ロック・バンド“マネスキン”×『BEASTARS』コラボMV公開を記念し、作者・板垣巴留先生へインタビュー!“両者の距離”が「TIMEZONE」と『BEASTARS』の共通のテーマ
世界中を席巻しているイタリアのロック・バンド“マネスキン”と、擬人化された動物たちが複雑なサスペンスと人間ドラマを繰り広げる漫画『BEASTARS』がコラボ! 最新アルバム「RUSH!」に収録されている「TIMEZONE」のミュージックビデオ (Måneskin - TIMEZONE - BEASTARS for Måneskin (Animated Video))が公開されました。
ヴォーカルのダミアーノ・デイヴィッドさんが日本のアニメの大ファンであること、そして『BEASTARS』への熱い想いを持っていることから実現した本コラボ。昨年9月にコラボ第1弾としてマネスキンとのコラボイラストが公開、コラボ第2弾として今回のMVが制作されました。
映像は『BEASTARS』の名シーンの数々をピックアップし構成。恋人同士に対する様々な困難や偏見等があっても、お互いの想いは決して離れないという楽曲の世界を、漫画の主人公であるレゴシ(オオカミ)とヒロインのハル(ウサギ)に投影し描いています。オープニングを飾る題字には、作者・板垣巴留先生の描き下ろしイラストを挿入。またエンディングにも、昨年8月にバンドが初来日公演を果たした際に、先生とメンバーが直接対面し、お互いにさまざまなアイディアを出しあって描き下ろされた、バンドとキャラクターのイラストが挿入されています。
今回、MVの公開を記念し、板垣巴留先生へインタビューを実施! コラボの感想、マネスキンの楽曲の魅力、メンバーと実際に会って感じたことなどを語っていただきました。
“両者の距離”が「TIMEZONE」と『BEASTARS』の共通のテーマ
――今回解禁となった、マネスキンによる「TIMEZONE」とのコラボレーションMVを初めてご覧になった感想はいかがでしたか?
板垣巴留先生(以下、板垣):第一印象は、自分の絵が懐かしいなと思いました(笑)。昔といっても10年も経っていないんですが、初期の絵だったので。懐かしいなと思ったと同時に、自分がまだがむしゃらだったときの作品が、世界的なアーティストさんの歌に乗せてどんどん流れていくのを見ていて感慨深いというか、ありがたいなと思いました。「私が楽しむために作ってもらったんじゃないか」と申し訳なく思ったくらいです(笑)。皆さんにも楽しんで頂けたらいいなと思いました。
――自身の作品にマネスキンのサウンドが乗ることによって、何か発見はありましたか?
板垣:音と一緒に自分の作品が発表される、というのはアニメ化の際に経験しているんですが、マネスキンさんの作品と私が出した作品、お互いの完成品が混ざるというのは、今までにない経験だったので、化学反応が起きていればいいなと思いました。自分の作品だから「うおお」とは中々なれないというか(笑)。嬉しさもありつつ、マネスキンさんのファンが見てもいいものになっているといいなという気持ちでした。
――「TIMEZONE」と『BEASTARS』の世界観の共通点があれば教えてください。
板垣:(マネスキンさんの)アルバム「RUSH!」の発売時に、私が「ダミアーノさんの声は若いライオンの咆哮のような声」とコメントしたように、本当に肉食獣が吠えるみたいな声をしていらっしゃるので、それと17歳のレゴシの苦悩というのは親和性があるなと思いました。
今回の「TIMEZONE」は、両者の距離について歌っている歌で、『BEASTARS』も他者同士の距離のつめ方について追求している物語なので、そういうところも「まさにこれ!」っていう曲を選んでくださったんだなと思いました。
――以前別のインタビューで、マネスキンの楽曲の中では「SUPERMODEL」が『BEASTARS』の世界観に近いと仰っていたと思うのですが、今回の「TIMEZONE」は「SUPERMODEL」とは違って少し悲しげな楽曲です。楽曲を初めて聴かれたときの印象はいかがでしたか?
板垣:これはアルバム全体にも言えることかもしれないんですが……完全に素人目線の感想になってしまいますが、凄く聴きやすくなったなと思いました。私はあまりロックを聴かないので、以前の曲はわかりつつも聴いたことがないな、そうかこういうものなのかと聴いていたものが、今回は凄く耳馴染みがして、自分でも堪能できた気がして。ちょっとバラードっぽい曲になっているというか、どんどん磨きをかけられているんだなと思いました。もちろん今もロックではあるのですが、ポップさが増したような気がします。
――アルバムのなかで好きな曲はありますか?
板垣:「GASOLINE」が凄く良かったですね。
――マネスキンの音楽は、表層的にはポップだけど聴きこんでいくと色々な工夫がされていたり、ロック以外にも色々な要素が入っていたりと、聴けば聴くほど面白いですよね。『BEASTARS』をはじめ、先生の描く作品も、類型化してわかりやすい一面もある一方で、非常に複雑な構成になっていて読めば読むほどいろんな発見があります。実はそういった部分も共通しているのかなと感じました。
板垣:できあがったものを装飾して、見れるものや聴けるものにしてやっていくというのが商業なので、そういう点では、同じアーティスト面の様々な苦労をお互いしているんだなと思います。マネスキンさんの曲はどなたが作っているんですか?
――歌詞はヴォーカルのダミアーノが中心になって作って曲は4人でジャムりながら作っていますね。
板垣:そうなんですね。4人で作るのはすごく楽しそうだなと思います。漫画家は一人なので(笑)。愛されるべきものとして作っていくというのは漫画でも音楽でも必要ですよね。
――マネスキンのライブや動画を見て、印象に残っているものはありますか?
板垣:「SUPERMODEL」のMVが、みんな楽しそうでいいなと思いました。あとは、ダミアーノさんが酷い目にあっている「MAMMAMIA」が一番印象に残っています。お洒落で良いですよね。
――昨年8月に実際にお会いしてみて、いかがでしたか?
板垣:ダミアーノさんはすごく末っ子っぽいというか、一番無邪気な感じがしました。会うまではヴォーカルとして凛々しくされているイメージだったんですが、ダミアーノさんが『BEASTARS』のあらすじを他のメンバーに説明する姿が子供みたいというか(笑)、無邪気な方なんだなと思いました。ヴィクトリアさんは一番優しくしてくれて、「熱くない?」と気を遣ってくれました。