『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』冲方丁さんと深見真さんが語る常守朱と狡噛慎也「朱は特殊な考え方を持たない、狡噛は『俺ルール』が強い」
人間の心理状態を数値化し管理する近未来社会を舞台に、正義を問われる警察機構を描くオリジナルTVアニメーション作品「PSYCHO-PASS サイコパス」。本シリーズの最新作『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』が、2023年5月12日(金)より全国で公開となります。
10周年を迎えたシリーズ最新作となる今回は、劇場公開作品『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.3 恩讐の彼方に__』とTVアニメ三期「PSYCHO-PASS サイコパス 3」をつなぐエピソードを展開。これまで〈語られなかった物語〉がつむがれます。
アニメイトタイムズでは、『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』の公開を記念し、構成・脚本を担当した冲方 丁さん、脚本を担当した深見 真さんにインタビュー。本作の中心人物となる常守朱・狡噛慎也の関係性や人物としての魅力などについて語っていただきました。
TVシリーズと並行して進めた脚本づくり
──おふたりは本作で構成・脚本を担当されていますが、どのように脚本づくりを進めましたか?
冲方 丁さん(以下、冲方):今回は構成を作って脚本を書く前に、深見さんが「下書き」をしてくださいました。
完成した原稿を持って話し合うのではなく、プロットやアイデアを持ち合わせてブレーンストーミングしていったんです。
それを2年半にわたり、毎週8時間ほどやっていました。まさか、ここまでガッツリやることになるとは。関わった当時は思ってもいなかったです(笑)。
深見 真さん(以下、深見):ですね(笑)。
冲方:しかもTVアニメと並行して下書きを進めていたんです。例えば、TVシリーズ6・7話の下書きをしながら、5話以前をブラッシュアップしていき、劇場版の下書きや脚本も並行して進めていく、というようなスケジュールでした。この作業量をこなす深見さんはすごいです。
深見:いやいや、スケジュールや進行を整理してくださった冲方さんの苦労がしのばれます。ホワイトボードに書いては消して、を繰り返していましたもんね。
冲方:整理してみたら、すごい物量でしたよね。加えて、「PSYCHO-PASS サイコパス」は要素も登場人物も多いですし、キャラクターの動機もバラバラで。
とりわけシビュラシステム下の社会で行われる犯罪という、ハードルの高いテーマがあるんです。脚本に落とし込む前段階でああでもない、こうでもないと話し合いながら進めました。
深見:当時は脚本会議が終わってから飲みに行った居酒屋でも脚本の話をしていましたよね。
冲方:していましたね。こうして深見さんと話していると、当時の記憶がすごく蘇ってきます。昼間なのに飲みたくなりました(笑)。
深見:(笑)。改めてですが、何よりも構成が大変だったと思います。並行して進めることが多いのに加えて、「PSYCHO-PASS サイコパス 3」は1時間枠というTVアニメだと珍しい作りでしたからね。
冲方:そうでしたね。ふつうなら2、30分で次のクリフハンガーを作るなり、結論を出すなりしますが、「PSYCHO-PASS サイコパス 3」の場合は1話のなかでそれが2回来るように構成しなきゃいけなかったんです。事件が始まり解決して、また始まるみたいな。
1時間枠というのは、アメリカの犯罪ドラマシリーズなどに近い構成として見ていただけるように、という意図もあったんじゃないかな。『CSI:科学捜査班』と同じ枠で放送されることを意識しようと誰かが言っていたような気がします。
ただ、私たちよりも映像や音響まわりを担当された方々のほうが大変だったと思いますね。我々の脚本作業よりも長期に渡って関わっていらっしゃいますから。その尽力は計り知れないものだと思います。
──様々なプロフェッショナルの力が結集して作られた本作では、「PSYCHO-PASS サイコパス 3」での謎が明らかになっていきます。朱が物語の軸になっていますが、その構想はもともとあった?
冲方:朱で締めるという構想はありましたね。新しいシリーズで残された謎は劇場版で解決するという流れも決まっていました。
──個人的には、本作を見てすっきりした部分がたくさんありました。
深見:よかったです。
冲方:僕らもだいぶすっきりしました(笑)。