「声優は職人と同じで、物を創る技術を身に着けなきゃいけない。大変な仕事ですよ」81ACTOR'S STUDIO講師・鈴木清信さん、生徒・中島ヨシキさん、稗田寧々さん鼎談インタビュー【短期連載最終回】
声にまつわるトータルマネージメントを行う81プロデュースによる養成所・81ACTOR’S STUDIO。現在、2024年度生の生徒募集が2024年1月29日(月)まで受付中です。
今回の短期連載では、前回の中尾隆聖さん・原紗友里さん・米内佑希さんの鼎談に引き続き、81ACTOR’S STUDIOにおいて講師・生徒の関係である3名に当時のお話を伺いました。
本稿で登場いただくのは、中尾隆聖さんとともに「ことば」の授業の講師を担当されている役者・鈴木清信さん。専門学校卒業後に81ACTOR'S STUDIOに入所し、81プロデュースジュニア、その後81プロデュースに所属した中島ヨシキさん。第6回81オーディション 特別賞・小学館賞を受賞し、81ACTOR’S STUDIOを経て81プロデュースに所属した稗田寧々さんの3名。
最終回では、養成所時代に得た技術が現在にどう活きているのかを深掘り。声優を目指している方、入所オーディションを検討されている方へのアドバイスもいただきました。声優業に関わらず、さまざまなお仕事をされている方にも目から鱗のエピソードが盛りだくさんです。
「批評をするのは自由だけど……」野沢那智さんの教え
ーーおふたりの話を聞いていると、プロになってからも鈴木先生から教わったことがものすごく生かされてるなと思います。
中島ヨシキさん(以下、中島):演技のことは誰も教えてくれないんです。現場に出たらなおさら、自分で考えてやるしかないですし、自分で考えてやったものが一応正解として扱ってもらえるし、それに対して出演料という対価が発生している。
そう思ったらやっぱ生半可なことはできないなと思うので、準備もしないといけないし、その上で自分のやりたいことも織り交ぜる必要もあります。やりたい表現はいっぱいあるけど、プロとしてはディレクターさんのリクエストにも応えないといけない。トライアンドエラーを繰り返していくという意味では、養成所時代から変わらないですね。
鈴木清信さん(以下、鈴木):ずっと変わらないんだよね。台本が変わるだけ。だから簡単に言うと、毎日やっていることは同じなのかもしれないです。喋ってる内容とストーリー、役が違うだけですね。
稗田寧々さん(以下、稗田):なるほど。
ーーソロインタビューで鈴木さんが「孤独と協調性が大切」というお話をされていました。今中島さんがおっしゃっていたことはまさにそれなのかなと。
鈴木:両方必要なんだと思います。個人的にやる作業もあるし、協調してやらなきゃいけない作業もある。両方を使い分けなきゃいけないんです。
私が未だに肝に銘じていることがあります。ある日、芝居を見に行って批評をしていたんですよ。「あの役者はなかなかうまいよな」「あれはあんまりだよ」とか、好き勝手言っていたんです。
それを野沢那智さんが聞いていて、アラン・ドロンの良い声で「おいキヨさん。芝居について批評するのは大いに結構。でもちょっと引っかかったから言うけど、お前さんが下手だと言った役者はお前と同じだよ」と。一瞬、意味が分からなかったんです。
ーーどういう意図があったのでしょう。
鈴木:「お前がまあまあ上手いよなと言っていた役者はお前より相当上手い。ものすごい上手いと言っていた役者は雲の上。お前が目標とするべきは、遥か上の人だ。だから人のことを簡単に下手だ下手だって。それはお前の基準で物言っているんだから、ほぼお前さんと同じなんだ」。
そう言われてゾッとしました。ただ、その時はその言葉の真意まで理解するまでは至らなかった。2、3年経ってからです。当時「下手くそだなこいつ」って簡単に批評していましたけど「あ、自分とほぼ一緒なんだ」と。
口には出しませんけど、未だに銘じています。「この子は……」と思った瞬間に「俺と一緒か」と思うようにしていますけどね。
中島:今、その話を聞いてゾッとしました。
鈴木:もちろん批評は言ってもいいものです。自由ですから。ただ、みんな自分の基準がありますからね。その時点での年齢、自分の実力と感性の中で判断している。「あいつ下手だよね」という言葉も、何をもって下手とするのか。
中島:自分を物差しにするわけですね。
ーー鏡みたいなものだと。
鈴木:「あの人上手いよな」というのも自分の基準で上手いと言っている。つまり、それは自分より確実に上手いわけです。業界にはレジェンドがたくさんいますから。それはすごい表現力ですよ。いくつになってもね、ふっと我に返ってみると「うん、一緒だね」とため息をつきます。
ーー自分も考えさせられるものがあります。このインタビューを読まれている方もドキッとさせるところがあるかもしれない。
中島:そうですね。今のお話は声優だけでなく、いろいろな人に通じると思います。刺さりますね。
鈴木:他の仕事にも通じるものがあると思いますよ。