ロック・バンド“マネスキン”×『BEASTARS』コラボMV公開を記念し、作者・板垣巴留先生へインタビュー!“両者の距離”が「TIMEZONE」と『BEASTARS』の共通のテーマ
マネスキンが人気を集める理由を、板垣先生が考察!
――先ほど「出来上がったものに装飾をして磨いていく」と仰っていましたが、音楽の場合は、完成させていく過程でメロディを作っていったり、楽器の鳴りを和らげたり、緩急をつけたりと様々な工夫があると思います。先生は、作品を磨いていく作業として具体的にはどのようなことをされていますか?
板垣:みなさんはトーンを貼ったり、背景を入れたりといった、絵作りと思われるかもしれないですが、意外とそこは作家の自己満足でやっていたり、少しでも見栄えをよくしようという気持ちでやっています。たぶん漫画は、話が面白ければ背景が真っ白でも、トーンがなくても面白いものになるので、物語を作る下書きのネーム作業が既に装飾の段階と言えるかもしれないですね。最初の段階からほぼ完成形を作らないといけない気持ちなので、作品を磨くというのは、セリフをできるだけ減らす、見やすい構成にする、といったことになるのかなと思います。
――SNS上ではマネスキンのファンアートも多く投稿されています。数あるバンドの中でもマネスキンは特にファンアートが多い印象があるのですが、どういったところが、絵描きの心をくすぐると思いますか?
板垣:絵心を沸き立たせる存在は、やっぱりキャラが立っているということが重要だと思います。それぞれのメンバーのキャラが立っているのかなと。私も最初、マネスキンさんを描くことになったときに画像を見ていて、みんな顔に性格が出ているんだなとわかってきて、かなりデフォルメしやすかったです。一度ライブに招待頂いて、実際に見たときも、キャラが立っているというのが愛される理由に繋がっているのかなと感じました。
――ファンアート以外にも、尾田栄一郎さんや芥見下々さんがマネスキンをお気に入りに挙げていたり、ジョージ朝倉さんの『ダンス・ダンス・ダンスール』の中でマネスキンの名前が出ていたりします。数々の漫画家の方から支持されているというのも、その「キャラが立っている」からこそなんでしょうか?
板垣:そうかもしれないですね。漫画家って音楽好きも多くて。目を奪われないBGMを常に求めているので、音楽への感心が強い人が多くて、そういう人にキャッチされるという時点で、マネスキンさんはすごく良いバンドなんだろうなと思います。
――マネスキンは『ジョジョの奇妙な冒険』や『NANA』に登場するキャラクターに似ているとファンの間で言われており、そういう意味でも、彼らには漫画っぽいところがあるのかもしれません。板垣さんは「マネスキンっぽいな」と感じた漫画のキャラクターなどはいますか?
板垣:私は林田球さんの作品が好きなんですが、中でも『ドロヘドロ』は、衣装や世界観がすごくパンクで、マネスキンさんの世界観に合っているのかなと思います。
――マネスキンは、メンバーがジェンダーフルイド的であり、男女の境界にとらわれない佇いやキャラクター性を持っています。その点で考えると『BEASTARS』も男性/女性や草食/肉食といった基軸を物語と絡めながら示唆的に打ち出している作品ですね。マネスキンのジェンダーフルイド的な部分と『BEASTARS』を比較した際に、そういった類似的な基軸の在り方について何か思われることはありますか?
板垣:それはすごく感じますね。私が『BEASTARS』で男だ女だ、肉食だ草食だと言っているのは、男女が別の動物だと思っているからなんです。なので私は男女の友情も信じていないんですけど(笑)。絶対わかりあえない物同士だと思っているから、“だからこそ楽しいじゃん”という気持ちで書いていました。
マネスキンさんみたいに境目をなくして手を取り合いたい気持ちもあるんですが、あれはもう憧れでもありますよね。なかなかできないから結局もがくわけで、だからこそみんな(マネスキンさんのことを)かっこいいなと思うんだろうな、と思います。
――今後、「マネスキンとこういうコラボがしてみたい」という願望はありますか?
板垣:何を言っても利権問題がありそうで言えないのですが(笑)……ここまでご一緒したので、『BEASTARS』ファイナルシーズンのオープニングやエンディング曲もやってくれたらいいなと(笑)。そのくらい深くご一緒できたらいいなという気持ちはありますね。
――今回は完成した作品のコラボレーションというお話しもありましたが、他にゼロからこういうコラボがしたいなというのもありますか?
板垣:以前、YOASOBIさんとのタイアップで私が小説を書いて、その小説をもとに曲を作るというのをやらせて頂いたのですが、マネスキンさんが作った曲をもとに私が短編を書くとかですかね。『BEASTARS』は完結しましたが、『BEAST COMPLEX』を断続的に書いているので、レゴシあたりの話を作るとなったら、特別な1話を書けるのかなと思います。
取材:つやちゃん(https://twitter.com/shadow0918)
マネスキン プロフィール
一昨年ヨーロッパ最大の音楽の祭典“ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト2021”で優勝し、瞬く間に全世界でブレイクしたイタリア・ローマ出身のZ世代4人組バンド“マネスキン”(デンマーク語で「月光」の意)。
R&R、ラップ、レゲエ、ファンクなどの多彩な要素をソウルフルな声に織り交ぜたサウンドと、抜群のルックスを兼ね揃えた華やかなロック・スター然とした佇まいが特徴。
最新アルバム「RUSH!」世界12か国でNo.1を獲得、圧倒的なライヴ・パフォーマンス、人々を魅了するセンセーショナルなメッセージ...その勢いはまだまだ止まる事を知らない。新たなロック・アイコンが不在の昨今、ロック復活の狼煙を上げてますます全世界的に勢力を増していく彼らに今後も注目。
【リリース情報】
最新アルバム『RUSH!』絶賛発売中
https://maneskinjp.lnk.to/Rush
【ソニーミュージック公式サイト内マネスキン特設サイト】
https://www.sonymusic.co.jp/artist/maneskin/page/2023
『BEASTARS』について
擬人化された肉食動物と草食動物が共存する世界。
ある日、全寮制のチェリートン学園でこの世界では禁忌とされる、肉食動物が草食動物を食べてしまう〝食殺事件〟が発生してしまう。
異常事態に揺れる学園。いったい犯人は誰なのか。
時を同じくして、学園に通うハイイロオオカミのレゴシはドワーフウサギのハルに心を奪われる。彼女に抱いた感情は、恋なのか、食欲なのか。国内主要マンガ賞4冠。珠玉の動物版ヒューマンドラマ。