夏アニメ『AYAKA ‐あやか‐』連載 第0回:GoRA 宮沢龍生さん(モノガタリプランナー)×来楽 零(シリーズ構成)|“キズと絆の物語”――『K』とは異なる“絆”がコンセプトのGoRA最新作の魅力とは
北斗七星の形に連なる7つの島「綾ヵ島」
――設定のところで面白いと思ったのは、島を舞台にしているということと「和」っぽさがあるところなのですが、このあたりについてはいかがですか?
宮沢:『K』がアーバンな話だったので、それに対して牧歌的なノスタルジーのある日本風の島を舞台にしようと思いました。街で閉鎖的な感じから、少し開放的に持っていこうかなという感じで、まずは“島”が出てきて、そこの方言を考えたりしたのは、島だったら、その地域特有の方言があったら面白いよねっていう流れだったので、そんなに深いものではないんですけど。
来楽:現代日本から一歩踏み出して、不思議な世界に入るという意味では、ちょっと隔離された島がいいのではないかと思ったんです。電車に乗ると不思議な島に行ってしまう、みたいな。
――島を繋ぐ電車も出てきていましたしね。方言の話では、幸人がずっと「あやかい?」ってずっと聞き返しているのが面白くて(笑)。みんなが色んな意味で使っている方言だから、混乱しているという。
来楽:何でも使える言葉として「あやかい」という方言を作ったんですけど、これは汎用性の高い「やばい」みたいな言葉だと思ってもらえればと(笑)。
宮沢:我々いつもやっていることなんですけど、いろんな設定は作っているんです。これは、たとえば興行的に成功して2期があったとき、あるいは別のプロジェクトがあったときに使えるというのがあって。なのでサブキャラクターたちも実はもっと色々な設定があるんです。その中で、アヤカセキュリティのメンバーや尽義の友人たちがちらちら出てくるんですけど、彼らみたいな人がもっとたくさんいて、日常生活を送っているというのが基礎設計としてあって。それで天文台があったり図書館があったり、島の設定だけは作っているんです。
――ひとつの街やコミュニティが、もう作ってあるのですね。
来楽:GoRAのコンセプトで、行ってみたい場所を作ろうというのがあって、今回は島全体がそうなればいいねっていう話をしながら、いろんな設定を作っていきました。
――観光地ならば観光するところがあるよな、それがあれば美味しい食事処があるなみたいな感じですかね?
来楽:はい。一ノ島のシーンでは、ストリートミュージシャンが画面の端に映っていたりするんですけど、グルメとか音楽が栄えている街という設定で作っていました。
宮沢:『K』でもバーとかをすごくこだわって作っていたり、要するに居場所というものがあると、“絆”というものを表現しやすかったんです。なので、この人たちが集まっているときは、一体どこにいるんだろうみたいなところは結構重要視していました。今回は島ということで、どういう家があるのかとか、そういう部分はこだわっていたりします。
――アニメには出てこない設定がたくさんありそうです。
宮沢:最初のうちはあまり意味がないのかもしれないんですけど、コンテンツが広がっていくと、のちのち有効だったりするので、何かあればいいですね(笑)。
来楽:「和」というところだと、異世界みたいだけど懐かしい感じも欲しくて、それで「和」の感じが強いのかなと思っています。
――ある意味、鞍馬はかなりの「和」ですからね。
来楽:彼はあの格好のまま日常生活を送っていますからね(笑)。
宮沢:redjuice(キャラクター原案)さんのデザインがすごく秀逸なんですよ。日常生活を送る服ではないよなって思うんだけど、すごくいいんですよね(笑)。
来楽:家ではさすがに部屋着を着ているんですかね? それも着物なのかな?(笑)。
――あと、島には不思議な存在がいて、ミタマとアラミタマがいるのですが、これはファンタジー要素になっています。
来楽:そうですね。この世界の不思議要素としてミタマとアラミタマを考えていて。でも私たちの中でアラミタマって、もう少し漠然としたデザインのつもりだったんです。でも、スタジオブランさんがアラミタマを一体一体違うデザインにしてくださって、監督さんたちの力によって具体化された感じがします。
宮沢:要するに精霊みたいなものという感じだったんです。ただ、絵が付くときに、私たちはなるべく絵のお邪魔にならないようにしているんです。要素だけお出しして絵をデザインしていただくことが多いので、今回も、漠然なイメージをお伝えしたところ、このデザインになった気がします。
来楽:私たちからは、たしか「悪い気の塊」みたいなことを伝えていたと思います。
宮沢:だからこんな生物的な形になるとは思っていなかったので、面白いですね。
――ミタマは可愛かったですよね。
来楽:ミタマに関しては、マスコットキャラクターみたいな感じにしてほしいというリクエストはしていました。
宮沢:その声を椎名へきるさんが担当するっていうのは、すごいですよね(笑)。