業はいろいろな方がいらっしゃるのでしょうか。
白田:マネージャーさんいらっしゃることもありました。
大久保:特別授業と言えば覚えていることがあります。あるマネージャーさんが、なにも言わずに後ろからスーっと入ってきて。「あ、誰か来たなと」と、1人だけスッと立ち上がって挨拶していたんですが……みんなの前に立ち「立ち上がったのは1人だけだったね」と。
「今日は授業だけど、もしも私が審査員長だったらどうするの? 注意散漫になってはダメ。まだ養成所にいる時点ではお客様。でも本当に所属したいと思っているなら死ぬ物狂いで頑張りなさい」と。その言葉で全員の意識が変わったと思います。
言葉だけだと厳しく聞こえるかもしれません。実際とても怖かったのですが、その言葉通りなんです。みんなで授業を受けているので、その学校感が楽しくなってしまうこともあって、時にはキャッキャッとなってしまうことも。みんな仲間ではあるけれど、ここにいるのは全員ライバルでもある。私たちはほんの一握りの所属の椅子を勝ち取らなきゃいけないんだ、と意識が高まりました。この特別授業は一生忘れないですね。
人と違う輝きを持っていることが大切
駒田:繰り返しになりますが、全ての授業においてガッツが重要ですよね。声優を目指してここに来ても、あっという間に辞めてしまう人もいます。もちろんさまざまな事情があるとは思いますけども。
自分は1年でしたが、中には2年、3年……と通われる方もいます。その中でどれだけ自分のモチベーションが落ちてないかをちゃんと示せるのかが重要なのかなと。なんなら所属してからは死ぬか生きるかじゃないですか。
ご家庭が裕福なら別の話ですけど……就職もせず、人生を懸けて、自分のやりたいもので生きていく重みは意識しておいた方がいいと思います。だからそうやって発破をかける方と出会えるのは、とても重要だと思うんですよね。そういう方に出会えないこともありますから。
養成所のレッスンは大変なことも多いです。僕は苦手なカリキュラムも多かったんですよ。自分がやったことのないものに触れて、ある程度そこで評価を下されるわけですから。でも重要なのはとにかくやること。やってできないならまあしょうがないと思うんです。
──とにかくチャレンジすることが大事だ、と。
駒田:はい。「このガイドラインに沿って全てをやり抜きなさい」「これで100点をとらなきゃダメです」じゃなく、どれだけ一生懸命取り組んで、成長を見せられるか、つまりは人間性を見られている。実際にやってみて「まぁ、最初よりはできているけども下手くそだなぁ」ということもあります。でも結果は何であれ、瑠美さんが言ってる伸びしろの部分。与えられたものをどこまでやれるのか、養成所の方々はかなり細かく見ている印象があります。
それは養成所に時々来られる事務所のスタッフさんもそう。やっぱり記憶に残る人は何かを持ってるんです。例えば先生に質問するとしても、「何かを得たい、成長したい」と伝わるような、一歩踏み込んだ内容を尋ねる人は覚えてもらえると思います。養成所のレッスンにしても、そこから受けるオーディションにしても、人とは違う輝きを持っているのがポイントなんじゃないかな。
実際、僕自身も就活を蹴って来ているから、絶対に残るという気持ちでやっていました。だから「負けていられない」と思っていましたね。だから繰り返しになりますけど、やり抜くガッツがとにかく大事。
かと言って、一匹狼になるのはよくないと思います。同じレッスンを受けている以上「俺はできるからいいや」じゃなく、できない人がいたら、アドバイスをして、協力していくとクラスの雰囲気が変わります。
──協調性は養成所に限らず、どの場所においても大事ですよね。
駒田:アフレコにおいても大切なことです。クラスの中で「ずば抜けて最強」という人がいることは、あまりないと思うんですよ。ただ、「このクラスは雰囲気がいいね。じゃあなんでだろう」となった時に「あいつが起点になってるかも」というのは、長年生徒を見ているスタッフさんはきっと見抜くんです。だから自分は自分はと視野を狭くせず、周りを見て立ち回ることが重要だと僕は思っています。「81ACTOR'S STUDIO」、いいところですよ。でも空手は苦手でした(笑)。
大久保:私もなんで空手があるんだろうと思ってた。でも、やっぱりガッツを見てるんですよね。
白田:逆に私は空手が一番好きでした。
大久保:へえ! 珍しいパターンだ。
白田:家に帰ったあとも自宅の近くで型の練習をしたりしてました。
大久保:めったにできない体験だもんね。それを楽しめるのも才能。
白田:元々子供のころから空手に憧れがあってそれがモチベーションにつながったということと、空手指導をしてくださるケン先生(ケン・サンダースさん)が褒めてくださると「もっと頑張ろう」と思えました。最後の型までやらせていただけたのは2人だったんですけど、その2人まで残ることができました。
大久保&駒田:すごーい!
白田:楽しかったです。私は日本舞踊が苦手だったんですけど。こんなこと言うのは恐縮なのですが、寿柳寿々司朗先生のお顔が大好きだったんです。だから表情を見られるのがすごく楽しくて。苦手なレッスンでも楽しいことをひとつ見つけるようにしていました。
何かなかったら心が折れちゃうので。「苦手だ~!」と思っていると、「もう無理! できない!」ってなっちゃうんですよね。
駒田:それ、めっちゃ大事なことだと思うよ。
大久保:すっごく良いこと! 人間関係を作る上で大切なことだよね。
駒田:協調性の一つだと思います。こういう人がいるだけで、「あ、そういう意識も大事なんだな」と触発される仲間もきっといるだろうし。
大久保:私が養成所に通っていたのは10年以上も前ですけど、未だに当時のメンバーの女子と遊んでいますよ。女子10人ぐらいでグループLINEを作ってて、年に1回旅行に行って、月1で会っていますね。
一同:へえ〜!
駒田:所属してる子ですか?
大久保:全員声優を辞めてるんですけど、今週も映画を見に行きますよ。
白田:すごく素敵な関係性!
大久保:仲がいいんです。私が出演しているアニメも全部見てくれてるし、逆に私もみんながやってる仕事について話を聞いています。そういう出会いもありますので、さっき駒田君も言ってましたけど、一匹狼にはなっていけないんじゃないかなと。一緒に授業を頑張ったり、作品を作ったりした経験は今後の糧になると思います。その経験は例え声優の道に進まなかったとしても、次の夢にも絶対に役立つんじゃないかな。
★次回は5月6日(土)19時に掲載予定です。
インタビュー・逆井マリ
撮影・鳥谷部宏平
オーディション概要
【名称】
第17回81オーディション<エイティワンオーディション>
【主催】
株式会社81プロデュース
【開催日(予定)】
応募期間 2023年4月1日(土)0:00~2023年5月15日(月)23:59エントリー完了
2次審査 東日本(東京)会場:2023年6月10日(土)・6月11日(日)
西日本(大阪)会場:2023年6月17日(土)・6月18日(日)
*2次審査は上記日程のうち、いずれかの日で1時間程度の拘束を予定しております。
最終選考 2023年8月1日(火)
*主催者の都合や天災等の事情により、日程は変更される場合もございます。
【会場】
東京都内を予定
【応募受付期間】
2023年4月1日(土)0:00~2023年5月15日(月)23:59エントリー完了
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