2.5次元
舞台『プリキュア』鷲尾天×ほさかよう対談インタビュー

『Dancing☆Starプリキュア』The Stage鷲尾天(スーパーバイザー)×ほさかよう(脚本・演出)対談インタビュー

「男子プリキュア」が活躍する舞台、『Dancing☆Starプリキュア』The Stageが上演決定! 人気アニメ「プリキュア」シリーズ初の舞台化は、男子高校生たちがプリキュアに変身して、ダンス&バトルを繰り広げるオリジナルストーリー。本公演のスーパーバイザーを務めるのは、同シリーズの“生みの親”である東映アニメーションの鷲尾天プロデューサー。脚本・演出を務めるのは、彩りあふれるファンタジーと鋭いリアルを織り交ぜた世界観に定評のある、ほさかようさん。おふたりに、本作にかける思いをうかがいました。

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“らしくある”ことに対して、常に違う形で答えを出す――。「男子プリキュア」にかける思いを、スーパーバイザー:鷲尾天Pと脚本・演出:ほさかようさんが語り尽くすインタビュー!

―― 男性キャストによる「プリキュア」初の舞台公演。企画をお聞きした時のお気持ちをお聞かせください。

鷲尾天さん(以下、:鷲尾)実は私が言い出しっぺなんです。プリキュアシリーズの20周年に色々やりたいねと話している中で、プリキュアを見てきた人たちが集まれるような場所を作りたいという思いから始まりました。昔を思い出して「プリキュアって楽しかったな」と思える場所がリアルな舞台だったら面白いのではないかと考えたのですが、最初は周りの人に話してもリアクションが薄かったんです。ですが意見を聞く中で2.5次元舞台を観に行くことがあると耳にして、「じゃあ、若手俳優さんたちで男子プリキュアがメインの舞台をやったとしたら?」と尋ねたら、目の色が変わりました。それで可能性を感じて色々な方にご相談させていただき、実現に至った次第です。企画を聞いて驚いたというより、驚かせる側にいました(笑)。

ほさかようさん(以下、ほさか):僕は驚いた側です(笑)。子供の頃からアニメが大好きだったので、プリキュアの初代も見ておりました。そのプリキュアを男性キャストで舞台化すると聞いた時は大変面白そうだなと思うと同時に、「誰が言い出したのだろう?」と気になって。プリキュアを作られている方々はこの企画をどのように感じるのだろう……と思ったら、その方からのご発案なの!? と二度驚きました。

鷲尾:(笑)。

ほさか:ですがそれを知って安心したところもあります。プリキュアが「固定観念を壊す」というテーマで始まっているということも伺ったので、今回の舞台でも成し遂げねばならないことの重圧を感じつつ。鷲尾さんを始めとするプリキュアを作り上げてきた方々同様に、愛情を持って作っていかねばと思っております。

―― 現在放送されているプリキュアシリーズ 第20弾『ひろがるスカイ!プリキュア』で男子プリキュアがメインキャラとして登場したことも話題となりましたが、鷲尾さんはその記者会見で「いずれ、プリキュアは女性に限らなくていいと考えていた」と語っておられます。

鷲尾:そうですね。これは自分の体験談ですが、幼稚園の頃は同級生の女の子と一緒によく遊んでいたんです。小さい頃は社会的な概念が希薄ですし、体力差もほとんどない。だとしたら自分たちで立ち向かったり解決していくことを女の子だけでやってもいいし、男の子が助けに来なくてもいいだろうと。「ふたりはプリキュア」をともに立ち上げた西尾大介監督ともそのことは随分話しました。それを自然に、ごくふつうにやろうねと話して始まった物語だったんです。逆に男の子だったらプリキュアになれないのかというと、そんなことは全くない。この20年でプリキュアは女の子がなるものだという固定観念を積み上げてしまったように見えるかもしれませんが、そんなことはないんです。自由でいいのではないかとずっと思っています。

ほさか:僕もあらためてプリキュアのことを調べていて、初代のキャッチフレーズは「女の子だって暴れたい」だったと知りました。このコンセプトを掲げた作品で男の子たちが活躍するお話を描いていいのかなと一瞬は思ったのですが、初代は20年前。女の子が女の子らしくしていなければいけないという当時の風潮を壊していこうと掲げられたのであって、女の子しか暴れてはいけないわけではないんですよね。だから「男子プリキュア」はプリキュアの魂や概念から逸脱するものではないのだと感じました。

――とはいえ、舞台化の情報解禁時は「男子プリキュア」がSNSでトレンド入りするほど大きな注目を集めました。

鷲尾:そこは私も気を抜いていたところがありまして。プリキュアは誰からも注目されていないような状況で立ち上げた作品でしたから、皆が思っているものと違うことをやったとしてもそれほど注目を集めないだろうと思っていたんです。それでコソッとやっちゃおうみたいなつもりだったんですけど、コソッとできなかったですね(笑)。でもやるべきことは今までと変わらないです。「プリキュアってこういうことじゃないかな」というものをほさかさんと考えていくので、きっと実際のステージを見ていただければご納得いただけるんじゃないかなと思います。……今、ほさかさんにすごくプレッシャーをかけてしまいました。

ほさか:ヒシヒシと感じます(笑)。でもこうしてお話ができて良かったです。繊細な作業にはなると思いますが、身構えたままでは結局何もできないで終わってしまう気がするので。スクラップ・アンド・ビルドじゃないけれども、あまり恐れずに「これはどうでしょう! 違うか、じゃあコレ!」と、どんどん出していければと思います。「繊細にやっている場合じゃない、まずはやろう!」という意気込みです。

鷲尾:もちろん、お任せしています! 私自身が散々色々なものを壊しておいて、今さら人に「壊すな!」と文句を言うわけないですから(笑)。

―― おふたりが感じるプリキュアの魅力、プリキュアらしさはどんな部分にあると思いますか?

鷲尾:これは自己矛盾を抱えてしまうので大変難しい。番組開始当初は「男らしく」「女の子らしく」を否定したところから始まっているので、“らしく”という言葉は非常に使いづらいんです。ですが、あえてその言葉を当てはめるものがあるとすれば、常に何かに抗い続けていた結果だろうと思います。“らしくある”ことに対して、常に違う形で答えを出していく。それが20年、20作品連なると、「プリキュアってそういうことだよね」と見てもらえるのかなと思っていて。一つひとつは“らしさ”との戦いだったのではないかと思いますが、常に疑問を持ち、抗い続けることによってシリーズとしてひとつの作品に見えているのではないかなと。今回の舞台も、その流れの一環としては全く自然なものだと私は感じています。

ほさか:僕にはプリキュアに携わっている歴史がないので個人的な感覚になりますが、プリキュアの魅力は「かわいい!」に尽きます。もちろん人によって色々なニュアンスでその魅力を表現されていると思いますが、カッコイイとかキレイとか、ちょっと大人びた表現とはまた違った「かわいい」という言葉が、自分の感性としてはしっくりくる“プリキュアらしさ”かなと。そして言葉にするのは難しいのですが、「これもありだし、あれもありだよね」という優しい哲学のような揺るぎない信念をシリーズからは感じます。それが鷲尾さんがお話をされた、“らしくある”に何かを狭めていかないことなのかなと思いますね。台本を執筆するにあたりプリキュアシリーズを見まくっているのですが、どれも面白いんですよ。最初こそ「子供向けで作られているものでしょ」なんて穿った見方で見始めるものの、気が付けば夢中になっている。子どもが喜ぶシーンもあれば、大人にも響く瞬間がある。その懐の深さを舞台でも目指したいなと思っています。

―― 現時点の段階で、プロットのご感想やハードルに感じていることをお聞きしたいです。

鷲尾:私はプロットを読んだ時に、「このステージだったら“プリキュアだ”と堂々と言えるし、きっと面白いものになるだろう」と思いましたね。こういった形で進めていただけるのが本当に嬉しいし、ありがたいことだと思いました。

ほさか:ありがとうございます! まだ未確定な箇所も多いのですが、何をどこまで描くべきかを皆さんと相談しながら作り上げていければと考えています。悩みとしては男子プリキュアが高校生であるところ。中学生が思い描く夢と高校生になってから抱く夢は違ってくると思うので。高校生になると現実がある程度見えてくるものだと思いますが、そこを掘り下げるべきか否か……。幸いにしてメインキャラクターが5人登場するので、真っ直ぐに子どもの夢を信じる子もいれば、リアルを見つめている子もいて、と描き分けていければとは思っているのですが。アニメシリーズのメインキャラクターは、中学生であることが多いですよね。

鷲尾:そうです。プリキュアの年齢設定はシビアに考えていました。番組の対象は未就学児ですが、最初から未就学児向けで考えると年頃的にすぐ飽きてしまうだろうと考え、内容の対象年齢は少し上に想定したんです。小学1年生から3年生ぐらいが喜んで見るストーリーにすれば、おそらく下の年齢もついてくるだろうと。それから8歳前後の女の子が憧れを持つ年代はどこだろうかと考えた時に、高校生ではほぼ大人として見えているだろうなと思ったんです。けれど小学校高学年に近い年齢だと若干ライバル意識が芽生えてしまう。だから素直に憧れを抱けるであろう、中学2年生で初代のプリキュアは始まりました。

ほさか:なるほど。もう一点、ダークな面をどこまで描くべきかという部分も打ち合わせを重ねています。やはり生身の人間が喋る言葉と、アニメーションでの彼女たちが発する言葉は響き方が違ってしまうので。舞台ではどうしても生々しさが出てしまうんですよね。彼らが立ち向かう悪意をどう描くべきかが、難しい。

鷲尾:アニメシリーズでは対立の概念で悪役のイメージを決めていたんですよ。例えば初代だと「光と闇」、2代目は「命と滅び」だったと思います。『Yes!プリキュア5』は「希望と絶望」。そうすると向き合った時、常にお互いの主張が違う。コミカルな悪役もいっぱいいましたが、それは声優さんたちのアドリブだったりもしています(笑)。基本は対立の概念で、それが通ってさえいれば首尾一貫した話になるんですね。そのこと自体は子どもに気付かれなくてもいいんです。子どもの記憶力は圧倒的なので、大人になってからふと思い出した時に「ああ、こういうことを言っていたのか」と後で気付くこともあるのではないかなと思うので。我々送り手側としては、「こういう対立の概念を思い描いているんですよ。だからそこに対してきちんとノーと言える主人公たちが大事な存在なんですよ」ということを込めています。それでこそプリキュアたちが立ち向かい、向き合う理由になる。これはずっと意識してやってきていることなので、シリーズが今も続いている理由になっているのかなと思いますね。

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[文/片桐ユウ]

<公演概要>


『Dancing☆Starプリキュア』The Stage

・公式HP https://www.marv.jp/special/precure_stage/
・プリキュアシリーズ公式ポータル https://anime-precure.com/
・公式Twitter  @precure_stage
・公式Instagram precure_stage_official

・公演日程・劇場
【TOKYO】2023年10月28日(土)~11月5日(日)品川プリンスホテル ステラボール
【OSAKA】2023年11月10日(金)~11月12日(日)サンケイホールブリーゼ

・チケット
S席 11,000円/A席 8,800円 (前売・当日共/全席指定/税込)
チケット取り扱い:ローソンチケット https://l-tike.com/precure_stage/

チケットスケジュール
オフィシャル先行/LEncore先行:8月21日(月)12:00~9月10日(日)23:59
プレリクエスト先行:9月11日(月)12:00~9月18日(月・祝)23:59
一般発売:9月30日(土)12:00~

・キャスト/スタッフ
原作:東堂いづみ
スーパーバイザー:鷲尾天(東映アニメーション)
キャラクターデザイン:川村敏江
脚本・演出:ほさかよう

出演者:
キュアトップ / 星河 楽 役 田村升吾
キュアロック / 夏目颯斗 役 滝澤 諒
キュアソウル / 月宮爽々奈 役 森田桐矢
キュアカグラ / 天弦晃雅 役 寺坂頼我
キュアブレイク / 黒瀬舞人 役 小辻 庵

パドドゥ 役 和合真一

鈴ノ木 蛍 役 平松來馬
内海 充 役 TAISEI(G.U.M)

室井 一帆 役 伊藤裕一

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©Dancing☆StarプリキュアThe Stage製作委員会

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