『シークレット・インベージョン』ニック・フューリー役・竹中直人さんインタビュー|「声優の仕事ができるのは、とても嬉しい」
『シークレット・インベージョン』第1話ラストは鳥肌モノ
ーー本作はいわゆる諜報戦が描かれるサスペンス・スリラー。これまでのMCU作品にはなかったテイストは、とても見応えがあります。
竹中:誰を信じていいのか分からない緊張がずっと続いているから、いい意味で疲れますよね(笑)。ヒーロー作品って明るいテイストの作品が多かったけれど、(『ダークナイト』シリーズの)クリストファー・ノーランを含めいろいろな監督がその決まりを変えて、ヒーローでもダークな世界が描かれるようになりました。近年のMCUも闇の部分が描かれるようになってきて、怖いですよ。『シークレット・インベージョン』では、ニックがいつ誰に殺されるのか分からない状況なので、毎回ハラハラします。
ーー第1話のラストでは、ニックの片腕的な存在であるマリア・ヒルが殺されてしまうという衝撃的な展開にかなり驚かされました。
竹中:まさかマリアがあんな結果になるとは……。今思い出してもゾクッとしてしまいます。とてつもない衝撃でした。
声を当てている時には本当に泣きそうになりました。マリアはニックに撃たれたと思って死ぬんです。本当はニックの姿に擬態したスクラル人なのに…。「違う! 私じゃない!」と言ってもマリアには伝わらない…。苦しいですね。倒れたマリアを残したまま連行されてしまうから否定のしようがない。どうしようもない思いを抱えながらアフレコをしました。
ーーそんなスクラル人の中でも、本作でニックと一番関わりの深いタロスについてはどのような印象をお持ちですか?
竹中:タロスは好きです。ニックとタロスはお互いに尊敬し合い見守っている関係性がありますからね。
タロスに限らずですが、MCUの世界って誰もが魅力的に描かれていて、一人ひとりが主人公だと感じます。それが例え悪であっても、同じですね。みんなが魅力的。『エンドゲーム』を見た時には、それをすごく感じました。ヒーロー、ヒロインが総出演なのに、誰一人として影が薄まらず、全員の見せ場がちゃんとある素晴らしさ!『シークレット・インベージョン』に登場するキャラクターたちも見事に見せ場があり誰もかすまない。愛ですね…。
「みんな優しくなりすぎて怖い……」
ーー本作は「誰を信頼していいのか分からない」が一つのテーマだと思うのですが、竹中さんご自身は疑り深い性格ですか?
竹中:基本的には常に人を信じています。人を疑ってかかるようなことはしませんね。僕自身も約束は必ず守っています。
ただ最近は、やたらな表現は決して許されないし、無難に事を運ばないといけないので、誰もがあまりにも優しい人になり過ぎていて怖いです。何を考えているのか分からない(笑)僕が劇団にいた頃は「そんな芝居じゃ駄目なんだよ!!」と怒鳴る人もいっぱいいました。今はそういうことをしたら大問題になってしまいますものね。昔は怒鳴られたら怒鳴られたで面白かったんですよ。傷つく事も勉強でしたからね。何が本当なのか嘘なのか、分からない時代になってるような気がします。
ーー逆に疑り深くなってしまうんですね(笑)。
竹中:それに今は監視カメラも至る所にあるし、誰がどこで見ているか分からない時代なのも怖いです。それに今はスマホで簡単に撮影されてしまう時代ですからね。以前、友達と飲んでいた時に隣の人がずっと会話を録音していた事がありました。録音していることに気づいてもしばらく普通に話していました。でもさすがに「すみません、会話録音してます? 止めてもらえると助かります。」と言いました。あえて気にせず嘘の会話を作って話せばよかったかな。「いやあ おととい、ハリソン・フォードと喫茶店に行ってさ、コーヒーフロートを一緒に飲んだんだよね。」とかね。でもそれはそれで本気にされてしまう可能性もありますからね。いや、それはないか!