TVアニメ『【推しの子】』の魅力をさらに引き出した主題歌の存在|OP「アイドル」&ED「メフィスト」はこれ以上ない究極の楽曲
2023年4月より放送されたTVアニメ『【推しの子】』。最終回後には、第2期制作決定の特報PVが流れ、ファンを歓喜させていたのは記憶に新しいが、今回はそんなTVアニメ『【推しの子】』のOP/ED主題歌について、改めて振り返っていきたい。
『【推しの子】』は、『週刊ヤングジャンプ』(集英社)にて連載されている漫画で、『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』の赤坂アカと『クズの本懐』の横槍メンゴの豪華タッグによる話題作である。「次にくるマンガ大賞2021」のコミックス部門1位に輝くなど、アニメ化前から、人気・話題にもなっていた。
舞台となる芸能界を新たな切り口で描きつつも、転生モノであり、アイドルモノであり、ミステリーモノでもある。みんなが大好きな要素をこれでもかと盛り込んでいながらも、それがまったく破綻していない。むしろそれらの要素が絶妙に絡み合っているのだから、この作品は本当に只者ではない。あくまでフィクションではあるが、ある程度正確に芸能界の裏側を描いているセンセーショナルな感じも、視聴者を引き付ける大きな要素にもなっていた。
そして、これらの要素の中から、主にアイドル視点で描いたのがYOASOBIのOP主題歌「アイドル」で、ミステリー色強めで描いたのが女王蜂の「メフィスト」だと思っている。というより「アイドル」に関しては、ある意味、第1話に特化した曲のようにも思える。
多くの要素が詰め込まれた「アイドル」
先程、話題作と書いたが、それを本当の意味で理解したのは第1話だ。アニメでは異例の90分拡大放送――制作サイドの本作への力の入れようがひしひしと伝わってきた。30分枠が単純に3倍になっているのだから、ほぼ映画である。本作のプロローグに当たる第1話は、アイドルグループB小町のセンターであり、天才アイドルでもあるアイが、双子(アクアとルビー)を産み、2人を育てながらもその才能を開花させ、アイドルとして輝きを放ち、人気絶頂かというところでストーカーに刺殺されるという激動の人生が描かれている。そして、その最後に流れたのがYOASOBIの「アイドル」だ
多くの要素を盛り込んだアニメと表現したが、要素の詰め込みという点で、YOASOBIは群を抜いている。アイドルという偶像への崇拝・信仰をクワイアで表現し、仲間からの嫉妬や妬みをヒップホップに、そしてサビは転調で変化をつける。3分半の曲とは思えないほど、本当にいろんなことが起こっている。そして歌詞では、そのすべてをかけて、天才アイドル・アイを描いている。赤坂アカの描き下ろし小説「45510」(※TVアニメ放送記念として公開)をベースに、「嘘はとびきりの愛」と語るアイの想い、その嘘が愛だと確信に変わるまでを描いていくAyase(コンポーザー)の歌詞は実に感動的だったし、彼のアイへの愛も伝わってきた。またラップ以外は、アイが乗り移ったかのようにキュートに歌うikuraのボーカルも素晴らしく、聴く人すべてを虜にするかのようだったし、そもそもこの激ムズのメロディラインを、かわいく歌い上げてること自体が凄まじい。
インパクトが絶大だった「アイドル」は、配信リリースから約2週間で、全世界動画・ストリーミング再生計1億回を突破。Billboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”にて、2週連続の総合首位を獲得するなど、数多くの記録を打ち立てた。ちなみに、全編『【推しの子】』のアニメーションで描かれたMVは、現時点で2.2億回視聴されている。