冬アニメ『SHAMAN KING FLOWERS（シャーマンキングフラワーズ）』 上坂すみれさんが語る「日笠陽子さんは役に憑依合体する方。まさに『SHAMAN KING』の人！」

アフレコ収録に臨んだ気持ちの変化

――今作は続投キャストも多いです。上坂さんは新キャストとして、アフレコ収録に参加する時は緊張したとお話されていましたね。

上坂：アフレコ収録は分散収録の時期だったので、だいたい花と葉羽と路菓とアルミ。

時々、玉村たまおさん（CV：水樹奈々）、梅宮竜之介さん（CV：田中正彦）、伊吹ガッコさん（CV：鷄冠井美智子）がいらっしゃいました。

もちろん緊張はしましたが、たまおさんも時が経って大人になっていたり、竜さんも優しい大将になっていたり、みんなちょっとずつキャラクター感が変わっていたので、「あぁ、みんなスタートは一緒なんだ！」と思って、それがわかった時に「緊張しているのは私だけじゃない」という気持ちになることができました。

「みんなでこのドキドキを共有しているんだな。みんなで作り上げていく新しい『SHAMAN KING FLOWRS』なんだ！」ということで、緊張しているというよりも「どんどん頑張ろう！」という気持ちになれましたね。

――日笠さんは花を演じる中で、大切にしていることはありましたか。

日笠：私自身がそんなに男の子役を演じているわけでもなく、七色の声を持っているわけでもなく、そんな技術が高いわけでもないので、とにかく「葉と一緒じゃないか」と思われたくないという感情をたぶん強く持っていたと思います。だから「葉と変えなきゃ」と思って、第1廻は花を自分で作り込んで、気合を入れてアフレコ収録に臨んだんです。

私は音響監督さんに絶対に言われたくない言葉があって、「それっぽくやっているだけ」というワードなんです。それなのに、第1廻のアフレコ収録のテストが終わった瞬間に、音響監督さんから「花を演じる時に、葉と変えようと演じているのがわかる。それは日笠の気持ちで、その気持ちが前に出すぎ。葉と変えようという芝居しかしてない。それは花じゃないから」と言われて、けっこうショックでした。そこから、自分の作った花のキャラクター像がガラガラと全部崩れていきました。

その後も音響監督さんから何度もテストのやり直しを言われて、ずっとキャラ作りをやっていました。その中で、葉と違う部分というのがたくさん浮き彫りになっていきました。

私自身が葉から見て「花はこういう子どもであってほしい」という像を作り上げていたんです。「ワチャワチャやっていて、かわいいね。生意気を言っている中学生」というキャラクターの作り方だったんです。でも、花自身はかわいいなんて少しも思っていないし、「私が作っていたのは葉から見た花だったんだ」と思って、葉のことを一度忘れようと思いました。

　
音響監督さんに言われたことがすごく悔しかったんです。「何クソ！　ギャフンと言わせてやるぜ！　来週（の収録を）見てろよ！」という気持ちが自分に起こったんです（笑）。

その気持ちは花の感情とリンクした部分があって、すごく良い方向に作用したと自分では思いました。ただ、逆にすごい勢いで花にパッと入ったがゆえに、今度はまたぶち当たる壁があったんです。

日笠さんが突き当たった第2の壁

日笠：それはキャスト解禁発表のコメントを出した時のことで、葉も出てきちゃうんですよ。葉と花が会話しなくてはいけないシーンがあって、こっちはもうずっと花でいるし、やっと掴んだ花、自分の中にいる花を手放すのが怖くなって、今度は葉になれなくて……。むしろ、葉が出てきた瞬間に「ゲッ！」って思ったんです。

その時はもう花の心だったから、「お～、親父が出てきた。最悪！」という気持ちで、それも自分でショックだったんです。あんなに第1期のころ1年間一生懸命向かい合ってきた大切にしていた葉に対して、「ゲッ！　親父出てきた」と思う自分もショックだし、心が2つあるような状態になっちゃって、当時はむちゃくちゃでしたね。

　
「どう葉になっていいのか？　葉になったら、花がどこかに行ってしまうんじゃないか？」という恐怖と戦って、その考えが捨てきれなくて、だから葉から逃げてしまって、そういう気持ちがあって、葉が登場する最初の収録では葉が録れなかったんです。

それで、音響監督さんが「来週、麻倉アンナ（CV：林原めぐみ）を収録するから、その時に一緒に葉を録ろう」と言ってくださったんです。そうしてすごくギリギリになって、葉になった感覚があって、そこでアンナ役の林原さんから「1000回練習してきなさい。悩んでいることに酔うんじゃない！」と愛のあるお叱りを受けました。そのお叱りがもうアンナのままで、「母ちゃん～！」ってなりました。

本来は一緒に収録できない予定だったのに、そこで林原さんとお会いできて、アンナと一緒に収録できたことは、花にとっても、葉にとっても、私にとっても、この『SHAMAN KING FLOWRS』という作品を演じるにあたって、すごい転機だった瞬間だったと思います。

――アンナがいると、葉になれますか。

日笠：どうなんですかね。自分は一生懸命やっているので、それを聞いた林原さんも監督さんも音響監督さんも私の葉をどう捉えられているのかはわからないですけど、たぶん『SHAMAN KING』メンバーがいると、スッと葉になれるというのはあると思います。

　
なぜなら、『SHAMAN KING FLOWRS』が終わった後に、リアル脱出ゲーム（※2）の収録があって、『SHAMAN KING』のメンバーみんなでやったんです。その時に、何の抵抗もなく葉になれたので、「（周囲の）影響を受けやすいタイプだな」と思いました。

今も私はアニメ『SHAMAN KING FLOWRS』を見るのがとても怖いです。葉と花が会話するシーンに関して、ハオ役の高山みなみさんは「最初から別でやりなさい」と言ってくださっていたんですけど、音響監督さんは私の思いを汲んでくださって、テストだけは花と葉を同時に役柄を切り替えて練習した成果を見せて、本番ではそれぞれの役を別々に、花を収録する時はテストで録った葉のセリフを聞きながらやりました。

※2：リアル脱出ゲーム×SHAMAN KING『閉ざされたハオ迷宮からの脱出』。2023年7月から発売されたリアル脱出ゲームとアニメ『SHAMAN KING』がコラボしたオンラインリアル脱出ゲーム。ゲーム中のムービーは、キャストによる録り下ろしのフルボイス。