「声優は職人と同じで、物を創る技術を身に着けなきゃいけない。大変な仕事ですよ」81ACTOR'S STUDIO講師・鈴木清信さん、生徒・中島ヨシキさん、稗田寧々さん鼎談インタビュー【短期連載最終回】

81ACTOR'S STUDIOへの入所を考えられている方に

ーー今回は81ACTOR'S STUDIOにまつわる思い出を中心に多岐にわたるお話を伺いましたが、これから入所したいと考えている方へ、皆さんからアドバイスがあれば教えてください。

稗田：なんだろうな……私からアドバイスなんて、大層なことは言えないのですが……私は大学に行きながら養成所にも通っていて、本来なら受けるべき日舞や歌などのレッスンの時間割を調整していただいていました。役者を目指すという気持ちも大事なんですけど、学業と両立したいという気持ちを汲んでくださったのは、私の中でありがたかったです。そのおかげで養成所も1年で卒業できましたし、大学も4年で卒業できたので、サポート的なところは、 81ACTOR'S STUDIOに良くしていただきました。本当に良いところですよ。

大学に行きながら通いたい学生の方もいると思うので、そこは安心して大丈夫だよと伝えたいです。さきほど養成所時代にあまり友だちがいなかったというお話をしましたけど、それはちょっと尖ってたところもあったんです。みんなライバルという気持ちは強かったので「仲良くなんて……！」と（笑）。

中島：尖ってるね。

稗田：（笑）。８１オーディションから入ったので、周りから「オーディションのやつだから優遇されてるんだろう」という目で見られているようにも感じていて、プレッシャーがあったんです。だから「絶対に1年で所属してやる！」って。

歌や日舞の授業を受けられないことに対して負い目もあったんですけど、絶対に通える時間を最大限に有効活用して、復習を繰り返しやって、「この1年で学べることはできるだけ学んで、絶対に1年で所属する！」という気持ちがありました。そういう野心を表に出す必要はないんですけど、芯を持って通うと良いのかなと思います。

鈴木：その想いがこのノートに詰まってますよ。

稗田：マジ尖ってましたからね！

ーー中島さんはどうでしょう？

中島：僕の代は、稗田と真逆で、異常に仲が良いと言われていたんですよ。

稗田：クラスみんなの仲が悪かったわけじゃないですよ！（笑）　

鈴木：勝手に尖ってたんだよね。

稗田：そうです。私がひとりで尖ってただけで。

中島：でも本当に仲が良かったみたいで、未だに言われるくらい。一生の友達もそこで出来ましたしね。

今振り返って思うのは、養成所に入って終わりではないし、スタートですらないということ。本来はまだまだ準備段階なのですが、1個1個、満足しちゃうところもあると思うんです。養成所に入れたから「８１プロデュース」に所属できるのかと言われたら、別にそういうわけでもない。1学期頑張って、オーディションをやって、Aクラスに入れたら、もう決まりということでもない。もちろんAクラスだったのに所属できずに役者を辞めた子もいっぱいいます。

じゃあ、所属できたから、オーディションが待っているだけかと言ったら、そういうわけでもない。ずっと何かしら壁が立ちはだかり続けるし、自分で考えなきゃいけないことがたくさんあります。それに対して、アドバイスをしてくれる人っていないんですよ。自分がどうなりたいかを常に考えなきゃいけないので、考え続けてほしいなと思います。

ただ、まずは門を叩くことが第1ステージクリアだと思います。養成所に入ろうと思って、願書を送ったこと、入所金を支払ったこと、入所式に出席したこと、レッスンの1日目に行ったこと……そういう小さいことを目標にして、所属することを真ん中の目標にして、生涯続けることを大きい目標にして、と常に考え続けていくのが良いんじゃないかなと。

鈴木：それってすごく大変な作業なんですよ。職人と同じで、物を創る技術を身に着けなきゃいけないので。それが基礎なんですけど、そこから先には創意工夫が求められます。

今どきは個性個性と言いますが、みんな個性はあるんです。我々の仕事の場合、表現したときに初めて個性が出るものなんです。表現の仕方が個性になる。「私、個性がないんです」って言うけど「その顔自体が個性だよ」と。ちょっと口が悪いように聞こえるかもしれませんが、同じ顔の人なんて一人もいないんですから。つまり、何にでも個性になるんです。

でも声優として個性を発揮するためには技術を身に着けなきゃいけない。その技術を活かすためには技能を覚えなきゃいけない。先ほど話した段階の話がそれなんです。仕事がスタートしたら現場で「何か他にないの？」と聞かれますからね。何かって分からないですよね（笑）。

中島：確かに現場でも「今のも良いんだけど、別のもやって」と言われることはあります。じゃあ今のは、と（笑）。ただそこでどう対応できるかが大事で。

鈴木：そう。恐ろしいよ。私がアドリブを3つ書いてる隣で、中村大樹が5つ書いていましたから。でもそうすると「考えているんだ」ということが、向こう（制作サイド）にも伝わるんです。「ないです」と言ってしまうと、それで終わりなんですよ。言われる前に準備しておかないと。アドリブも飛ばせばいいってものでもないですからね。大変ですよ。ただ、それが声優業の面白いところです。

稗田：……お話を伺っていたら養成所時代に戻りたくなりました。

中島：めちゃくちゃ初心を思い出したね。

稗田：本当にそうです。

中島：日々仕事していると忘れてしまっているところもあって。

鈴木：そのためのノートだからね。

中島：それは末代まで残したほうが良いね。というか、さっきも言ったけど声優ミュージアムに寄付したほうが……。

稗田：それは恥ずかしいです！

一同：（笑）

[取材・文／逆井マリ　編集・撮影／鳥谷部宏平]

81ACTOR’S STUDIO　2024年度生徒募集がスタート

＜申込期間とオーディション日＞
受験会場は81ACTOR’S STUDIO：東京校稽古場です。

【第1期募集】
募集期間　2022 年10 月 2 日（月）～2023 年11 月17 日（金）
オーディション日：2023 年11 月26 日（日）

【第2期募集】
募集期間　2023 年12 月 4 日（月）～2024 年1 月5 日（金）
オーディション日：2024 年1 月14 日（日）

【第3期募集】
募集期間：2024 年1 月15 日（月）～2024 年1 月29 日（月）
オーディション日：2024 年2 月4 日（日）

＜入所資格について＞
1. 高校卒業程度の学力を有し、入所時点の4月で26歳までの心身ともに健康な男女。未成年者は保護者の同意が必要です。
（高校卒業資格が必須というわけではありませんが、業界的に相応の学力が求められます）
2. 定められた入所オーディションに合格した方
3. 定められたカリキュラムをすべて受講できる状況・状態にある方
4. 定められた納入金を、定められた期日までに支払い可能な方

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