個展「ゾドニスト2」開催記念！漫画家・三家本礼先生インタビュー｜イラスト制作への想いや技術、25周年を迎えた『ゾンビ屋れい子』連載当時の思い出を語る1万字インタビュー！

三家本礼が選ぶ2023年ベスト映画

──ここからは個人的にお伺いしたかったおまけコーナーです。以前、映画秘宝という雑誌で、三家本先生がその年の映画ベスト10を発表するのを楽しく読んでいました。ちょうど年末の取材というタイミングですので、2023年に見た映画で面白かった作品を伺っても宜しいでしょうか？

三家本：今年はあまり映画を見られなかったんですよ。その中で『ゴジラ-1.0』はすごく良かったですね。

　
神木隆之介さん演じる敷島浩一と、青木崇高さん演じる橘宗作が恩讐を超えて協力する展開にしびれましたし、なによりゴジラが怖かったのが良かったです。

僕はゴジラシリーズには本当に怖いゴジラであってくれと思っているので、昭和の頃のちびっこの味方のゴジラみたいなのは嫌いでした。もう一つ言うと、芸能人をゲスト出演させたりして、みんなで楽しくはしゃごうよというのも嫌いでした。

あんなにでかい怪獣が暴れまわるのだから絶望的であってほしいし、そんな絶望的な状況下で人間が戦う姿を見たいと思っていました。

それもあって『ゴジラ-1.0』は『シン・ゴジラ』と並んで、僕の中では大好きな作品ですね。

──『ゴジラ-1.0』以外に、他に印象的な映画はありましたか？

三家本：『PIGGY ピギー』というスペインの映画です。

　
いじめっ子が何者かにさらわれて、それを目撃したのが正にいじめられていた側の女の子。自分をいじめてきたやつらを助けるか見殺しにするか究極の選択を迫られるというお話です。

こう言ってはなんですが数年前であれば主人公にはなれなさそうな風貌の女性だったと思いますが、逆にそういう方が主人公になるだけの説得力がある物語だったと思います。主人公の風貌と脚本が非常にマッチしている映画だったので。すごく面白くて印象に残っています。

三家本礼先生の2023年ベストメタルアルバム

──続いて2023年に好きだったメタルアルバムも教えて頂けますか？

三家本：実際のリリースは2022年ですが、日本のSighというバンドのアルバム「Shiki」ですね。

Sighというバンドは30年前にブラックメタルで世に出てきたんですけど、段々と音楽性がアバンギャルドになっていって、メンバーも年齢を重ねていく中でどうも死を意識するようになったらしく、それまでは恐怖をもたらすような歌詞だったのに、このアルバムでは「俺は死が怖い」「死にたくない」といった、死ぬことが怖いというメッセージのアルバムを作ったのがすごいと思いました。メンバーもこれから先ずっと活動できるわけではないので、残したいものを残していく、そんな意図があったとは思っています。

しかもコロナでスタジオに集まれなかったみたいなんです。どうせリモートでやるならと海外のミュージシャンをたくさん起用した様で、それが功を奏していたのか、30年目にして単純に音楽性とかクオリティが向上しているんです。あれはすごく面白かったです。

──おまけコーナーまで長時間のインタビューをありがとうございました。

　
取材・記事：岩崎航太（アニメイトタイムズ編集部）

三家本礼先生プロフィール

三家本礼
1974年10月31日、広島生まれ。
ホラー映画と、スプラッター表現が許されていた時代の少年マンガで少年期の感性を育む。
20歳、ぶんか社ホラーMにて短編『闇を這う音』が初掲載となる。
21歳、ゲーム会社コンパイルに勤務、その間も幾つかホラー短編を描く。
23歳、読み切り短編『ゾンビ屋れい子』を描く。
以降、同タイトルは連載作品となり、その後も幾つかの連載作品を数誌で発表する。
（全ての原稿は紙とインクで描かれている）
連載作品のうち3タイトルが、映像化の機会にも恵まれる。
2021年、銀座・ヴァニラ画廊にて初原画展開催。