今度の『ヒプマイ』はフェスだ!『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』最新EP「The Block Party -HOMIEs-」「The Block Party -HOODs-」を全曲お祭りレビュー!
「The Block Party -HOODs-」編
ようやく後半戦です! みなさん、ついて来られているでしょうか? ここからも長いのでゆっくりご覧くださいね。
さて「The Block Party -HOODs-」ですが、こちらも「HOODs(フッズ)」についてから始めましょう。単数形で書くと「HOOD」なのですが、「フード」ではなく「フッド」と読みます。
ヒップホップのスラングとして使われることが多い単語です。簡単に訳すと「地元」という意味合いが近いかなと思います。ヒップホップは元来、地元を代表(レペゼン)する文化なので、地元を大事にするということも念頭において曲を作っていることがしばしば。ラッパーがよく「俺の地元が◯◯〜」と歌っているのはこれですね。
また、「地元の人間のような振る舞い」という意味合いもあります。どういうことかというと、例えば地方で活動していた歌手が東京に進出して売れて、方言を使わなくなったり、地元を隠して活動したりみたいなことはよくあるかと思います。これはヒップホップの文化的にはあまり好まれる傾向がなく、あくまでもその土地に根付いたことを誇りに思って活動することが美学であったりします。「初心忘るべからず」ということですね。
それを鑑みて「The Block Party -HOODs-」ですが、それぞれの地元を代表するメンバーが集まったブロック・パーティーという感じでしょうか。地元にはそれぞれのバックボーンがあり、そのバックボーンを背負ってフェスにやってきている、というのはアツいですよね。
そして、「The Block Party -HOODs-」に収録されている楽曲たちもすごいんです……! ではレビューしていきましょう!
大人の魅力、見せてやりましょう「白と黒」天谷奴 零 & 入間 銃兎
天谷奴 零と入間 銃兎はスカバンドサウンドできました! スカとはジャマイカで生まれた音楽で、レゲエと親戚のような音楽です。ギター、ドラム、ベースの他にトランペットやサックスといった管楽器などで構成された独特なメロディを奏でます。ジャズと近い要素もあるので、似ていると感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。「スチャ、スチャ」というリズムを感じたらスカの可能性大!
「白と黒」もスカではあるんですが、ツートーンスカというジャンルだと思われます。イギリスに移民として移り住んだスカをやっていたジャマイカ人(黒人)と現地のパンクロックをやっていたイギリス人(白人)が一緒にやったスカがツートーンスカです(ちなみに、当時の流行りの服装も白と黒のツートーンだったとか)。なんと曲名の「白と黒」にもピッタリ。
YouTubeのコメントを見ると「昭和チックでかっこいい!」とありましたが、昭和世代で刑事ものだと伝説のドラマ『太陽にほえろ!』が思い出されますね。メロディラインやリリックビデオもどことなく似た雰囲気があるような……。『太陽にほえろ!』はハードコアなドラマなので一見の価値ありです。平成初期生まれならギリギリわかるかもしれませんが、松田優作さんの「なんじゃこりゃ!」が生まれた伝説の作品でもあります。
話がそれましたが、「白と黒」。こちらは激渋な楽曲に仕上がっています。天谷奴 零は詐欺師、入間 銃兎は警察の視点で逃亡劇を歌い上げています。
「赤いランプにサイレン 白と黒の棺桶」、たしかにパトカーは白と黒。「白も黒に変えるぜ 二枚の舌とマイクで」、しかし詐欺師には社会のルールさえお構いなし。刑事もののドラマのような展開がアツく、渋く、コミカルです。
そして、正反対の立場にいるふたりも共通点が。「法にふれた この手に 似合う鎖は あるか 何をかけるか かけれるか 白い煙に 巻かれて 黒い嘘を 吐きだす 何をやるかだ やり方で騒ぐな」とお互いの立場で法を犯したふたり。このふたりにとっては、法というのはあくまでも社会的な正義でしかなく、自分の正義に従うことを優先するのかもしれませんね。激渋。
個人的な思い出が詰まったあのバンドに再会するなんて……
「白と黒」の楽曲制作を担当したのはドレスコーズ。作詞作曲はボーカルの志磨遼平さんです。志磨遼平さんには個人的に思い出があるのでぜひ書かせてください……。
私が大学生になったとき新入生歓迎ライブというのがあり、友人に誘われたのもあって参加したことがありました。友人たちはメインのバンドがお目当てだったようですが、私は狂ったヒップホップ原理主義者だったのであくまでも付き合いという感じでした。
あまり興味なくギュウギュウ詰めなライブハウスでつらい思いをしていたのですが、そこで登場したのが、志磨遼平さんがドレスコーズの前に組んでいたバンド・毛皮のマリーズだったのです。披露した曲は「ビューティフル」。
めちゃくちゃかっけぇ……。あまりのかっこいいパフォーマンスに見惚れる私。ぼーっとしてたおかげで、後ろからモッシュしてきた人の回し蹴りを食らい、私の眼鏡は宙を舞うのでした。
ライブ後、なんとか友人が見つけてくれた眼鏡はツルが片方なくなり、眼鏡としての機能は失われていました。そんな折、帰りの車の中で友人たちと「メイン以外でかっこよかったバンドは?」という話に。なんと全員が毛皮のマリーズと答えたのです。特に「ビューティフル」がお気に入りで、みんなでカラオケに行った際は誰かが歌い出すほどに定着していました。
大学卒業後、毛皮のマリーズと離れてしまった私ですが、なんとここでドレスコーズと出会うとは。なんとも不思議な縁もあるものですね。