欠点や弱さも自分の一部だと思えた。“大人”になった富田美憂さんが踏み出す新たな一歩。デジタルシングル『Silent Beat』インタビュー
今の富田美憂だから歌える集大成的な楽曲
――そんな経験を様々な音楽の形でアウトプットしていく5周年イヤーですが、皮切りとなる11月15日にはデジタルシングル『Silent Beat』がリリースされました。
富田:先程の話にも繋がりますが、今回の楽曲は、自分の欠点や弱さに対して「それも自分だ」と認めたうえで、新しい一歩を踏み出していくというコンセプトになります。
歌詞のイメージを作家さんに伝えるとき、5年目という節目でもあるので、デビュー曲の『Present Moment』や『翼と告白』など今まで歌ってきた楽曲を歌詞や曲の端々から感じられるようにしたい、様々な経験を経た今の富田美憂だから歌える曲にしたい、と。それこそ集大成的な楽曲にしたいという気持ちが一番にありました。
私はここまで、自分の弱さや欠点を認めてあげて、その弱い部分も富田美憂の一部だよねということを認められたからこそ成長できました。そんな成長を経て、新たな一歩をこれから踏み出していくという楽曲になっています。
――音源を聴いた際の第一印象としてはどのようなものが?
富田:作家さんは違えど、『Present Moment』のような空気を感じました。客観的に聴いてもデビューしたての頃は「こうだったよな」と思い出してもらえるような雰囲気に仕上がったと思います。今までの自分ならパワー全開で、全体的に強めで歌ったと思いますが、プリプロの際にディレクターさんと「今回はあえて包み込む感じ、優しい感じで歌いましょう」という話になって。
みなさんが新しい挑戦をするときに背中を押したり、包み込んで「大丈夫だよ」と言ってあげるような曲にしたいという気持ちがありました。歌い方は優しいですが、実はかなり熱い楽曲になっています。
――デビュー時のインタビューでも、「活動を通して誰かの背中を押すことができるような、前向きな気持ちになってもらえるようなアーティストになりたい」とおっしゃっていましたし、初志貫徹の決意表明でもありますよね。レコーディングはどのように臨んだのでしょう?
富田:プリプロと本番でレコーディングが2回あったのですが、今までのイベント、ライブなどの経験を思い出して、みなさんの顔を思い浮かべながら歌わせていただいたので、終始温かい気持ちでレコーディングできました。
実は、ここ数年の間に日本コロムビアの担当の方が、『戦闘員、派遣します!』というアニメのエンディングでディレクションをしてくださったスタッフさんに変わったんです。
前作のコンセプトミニアルバム「Fizzy Night」からで、既にある程度の絆は生まれていたのですが、言葉にせずとも「ここからまた新しく頑張っていきましょう」という空気をディレクションの端々から感じたので、改めて絆深まれりなレコーディングだったと思います。
――そういう意味でも節目の転換期になったわけですね。レコーディング当日は、作詞・作曲・編曲のAiraさんも?
富田:立ち会ってくださいました。お若いながらこだわりを持っている方です。私はそういう職人っぽい人が大好きなので、素敵な作家さんに出会わせてくれた楽曲にも感謝しています。
曲には人間性が表れると考えているので、聴いただけで「きっと良い人なんだろうな」と何となく感じていて。レコーディングでも、ご自身の意見も織り交ぜつつ、私が作りたい方向に導いてくださいました。またぜひご一緒したいと思っています。
楽曲だけでなく、ジャケット撮影のメイクさんもスタイリストさんも初めてご一緒する方々だったので、新しさがいっぱい詰まったアルバムになりそうです。5周年イヤーは、新しさとその根底にある”富田美憂らしさ”を感じていただける年になりそうなので、今からワクワクしています。
――では、現在の富田さんが考える”富田美憂らしさ”とは何でしょうか。
富田:アニメやゲームなどの現場、例えば『アイドルマスター シンデレラガールズ』のライブに来てくださる方は、富田美憂のファンももちろんいますが、キャラクターのファンの方が多いイメージがあります。
でも、こうしたアーティスト活動では、より富田美憂の歌や世界観、人間性を含め応援してくださっている方が、ワンマンライブに足を運んだり、CDを手に取ってくださっているのかなと思うと、私ならではの魅力を何かしら感じていただいているのかなと思います。
先日、Kleissis(クレイ・シス)や私のワンマンライブでもずっとお世話になっているダンスのまーしー先生と久しぶりにご飯に行った際に、ちょうど「とみー(富田さん)の魅力ってなんだろうね」という話になったんです。
自分じゃ「わかんないですね!」って返したんですけど(笑)。まーしー先生は「人柄で応援してくれる人が多いと思うよ」と言ってくださったんです。「とみーのファンの人たちは、インタビューやライブのMCから出る人間性を含めて魅力的に感じているから、同業者の中でも応援してくれる人が多いんだと思う」と。
なかなか自分自身の中ではしっくり来ないところもありますが、そう言っていただけるのなら、ひとつの自分らしさなのかもしれないと思いました。