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『スキップとローファー』監督・シリーズ構成 出合小都美インタビュー【連載第6回】

日常に疲れた人が見て「ほっとする」「いい雰囲気だな」って思ってもらえるように│アニメ『スキップとローファー』監督・シリーズ構成 出合小都美さんインタビュー【リレー連載:第6回】

記憶に残っているのは9話の田舎の夜のシーン

――ロケハンにも行かれたそうですが、どのような点を参考にされましたか?

出合:エンディングテロップに取材協力としてお名前を載せさせていただいた、東京都立西高等学校に行かせていただきました。元々、高松先生が取材されていた高校で、その流れでご紹介いただきました。特に参考にしたのは、立地です。建物の雰囲気や、時間によって光がどう差し込み、影がどう落ちるかを確認しました。

また、みつみの実家のモデルとなった地域もロケハンしました。やはりその地方独特の風景というものがありまして、現地に行って歩いてみないと気付けないことがあるんです。今回は瓦の色が印象に残りました。理由は分からないんですが、黒っぽかったんですよ。あまり見ない色だったので、参考写真をたくさん撮って背景の方にお伝えしました。実際にその場所を知っている人が観て、「あ、これってこの場所だよね」って感じてもらえるとうれしいですね。

――今のお話にもありましたが、天候や、光と影、あとは環境音などもとても印象に残りました。例えば、6話のみつみと志摩くんが仲直りした時の雨上がりの空気感は素敵でした。

出合:あのシーンは撮影処理の段階で光をかなり盛っています。6話は梅雨の時期のお話で暗い雨のシーンがずっと続くので、映像的にはテンプレな表現ではあるんですけれど、二人の心が晴れた瞬間を視覚的にも表現しました。キャラクターの感情を伝えるためにはどういう見せ方にしたらいいかというところは、撮影スタッフとかなり話し合いました。

――9話のみつみが実家に帰省した翌朝のシーンにも驚きました。地元の懐かしい風景に、みつみがスイカを食べる「シャク、シャク」っていう音だけが乗っていて……。

出合:元々、原作にあった表現ではあるんですが、アニメにする時は尺の問題も考えて、地元の情景のカットを増やしてるんです。その尺感で、観ている方にもみつみの気持ちを味わっていただけたらと思いまして……。

――気になったシーンというと、4話のみつみと高嶺先輩がバスから見た夕景がとても美しかったのですが、制作上の工夫を教えていただけますか?

出合:あれはカメラマップという3D技術を使って背景を組んで動かしてます。正直、アニメでやるのは鬼門レベルの面倒くさい作業でして、自然に見えるよう調整するのに3D班はかなり苦戦されていました。背景の方も素材を作るのが大変だったようです。すごく絵を重ねて作り込んだので、良かったって言ってもらえて報われました。

――余談ですが、あの場所は、実在するんですか?

出合:参考資料としてロケハンに行った場所はありますよ。

――後半の11話、みつみたちが屋上でチュロスを食べるシーン、原作ではミカはいませんでしたが、アニメでは追加されました。結構大きな変更ではないかと思いますが、経緯を伺えますか?

出合:あのシーンには、プロデューサーの山本(輝)さんの熱い想いが入っています(笑)。結月のセリフで「半年って感じしないよね」とあるんですが、山本さんから、3ヶ月間かけてアニメで4人の絆を描いてきたので、ここにミカもいてほしいな、という意見が出たんですね。高松先生もシナリオの打ち合わせに同席していたのでご相談させていただいて、ミカもいたほうがいいよねと満場一致でまとまりました。

――12話にも4人のシーンが追加されていて、4人の友情を大切にされているんだなあという印象を受けました。

出合:アニメとしては志摩の感情の落とし所が最終回のポイントになっているんですが、それとは別にやっぱり4人が一緒にいるところを最後にちゃんと見せたいよね、と。4人の友情のある程度の決着と言いますか、形を見せて終わりたいと思いました。

――全体的に温かい色彩と柔らかな線がほっとするような画面設計になっているのですが、こだわられた点を教えてください。

出合:そこは私たちが目指したところだったので、そういう感想をいただけて、とても嬉しいです。日常の色々に疲れた人が見て、「ほっとする」「いい雰囲気だな」って思ってもらえるように意識して作り込みました。高松先生もおっしゃられているんですが、作品のテーマが高校生特有の問題ではなく、世代を問わず起こりやすい悩みだったり、共感性の高いものだったりするんですね。なので、アニメのほうも彩度高めのいわゆるアニメらしいアニメを作って、観る方の間口を狭めるのではなく、柔らかい、ちょっと写真っぽい雰囲気の画面にして、幅広い年代の方に観ていただけるよう、背景や仕上げの方とも相談しながら決めていきました。

――その中でも、特にご苦労されたシーンはありますか?

出合:細かいところはいろいろとありますが、記憶に残っているのは9話の田舎の夜のシーンでしょうか。一度美術ボードを仕上げていただいたんですが、暗闇の中、限られた場所にだけ光が当たっているような、雰囲気のあるすごく格好いい背景だったんです。

1枚のボードとしてとても良かったんですけど、キャラを乗せたときに人物だけ浮いてしまって……。一度OKを出したものでしたが、美術さんにちょっと無理を言って、田舎の空気感を残しつつも、キャラも自然に見えるようなバランスに調整していただきました。本当にあの時は申し訳ないことをしてしまったんですが、結果的にとてもいいシーンになったのではと思っています。

――絵的な演出というと、アイキャッチがデザイン的だったのも印象に残っています。

出合:アイキャッチは、これもまた山本プロデューサーのこだわりで、2D worksの村上(瞭)さんと一緒に作り込んでいました。サブタイトルがアイキャッチになっていますが、アニメは基本的に原作の2話分が1話になっているんですね。アニメーションとしての『スキップとローファー』は1本通して一つのお話として楽しんでもらいたいという気持ちがあって、原作通りのサブタイトルだと分かれた感じになってしまうのが気にかかっていたんです。どうしようかと相談したときに、オノマトペが2つあるので、それを合わせる形にするのはどうだろうというアイデアが出てきました。

正直に言うと最初はピンとこなかったんですが、テストで作っていただいたものがとても素敵で……。こんな風にデザイン的に並べたら、暗号を解くような楽しみ方もできて面白いんじゃないかという提案に、シナリオメンバー全員いいねとなりました。村上さん自体遊び心のある方で、毎回、ご自分の中でテーマを決めて作成されていたので、私からはほぼリテイクなしでした。ただ、読めないかもという不安は村上さんも持ってらして、実は右下の方に小さく普通の文字が入っています(笑)。

――アニメは音楽も大切かと思いますが、音楽面(劇伴)についてはどういった要望を出されましたか?

出合:YouTube などにvlog(生活系ブログ)ってありますよね。そこに流れているような雰囲気の音楽というイメージで発注しました。あとは作曲の方がコメディの要素もプラスして、膨らませて作り込んでいただきました。可能ならいろんな音を使ってくださいという要望も出したんですが、そうしたらいろいろと仕掛けを入れてくださって……。例えばPV第2弾にも使われている曲には、ローファーでタップダンスをした音が入っていたり、私が持っていたおもちゃみたいな小さなカリンバの音をサンプリングして入れたり、いろんな遊び心が散りばめられています。

――最後に、アニメイトタイムズの読者へ、メッセージをお願いいたします。

出合:原作がとてもいい作品で、アニメも漫画の良さを大切に作り込んでいった作品です。放送は終了しましたが、配信などでもまだまだ追いつけますのでぜひアニメのほうも楽しんでいただけたら幸せです。

『スキップとローファー』インタビュー連載バックナンバー

TVアニメ『スキップとローファー』作品情報

放送・配信情報

2023年4月からTOKYO MXほかにて放送開始!
DMM TVにて地上波放送同時先行配信決定!

■放送情報
TOKYO MX:4月4日から毎週火曜日23:00~
AT-X:4月5日から毎週水曜日22:00~
【リピート放送】毎週金曜日10:00〜/毎週火曜日16:00〜
北陸朝日放送:4月5日から毎週水曜日25:58~
BS朝日:4月7日から毎週金曜日23:00~
関西テレビ放送:4月9日から毎週日曜日25:59~

■配信情報
DMM TVにて4月4日から毎週火曜日23:00~
地上波放送同時先行配信!

4月9日から毎週日曜日23:00~
dアニメストア

4月11日から毎週火曜日23:00~
U-NEXT、ABEMA、Netflix、Amazon Prime Video、
バンダイチャンネル、Hulu、FOD、アニメ放題、ニコニコチャンネル、ニコニコ生放送、カンテレドーガ、Tver、Amazonビデオ、ビデオマーケット、music.jp、クランクイン!ビデオ

4月12日から毎週水曜日00:00~
TELASA、J:COMオンデマンド メガパック、milplus、
auスマートパスプレミアム

4月12日から毎週水曜日12:00~
HAPPY!動画

イントロダクション

地方の小さな中学校から、
東京の高偏差値高校に首席入学した岩倉美津未。
カンペキな生涯設計を胸に、
ひとり上京してきた田舎の神童は、
勉強はできるけれど距離感が独特でちょっとズレてる。
だから失敗することもあるけれど、
その天然っぷりにクラスメイトたちはやわらかに感化されて、
十人十色の個性はいつしか重なっていく。
知り合って、だんだんわかって、気づけば互いに通じ合う。
だれもが経験する心のもやもや、チリチリした気持ち。
わかりあえるきっかけをくれるのは、かけがえのない友達。

ときどき不協和音スレスレ、だけど
いつのまにかハッピーなスクールライフ・コメディ!

スタッフ

原作:高松美咲
(講談社「月刊アフタヌーン」連載)
監督・シリーズ構成:出合小都美
副監督:阿部ゆり子
キャラクターデザイン・総作画監督:梅下麻奈未
総作画監督:井川麗奈
プロップ設定:樋口聡美
美術監督:E-カエサル
美術監修:東 潤一
美術設定:藤井祐太
色彩設計:小針裕子
撮影監督:出水田和人
3D監督:市川元成
編集:髙橋 歩
音響監督:山田 陽
音楽制作:DMM music
音楽:若林タカツグ 
アニメーション制作:P.A.WORKS
製作:「スキップとローファー」製作委員会

主題歌

オープニングテーマ:須田景凪「メロウ」
エンディングテーマ:逢田梨香子「ハナウタとまわり道」

キャスト

岩倉美津未:黒沢ともよ
志摩聡介:江越彬紀
江頭ミカ:寺崎裕香
村重結月:内田真礼
久留米 誠:潘 めぐみ
ナオ:斎賀みつき
迎井 司:田中 光
山田健斗:村瀬 歩
兼近鳴海:木村良平
高嶺十貴子:津田美波

アニメ公式サイト
作品公式ツイッター(@skip_and_loafer)
作品公式Instagram

原作コミックス

「スキップとローファー」
「月刊アフタヌーン」にて連載中!
コミックス最新第8巻 発売中!
著:高松美咲

■作品ページはこちら

(C)高松美咲・講談社/「スキップとローファー」製作委員会
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