『贄姫と獣の王』第2クールED曲「call your name」を歌うkatagiriさんに初インタビュー! 音楽のルーツや『贄姫』の魅力、プロジェクトの展望などを語る
『贄姫』は異世界感が素晴らしい、温かさや勇気を与えてくれる作品
――『贄姫と獣の王』について、原作やアニメの第1クールなどをご覧になった印象をお聞かせください。
katagiri:お話をいただいてから原作コミック全15巻とスピンオフ2巻を一気に読ませていただいて、この作品にどう音や声がついて、アニメとして動くんだろうとワクワクしました。
実際にアニメの第1クールが始まると、想像を遥かに超えたクオリティで、声優さんのお芝居も声を聴いただけで「あっ、サリフィだ!」とイメージ通りで、より『贄姫』の世界に没入できました。劇伴も素晴らしくて、BINさんが歌われている第1クールのOP曲「朔の贄」のピアノver.が大切な場面で効果的に流れていて、関わっている皆さんの愛が感じられました。
――作品の世界観も独特ですよね。
katagiri:現代でもなく、地球上のどこにもあるようでないような異世界感がいいですよね。あと、登場する魔族はいろいろな動物から派生していますが、それぞれ元の動物らしさが繊細な部分まで描かれていて。魔族の王であるレオンハートも、サリフィたち人間に大切に接しながらも、魔族の王として強さや威厳を保たなければいけないと葛藤する姿がとてもカッコいいなと思いました。
レオンハートを支えるアヌビスさんやヨルムンガンドさんたちからも愛情が感じられて。いろいろなキャラクターたちが、それぞれ誰かのことを想い考えている姿がシーンの節々に垣間見えて、温かさや勇気を与えてくれる、そんな作品だなと思います。
「call your name」は、誰かの光になれる曲を目指した楽曲。作中のキャラのことを考えつつ、誰でも置き換えられるようにした歌詞にも注目
――第2クールのED曲「call your name」の歌唱、作詞・作曲を担当されていますが、制作するにあたってアニメの制作サイドからオーダーはありましたか?
katagiri:あまり細かいオーダーはなくて、「ED曲なので、少しゆったりして落ち着いた感じで」くらいでした。あとはお任せいただけたので、私が作品から感じたこと、そしてこの作品のEDにふさわしい曲をと自分なりに考えながら作らせていただきました。
――楽曲制作のコンセプトや意識されたことをお聞かせください。
katagiri:まずいくつかのキーワードから考えていきました。「名前」だったり、「誰かを傷つけてしまうことと救うこと」、「強さと優しさ」、「光と陰」を表現したいなと思いました。
私は楽曲を作る時、コードを弾きながら思いついた言葉を歌にしていきますが、この曲は作品を見た後にいろいろなシーンを想像しながら書いていきました。自分の中で大切にしたいなと思ったことは、レオンハートはただ強くてカッコいいだけの王様ではなく、心の奥に潜んでいる暗闇を照らして、優しく包み込んであげるサリフィの強さと優しさも描きたいなと。そして、誰かにとっての光になれるような曲を作れたらいいなと思いました。
――今回、Klang Rulerのyonkeyさんにプロデュースしていただくことになった経緯をお聞かせください。
katagiri:2020年に「きみはうつくし」という曲を作った時、yonkeyさんにプロデュースとサウンドメイクをお願いしましたが、そのアレンジがすごく良くて。なので、今回のタイアップのお話をいただいて曲を作った後、「どうアレンジしようかな」と考えた時、またyonkeyさんにお願いしたいですとオファーさせていただきました。
私からは「暗闇を照らしてくれる優しい光のような、道しるべになるような曲にしたいんです。壮大すぎるわけでなく、隣りで寄り添うように」とイメージをお伝えしました。
――メロディラインは美しいのに、ところどころに異世界を感じさせるような音が入っていて、楽曲の温かさや浮遊感につながっている気がしました。
katagiri:そうなんです! yonkeyさんに「魔族がすむ異世界感が欲しいけど、でも民族音楽っぽいものではない音色がいいです」とお願いしたところ、素敵なアレンジをしてくれました。
――歌詞は、作品の世界観に寄り添っていて、ED映像と相まって、サリフィ目線でレオンハートへの想いを歌っているように感じました。
katagiri:レオンハートをはじめ、この作品のキャラクターたちはどうして優しくて、温かくて、強くいられるのだろうと考えながら歌詞を書いていきました。
私はネガティブな曲を書きがちだったんですが、この曲では『贄姫と獣の王』を読んで感じた温かい気持ちを素直に書いたので、サリフィの気持ちに少しでも近づいていたらいいですね。
あと、例えば1Bの「その言葉一つが誰かを救って その言葉一つが誰かを追い詰めた」をレオンハートに置き換えたら、戦いは誰かを傷つけているけど、誰かを救っているという矛盾を感じるかもしれないし、聴いてくださった方自身にも置き換えられるようにということも意識しました。
――katagiriさんのとつとつした歌い方もいろいろなことを理解しつつ、包み込んでくれるようにも感じられました。
katagiri:私は激しく、感情を込めて歌い上げるのが得意で、よくそういう歌い方をしていますが、この曲に関しては冷静に、ポツリポツリと語り掛けるように、物語を自分がしゃべっているような感覚で歌いました。あなたと私のどちらかではなく、第三者目線で見ているような意識でレコーディングに臨みました。でも大サビの部分は、そこまでの感情の波が30%くらいだとすれば、80%まで上げようと。
――そのサビに入る前のストリングスからエモくて。
katagiri:すごくいいですよね。生のストリングスで録っていただいて、その収録現場にもお邪魔させていただきました。ストリングスには人間の声のように倍音(通常となる基音よりも数倍の振動数がある音)があると言われていますが、生の弦楽器が入ることで、心を揺さぶられるし、歌声も押し出してくれる感じがして。また壮大すぎず、いいバランスで。打ち込みじゃなく、生のストリングスで良かったと思いました。