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『ゴールデンカムイ』TVアニメ第四期EDテーマ担当・THE SPELLBOUND インタビュー

TVアニメ『ゴールデンカムイ』第四期のエンディングを飾る「すべてがそこにありますように。」に込めた思いをTHE SPELLBOUND 中野雅之さん、小林祐介さんが語る|「運命や絆のような、普遍的なテーマを表現したいと中野さんと話していました」

アニメーションとの親和性

――ところで以前、XAI‐サイ‐さんに取材をさせていただいた時に、中野さんとの関係を周囲から「弟子みたいだね」と言われるとおっしゃていて。

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中野:へえ(笑)。そうでしたか。

――また、「音楽はもちろん、“どうやって生きいくべきなのか”ってことも勉強させてもらいました」と。中野さんはやはり、人を導いていく存在でもあるのだろうなと。

中野:それは関係値が築ければ……と言いますか。互いに信頼し合って、委ねる事が出来た場合に限ったことなんですけどね。楽曲提供やプロデュースは、基本的に一期一会で、その一曲をやりきるだけのお付き合いになるわけです。その時に、それ以上のものを感じ取って自分の新しい武器を手に入れて去っていく人もいれば、一曲作って終わってしまう人もいて。

その中で、何か感じ取ろうとしてくれている人に対して、かけられる言葉というのが僕の中であるんですよね。XAIちゃんは、当時大学生で右も左も分からない状態だったんですが、長い時間共に過ごしました。大人としての責任もあるし、タフな世界に足を踏み入れかけている無垢な子だったので、慎重に大切に接した部分はありますね。未だに縁が続いていて、この間のライブにも参加してくれたり。良い縁だなと思いました。

▼2022年12月15日(木) Spotify O-EAST 「すべてがそこにありますように。」Release Party

――XAIさんのプロデュースの楽曲は『GODZILLA 怪獣惑星』シリーズでした。BOOM BOOM SATELLITESとしては『アップルシード』や『機動戦士ガンダムUC』の主題歌を、そしてTHE SPELLBOUNDでは『ゴールデンカムイ』と、アニメとの親和性が高いように思います。中野さんはどう思われますか?

中野:僕は1971年生まれでアニメ黎明期よりは後の世代だと思うのですが、日本人のものづくりが色濃く出ているアニメに触れながら大人になっています。

また、サイエンス・フィクションが小説にしても映画にしても好きだったんです。サイエンス・フィクションで描かれる哲学や「人とは何か?」とか……そういうものが浮き出てくるのがSFだと思っています。舞台装置になる感覚があるんですね。

アニメって現在の日常風景を捉えていたとしても、どこかSFの雰囲気があるなと思います。特に昨今の作品だと強く感じるんですが、そのテイストが僕の感覚にも合うんですよね。

アニメーションに対して音楽を作る時は「アニメだから」と意識をする事は意外と少ない。90秒というフォーマットは意識しますが、それ以外は自然体で出来ていますね。

それはBOOM BOOM SATELLITESの時も、THE SPELLBOUNDでも変わらないですし、今は小林くんが素敵な日本語の歌詞をつけてくれて、それが僕にとってはすごく新鮮なんです。どんどんやりたいことが出来ている感じがします。

新たな旅が描かれる『ゴールデンカムイ』第四期

――『ゴールデンカムイ』に対してはどのようなご印象がありましたか。

小林:僕の周りは家族も含めて『ゴールデンカムイ』を読んでいて。面白い漫画だと知っていたので話をもらった時はすごくうれしかったですし、驚きました。僕自身アニメや漫画は好きですが、僕の場合は主題歌を作る経験が初めてだったので、どんなチャレンジができるんだろうと。そして、中野さんの経験則の中でどんなものが作れるかなと、ある種手探りな状態でのスタートでした。

中野:『ゴールデンカムイ』は大ヒットコンテンツなので、大役を頂いて光栄でしたし、僕たちが楽曲を提供する事でより物語に深みや立体感を持たせることが出来たら良いなという思いでした。

――先ほど小林さんが歌詞をつけていくというお話がありましたが、「すべてがそこにありますように。」の制作過程のお話もうかがえたらと。まずはどこからスタートされたんでしょうか。

中野:なんでしたっけね〜……(笑)。だいぶ前のことになるんですよね。

小林:まずはこれまでのアニメを見たり、漫画を読むことからですよね。

中野:うん、一通り作品を見直して、何にフォーカスを当てるのかを考えていきました。登場人物も多いですし長い物語なので難しかったですね。あとは、さまざまなEDテーマの在り方をリサーチして、僕らの中の最適解を探していたように思います。あんまりアートになってしまうと『ゴールデンカムイ』のファンを置いてけぼりにすることになるし、アニメに寄せ切ってしまっても広がりが出せないだろうから。そのあたりを考えていました。

――リサーチはどのようなことをなさったのですか?

中野:リサーチと言うと大げさな言い方ですけど、いろんなものを見ましたね。どのOP・EDが良かった、といった情報を小林くんと共有していました。

――制作期間はどのくらいだったのでしょうか。

中野:最初のデモの時点で歌詞はほぼあがっていて。1〜2週間ほどだったと思います。

小林:意外と早かったですよね。

中野:サウンドのテクスチャと言うか、ダビングしながら詰めていく作業は時間の許す限りやりましたが。

――私は<消えない傷をあげる 花束の代わりに>というフレーズが『ゴールデンカムイ』の世界とTHE SPELLBOUNDの世界と相まってとても好きなのですが、どのような思いを込めて歌詞を書かれたのかも、小林さんにぜひ教えていただきたいです。

小林:僕たちが担当するシリーズで舞台も変わり、クライマックスに進んでいって。ファンに愛されていたキャラクターたちがいろんな運命に翻弄されていくんですけど……その中で人が生まれて死んでいくこと、人生をどのように全うしていったのか。運命や絆のような普遍的なテーマを表現したいと中野さんと話していました。

あの作品は傷や暴力的な部分が根底にあると思うんですよね。これが何の比喩なのか、それを詩の世界だと表現できるかもしれないなと考えたときに「傷だけが彼らの運命の唯一のつながりであり、絆なのかな」と。

さまざまな傷を巡って戦ったり、その一方で決別のきっかけになったり。そういったものを美しく表現できたら良いなと思っていました。

歌いだしの<君が一番欲しかった物 すべてがそこにありますように>という歌詞もそのままの形でポンと出てきて。それを中野さんがタイトルに選んでくれました。僕自身も音楽と作品に導かれて言葉が出てきた場所も多く、振り返ると必然的なものかもしれないなと。

――レコーディングはいかがでしたか?

中野:レコーディングって……無心なんですよね。『ゴールデンカムイ』の過去のOP・ED映像を流しっぱなしにして手を動かしていました。その世界観を常に隣において、作業を進めていきました。

――それによって作品の世界に没入できる感覚があるのでしょうか。

中野:そうですね。自分たちのモチベーションも高まりますし、世界観の上にちゃんと乗っかった状態で音楽制作を進めることができる。時々全然違うものを流して、幅を持たせたりもしました。違う作品の曲とか、全然関係ないミュージックビデオとか。僕はビジュアルからインスピレーションを貰う事が多いので、いろいろ観ていましたね。

――小林さんはいかがですか?

小林:歌詞を作る中で、言葉だけのやりとりだと正解がわからないことがあるんです。一度歌って判断する、という往復が続くんですよ。やっている最中は今ほど客観的に見れてなかったんですけど、あの時に出来たジャッジや、誰かに言葉を手渡すような感覚が活きたなと、初めての放送を見た時に思いました。「これで良かったんだ」と報われました。

――映像を初めて見た瞬間は鮮明に覚えていらっしゃるものですか。

小林:そうですね。日常的に見ているテレビから、『ゴールデンカムイ』の映像と一緒に自分の声が流れてくる感覚に凄く興奮しましたし、この縁に感謝する瞬間でした。

――中野さんは映像をご覧になった際は、どのような気持ちだったのでしょうか?

中野:僕、緊張しちゃうんですよね。テレビなどの媒体から自分の音楽が流れてくることって。放送がある日はテレビの前に正座する勢いで待って視聴するんですよ。流れることはわかってるんだけど、物凄く緊張する。

だから僕は小林くんのように堪能できていなくて。改善点を探してしまうんですよね。「もっとここ良く出来たかもな」とか。

プロのミュージシャンとして活動をはじめてからは、かれこれ25年くらい経ちますが未だに慣れません。BOOM BOOM SATELLITESの曲とかがバラエティ番組のジングルになったりするんですけど、予期せぬところで楽曲を耳にして、腰を抜かすくらいびっくりするんですよ(笑)。

小林:(笑)

――時々バラエティ番組で耳にしては、いちリスナーとしても「あ!」と思うのですが、中野さんは腰を抜かす勢いで驚かれていたのですね(笑)。

中野:全然慣れないですね(苦笑)。聴くたびに「あの時、もっと上手に出来ていればな」って思っちゃいますね。

――そういう意味ではミュージックビデオや、XAIさんとのライブ映像も同じような感覚になるのでしょうか?

中野:あ〜……そうかもしれないですね。アーティストの性格によるところが大きいと思うので、自分が演奏している/歌っている姿が大好きな方もたくさんいますが、僕は自分の粗を探しては落ち込んだり、悔しくなったりするタイプです。

(C)野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
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