「舞台の面白さを教えてくれたのがキヨさんでした。役者はいつか舞台をやりたくなるぞと言われたことがあったんです」81ACTOR'S STUDIO講師・鈴木清信さん、生徒・中島ヨシキさん、稗田寧々さん鼎談インタビュー【短期連載第2回】

中島さんと稗田さんは「真逆のタイプ」

ーー鈴木さんが覚えていらっしゃる範囲で構わないのですが、改めておふたりはどのような生徒だったのでしょうか？

稗田：えっ、待ってください！（笑）

鈴木：（中島さんは）12、3年前でしょ。（稗田さんは）7、8年前ですよね。だから覚えていないこともあるんですけど、今日のお話をいただいて、昨日資料を整理していたら、偶然（ふたりの）成績表が出てきたんです。中島は結構生意気だったんですよ。

中島：はい（苦笑）。

鈴木：なんといっても17、18歳ですから。イケイケの年齢だったから、叩きがいがあるなと（笑）。役者というのは、ある種そうじゃないと駄目なんですよ。反対に稗田くんは、優等生タイプです。

言葉を変えると、要するに中島は自己主張が強いんですよ。自己主張は役者の個性になっていくものですから、とても重要なものなんです。若かったから変なところもあったけど、それはその度にツッコんでました。するとめげずにいろいろな表現に挑戦してきます。だから、ほっといても基礎だけ叩き込めば何とかなるだろうと思っていました。違ったら違うぞと言えばいい。ときには怒鳴ったりしたこともありますけど……。「どこ行ってんだよ。帰ってこい！」って。

中島：（笑）。「どこ行ってんだ」とよく言われていました。自分がこうと思っていたものが、やっているうちにどんどん道を外れていくんですよね。やっている気にはなれるのですが。

鈴木：それで自分だけ気持ち良くなってもね。

中島：そうです（苦笑）。

鈴木：「これだとお客が求めてるものは違うよ」と。今でも中島の声を聞くと、自分なりの個性が出ていて良いなと思いますよ。当時はそれを単純に表現すると生意気になるというか。それぐらい反発力があったんです。

中島：そうですね……。そうだったと思います。

鈴木：生意気すぎてアドバイス聞かないのは困るけどね。でもね、それはそれで。

中島：いかに自分がセリフを読まずに終わるか、というか（笑）。僕の場合は専門学校卒業後、特待生として入所させて頂いたので、周りに年上の人しかいなくて、自分が一番年下。それもあって、めちゃめちゃ生意気でした。

鈴木：「そのくらいできるわい！」って顔してましたよ。

中島：自分が一番上手いと思ってました、本当に（笑）。

鈴木：でも良い形で踏み外さずに、ちゃんと仕事の道に行ってくれたから、それはそれで良いんじゃないかと思いますね。それと正反対だったのが、稗田くん。真面目なタイプでしたが、実はくそ真面目でも良くないんです。

要するに中島は個性が先に来て、基礎的なことや考え方が後に見えてくればOKで。一方の彼女はおっかなびっくりで、こっちがアドバイスしたことはちゃんとやるんです。ただ、さっきも少し言っていましたが、問題はどう自分の心を取り出すか。

ーー鈴木さんはどのように指導されていくのですか？

鈴木：素直にやってみるのが一番です。ひるんでいたら「怯むなよー！　弾けろー！」って言って。そういう意味で、ふたりは正反対だよね。少しずつ開き方も理解していったのですが、喋りの基礎は最初からできていました。

稗田：同期だと白石兼斗さんがヨシキさんタイプでしたね（笑）。

鈴木：そっくりだもんな。

中島：確かにそうか。あいつは生意気だからね（笑）。

鈴木：あのクラスだと一生懸命張り合って頑張っていた優等生タイプが、哲平（上西哲平さん）だよな。その4、5年上の世代で言うと、斉藤壮馬は優等生タイプでしたね。頭も良いし、こっちの言うことがわかるから、すぐ咀嚼して表現するんです。しかもそつがないわけでもなく、全力を出してきます。「ほっといてもこいつは育つだろう」と思いました。同期には上田麗奈もいましたね。このふたりが、あの世代の双璧です。

中島：あのふたりのことは養成所の頃からよく話を聞いていました。

鈴木：だから、何も教えることがなかったですね。

ーー鈴木さんにそう言わしめるのもすごいですね……！

鈴木：基本的には放っておいて、ちょっと勘違いしたり、足りないときに「足りないよー」「そっちの方向に行かないで、もうちょっと左」と言うくらいで済みますから。同期には駒田航と高橋李依もいました。

稗田：すごい世代ですよね。

鈴木：ただ、なんせ壮馬と上田がいたもんだから。「いくだろう」というのはわかっていたんすけど、まだ基礎的なことや表現の仕方で揺れ動いていたり、足りなかったところはありました。でもこの4人は確実にいくだろうと思っていましたよ。

ーーそんな4人がいると、周りも引っ張られますよね。

鈴木：そうですね、なんせ周りにすごい人がいるわけだから。養成所的にこんなことを言っていいのか分からないですけど、当たり年でした（笑）。発表会をやっていても面白かったですよ。

稗田：うわぁ、気になる！

鈴木：上田なんて、当時からもう仕事をしていましたから。仕事が詰まっていて発表会の稽古が全然できなかったんですよ。もしかしたら出られないかもしれないという状況だったのですが、発表会の本番の前日と当日が空いたと言うんです。だから原稿を渡して「喋りなさい」って。「私出て良いんですか!?」って言うから「良いよー」と。そうしたら、翌日見事に喋ってましたよ。

稗田：すごい……。

ーー基礎は、やはり呼吸がポイントなのでしょうか。

鈴木：それもあります。先ほど言った通り、声は喋る練習をすれば、どんどん出てきますから、あとは発音の問題。それから「どれだけ表現意欲があるか」ということ。

今いるふたりは、それを既に持っていました。（中島さんを見て）こういう生意気なタイプは、放っておいてもいいんですよ。やりたくてしょうがないんですから。優等生タイプも悪くはないんです。稗田くんの場合は徐々に自信をつけていって、いつの間にか扉が開いていました。素直が一番ですよ。だから、矛盾してますよね。素直が一番って言いながら、生意気なやんちゃも欲しいって（笑）。

ーー型はないということですよね。

鈴木：そう、ないです。中にはただ生意気なだけのやつもいます。アドバイスをするのですが、「いや俺はこうしたいんです」というのが丸見えなんですよ。それだと変わることができないんです。

[取材・文／逆井マリ　編集・撮影／鳥谷部宏平]

81ACTOR’S STUDIO　2024年度生徒募集がスタート

＜申込期間とオーディション日＞
受験会場は81ACTOR’S STUDIO：東京校稽古場です。

【第1期募集】
募集期間　2022 年10 月 2 日（月）～2023 年11 月17 日（金）
オーディション日：2023 年11 月26 日（日）

【第2期募集】
募集期間　2023 年12 月 4 日（月）～2024 年1 月5 日（金）
オーディション日：2024 年1 月14 日（日）

【第3期募集】
募集期間：2024 年1 月15 日（月）～2024 年1 月29 日（月）
オーディション日：2024 年2 月4 日（日）

＜入所資格について＞
1. 高校卒業程度の学力を有し、入所時点の4月で26歳までの心身ともに健康な男女。未成年者は保護者の同意が必要です。
（高校卒業資格が必須というわけではありませんが、業界的に相応の学力が求められます）
2. 定められた入所オーディションに合格した方
3. 定められたカリキュラムをすべて受講できる状況・状態にある方
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