『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』オルフェ・ラム・タオ役:下野 紘さんインタビュー | オルフェはラクスとの距離の詰め方がおかしい!? もっともプレッシャーを感じたシーンのエピソードも
2024年1月26日より全国ロードショーとなった劇場アニメ『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』。2004年に放送され大ヒットした『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』のその後を描いた「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」の最新作となります。
キラ・ヤマト、ラクス・クライン、アスラン・ザラ、シン・アスカといった従来のシリーズで活躍した人気キャラクターに加えて、本作から登場する新キャラクターも多数登場しています。今回はその一人であるオルフェ・ラム・タオを演じた下野 紘さんにインタビューを実施。声優としてデビューしたばかりだった『SEED』放送当時の思い出から、劇場版の見どころまで様々なお話を聞くことができました。
なお、本記事は映画の内容に触れるネタバレ有りのインタビューとなっておりますので、未視聴の方はご注意ください。
『ガンダムSEED』は声優として憧れの作品だった
――ガンダムシリーズ、並びに「ガンダムSEEDシリーズ」に出演が決まった時の心境をお聞かせください。
下野紘さん(以下、下野):昭和生まれなのものですから、本当に「ガンダム」という響きを聞くと心躍りますし、オファーをいただけた時には驚きと嬉しさが両方ありました。
『機動戦士ガンダムUC』の時は、主人公の友達という話の本筋にしっかり関わる位置づけのキャラクターではなかったのもあり、今回の台本をいただいた時は、かなりしっかりとキラ達と絡む役だということを知って、喜びと一緒に緊張が増していきましたね。
――『機動戦士ガンダムSEED』という作品への印象は。
下野:最初の『SEED』が始まったのは、僕自身まだ声優を始めたばかりの頃だったのですが、その頃は自分にとって、アニメが仕事の一貫になってきて、純粋に楽しめなくなっていて、『SEED』に限らずいろいろなアニメを見なくなったタイミングだったんです。
ただ、『機動戦士ガンダムSEED』という作品がどれだけ人気なのかということは、いろいろな雑誌媒体さんを通じて知ってはいましたから、「無理だろうけど、何かで関われたらいいな」という想いはもっていました。多分これは僕だけではなく、いろいろな声優さんが当時思われていたのではないかなと。
――ある種、憧れの作品というか。
下野:そうですね。自分の中では、有名な声優さんは皆出演されているくらいの感覚もあって。自分はまだまだだけど、もし機会があれば出演したいと夢見ていました。
――劇場版に出演されるにあたって、『SEED』をご覧になられたのでしょうか?
下野:特別総集編という形でしたが、見させていただきました。かっこいいキャラクター、かわいいキャラクターが何人も出てくるので、自分の中ではもっとキラキラした内容を想像していたんです。
けど、実際に見てみるとドシリアスのヒューマンドラマで、世界観的にも現実社会に投げかけられるようなテーマ性があったり、愛憎渦巻くではないですが、キラキラというよりドロドロした部分が多くあって。ガンダムらしさもかなり感じて、僕が見る前に抱いていたイメージとは180度違っていました。
――先程のお話にもありましたが、最初の『SEED』が放送された約20年前は、下野さんのデビュー時期にも近かったと思います。20年という時間を振り返られてみていかがですか?
下野:こうして20年と言われると、結構経っているなと思いつつも、「もうそんなに経った?」という感覚もあります。自分の中では、停滞していたと感じる時期もありましたが、ずっと憧れていた仕事をやり続けることができていて、今も突き進んでいる最中だなと思っています。
20年経ったと感じることとしては、昔から現在も活躍されている大ベテランの方とご一緒させていただく機会も増えてきたのですが、そういった方々の存在が、デビューしたての頃以上に大きく感じられるようになってきていて、まだまだその域には辿りつける気がしないなと。
自分もそれなりに声優としていろいろな経験をして、実力も身に着けてきたつもりですが、そうするほど先輩たちのすごさを実感することが増えてきたんです。なので、もっといろいろな経験や勉強をして自分を磨いていかないと、この仕事を続けられないのではないかと考えてしまったり……いやぁ、苦しいですね!(笑)。
――『SEED』は20年前の作品ですが、時代的なギャップみたいなものは感じましたか?
下野:そこについては感じませんでした。僕の中での『SEED』はデビューした頃のイメージで止まってしまっていたので、本当に今の作品として楽しませてもらったような感覚です。今言われて、「そうか、20年前の作品なのか……」と少し驚いているくらいですね。
台本を読んで、あまりのポジションの重要さに青ざめた
――オルフェは本作の中でもかなり重要なキャラクターだと思いますが、演じる上で大切にされたことや、何か特別な準備をされたことがありましたら教えてください。
下野:一応、1ページ分くらいの資料はあって、どういうキャラクターなのかは自分の中でなんとなくはイメージしていたのですが、とはいえここまで重要なキャラクターになるとは思っていなくて。はじめて台本を開いた時は、「思っていた以上に大変かもしれない」と(笑)。
一同:(爆笑)。
下野:『ガンダムSEED』という作品が、僕の中でも大きな作品なんだと改めて実感できたのが、台本をもらった後にアフレコに行った時でしたね。まるで新人声優かなと思うくらい、本当に緊張しながら演じさせていただきました。
――アフレコの中で、印象に残っているシーンはありますか?
下野:楽しかったのがキラと対峙している時で、チクチク嫌味を言うのが本当に楽しくて。しかもそのシーンは、キラ役の保志(総一朗)さんと一緒に録らせていただけたので、キラのリアクションが返ってくるんですよ。それを受けたら余計楽しくなってしまって、一気に畳みかけてやるぜと(笑)。
一緒にアフレコできるのは素敵なことだなと改めて思えましたし、 オルフェの憎しみや悪意であったりを、感情を込めて演じられたかなという手応えはあります。
――難しいシーンも多かったと思うのですが、中でもとくに苦労したものはありましたか?
下野:演説ですね。あそこは本当に難しかったです。
一つの台詞が長いこともあるのですが、僕の中の演説のイメージって、ずっと声を張り上げて語りかけているものだったんです。しかし現場で、「場面によって語りかける対象が変わってくるから、それに対してどういう気持ちで言うのかということを考えてください」というディレクションをいただいて。
それで実際に演じてみるのですが、自分で思い描いていたようにはうまくできなくて、何回もトライさせてもらいました。
――「ガンダム」といえば、演説シーンって花形のような感じですもんね。
下野:銀河(万丈)さんや 榊原(良子)さんなど、ガンダムシリーズではいろいろな方が演説してきていて、演説がうまい人は本当に芝居もうまいんだと、プレッシャーをかけられました。
――ベテラン声優の方々の、力のようなものを感じていた。
下野:いや、ただただプレッシャーです(笑)。もちろん、僕が勝手に感じていただけですが。なので「皆さんすごくいい演説をされているんですよ、だから下野君も頑張って」と言われたら「はい」としか言えなくて(笑)。本当に、あれほどプレッシャーを感じたことはなかったですね。
――演説のお話が出ましたが、他にオルフェの役作りの上でのディレクションはあったのでしょうか?
下野:公の場と個人個人に対して、それぞれ違った表情をもったキャラクターであることは伝えられました。
特にラクスに対しては、乙女ゲームのキャラクターのように好意をもっていることをアピールする一方で、キラに対しては最初から敵意を剥き出しにするとか。少し言い方は違っていたかもしれませんが、表情変化を豊かに、落差をつけてもらいたいと。
公の場では、国を代表していろいろな人たちと話し合ったり、指揮を執らなければいけない立場でもあるので、叫ぶだけではなく、堂々とした面も表現してもらいたいというお話はありましたね。
――現場で共演されたキャストの皆さんとは、何かお話はされましたか?
下野:僕自身としては、オルフェというキャラクターをどう演じようか頭がいっぱいで、ものすごく緊張していて。一方で、他のキャストの皆さんはそれぞれのキャラクターを20年前から演じられているので、落ち着きが段違いなんです。僕はこんなに緊張しているのに、と(笑)。
ただ、キャストの皆さんはほのぼのとした雰囲気で、一旦休憩に入ると「あれ?ここ『ガンダムSEED』かな?」と思うくらいのんびりとした日常会話をされていましたね。演じるのに集中していたのもあって、会話の内容はあまり詳しくは覚えていないのですが。
――後半からは少しリラックスできたりもしたのでしょうか。
下野:リラックスとは少し違うかもしれませんが、もちろんずっと緊張しているわけではなかったです。先程も話しましたが、保志さんと一緒に録ったキラに嫌味を言うシーンは本当に楽しくて、緊張よりも「どうしてやろうか」という気持ちの方が大きかったですね。
本当に取り留めもない会話が多かったのですが、確か保志さんに「俺も大変だけど、下野くんも大変だね」と声をかけていただいた記憶はあります(笑)