『ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突』ヒルマゲント役・蕨野友也さん×ナグラテルアキ役・伊藤祐輝さん×監督・田口清隆氏インタビュー|ゲントとブレーザー、テルアキとゲント。信頼関係が導いた”託す”という選択
「国会議事堂」はこれまでのネタの”最大値”
ーー劇場映画はTVシリーズの続編でありながら、一本の独立したストーリーになっていると感じました。
田口:初めて観るウルトラマンシリーズが今作だったとしても、成立する映画にしたいと思ったんです。特に子供にとっては、今作が“最初の映画”になる可能性が高いですよね。だからこそ色々な要素を整理して、「まずは1本の映画として面白くしましょう」と。
ーー先ほど「終わった気がしない」とお話されていましたが、個人的には映画を観たときにもその感覚があったんです。
田口:そうですね。実を言うと、TVシリーズでもキャラクターの立ち位置をわざと変えなかったんです。ゲント隊長の正体もバレないし、誰かがいなくなったりもしない。
ウルトラマンブレーザーやアースガロンを含めたSKaRDの関係性は、徐々に発展していきますが、「彼らは変わらず、怪獣災害に対処し続けている」という構成です。そのあいだにも色々なドラマがあっただろうし、その一部が観られる映画にすることで、「これからも続いていくドラマの途中」という作りにしています。「これで終わりだ」と思うと僕も寂しくなるので、TVシリーズの最終回と同じく、映画もそういう構成にしているんです。
ーーなるほど。とても合点がいきました。劇場映画の撮影は、TVシリーズと一部同時進行だったと伺っていますが、いかがでしたか?
蕨野:「今どっちの世界線にいるのかな?」という感覚はありましたが、周りのキャストやスタッフさんが引き戻してくれるので、僕はただ付いていくだけでした。最終回と映画を同時進行で撮影する中、疲弊した状態が続いていたので、その世界でみなさんに引っ張ってもらったと思っています。
伊藤:ヤスノブが「針の穴を通すよう」と言うほど、今回の映画の作戦は非常に繊細なんです。一つ間違えたら大切な命が失われるという状況下で、緊張感がありました。
ーー霞が関での戦闘シーンは、今作の大きな見どころだと思います。国会議事堂の登場はどのような経緯で決まったのでしょうか?
田口:第1話を撮影しているときから、プロデューサーと「1話でここまでやっちゃうと……劇場映画はどうしますか?」という話をしていました。ウルトラマンシリーズには「実際の場所を壊さない」という風潮がなんとなくあるのですが、サンシャインシティは、ウルトラマンシリーズと長く共闘関係にある場所なので特別に許可されたんです。とは言っても、「国会議事堂くらい壊さないと、映画としては格好がつかないかも」と(笑)。
ーーサンシャインシティを超えるにはそれしかないと(笑)。
田口:霞が関、特に国会議事堂の登場はずっと狙っていたんですよ。議事堂前の公園で撮影できることは、前のウルトラマンのロケハンで知っていました。『20世紀少年』という映画で、国会議事堂が爆発するシーンの合成担当としてロケに参加したこともあり。だから、国会議事堂を破壊して、霞が関をラス立ち(最後の大立ち回り)の場所にすると初めから考えていたんです。今回の映画には、これまでの色々なネタの最大値をぶつけています。
SKaRDの戦いは終わらない!?
ーー今回の劇場映画で『ウルトラマンブレーザー』という作品は一区切りを迎えます。最後に、ここまで応援してきたファンの方々へ向けて、メッセージをいただけますか。
田口:僕自身は怪獣映画がとにかく好きで、この仕事を始めて今に至るのですが、最近怪獣映画がある種のブームになっていて。このタイミングでウルトラマンシリーズの映画を作ることには大きな意味があると思っています。昔ながらのミニチュアやスーツで表現するド直球の「特撮怪獣映画」をやれるのが、今やウルトラマンシリーズくらいになっているからです。そういう意味でも、今作は王道怪獣映画だと思っています。
そんな世界観に、TVシリーズで丁寧に作り上げた登場人物とウルトラマンを投げ込んで、「さあどうする?」と。そういう心持ちでこの作品を作りました。最近の怪獣映画からあまり摂取できなくなっていた栄養素が今作にはあるので、その辺りを味わっていただきながら、奮闘するSKaRDとウルトラマンブレーザーの姿をぜひ愛でにきてください。
伊藤:これまで「ウルトラマンブレーザー」を観て頂き、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。「ようやく全てをお届けできた」という気持ちと「終わってしまう」という寂しさを同時に感じています。
劇場映画には、ゲント隊長がある人物に向かって「ひとりの人間として、父親として」と語りかける場面があるのですが、そのときに彼の中心にあるのは「やはり人なんだ」と改めて感じました。ウルトラマンブレーザーとアースガロンのコンビネーションに注目しつつ、大きな困難を乗り越えたSKaRDが、新たな作戦にどう立ち向かうのかにも注目していただければと思います。
蕨野:『ウルトラマンブレーザー』という作品が発表されたとき、恐らく驚いた方が大多数だったと思います。実際、「何だ、このウルトラマンは!?」というコメントはあったし、周りからもそういうリアクションをよくいただいたんです。ただ、映画が公開されるときには、全員で作り上げてきたこの作品の世界観に、良い意味で慣れてきたのではないでしょうか。僕らにとっては本当にありがたいですし、ファンの方たちに受け入れていただいて、とても嬉しいです。
あれだけ面白そうな映画の予告を流されて、観に行かないわけがない……! 僕たちは、作品やSKaRDに対する期待を裏切らないつもりでやってきました。ぜひとも、迫力のある映像を劇場でご覧いただければと思っています。
ーー劇場映画とともに、SKaRDとウルトラマンブレーザーの物語がこれからも続いていくことを願っています!
蕨野:『ウルトラマンブレーザー』を愛してくださったみなさんにその想いがあれば、僕たちから何かをお返しできるかもしれません。やはりみなさんの声が第一です。昨年、中国の上海に行ってきたのですが、幅広い年齢層から熱い声援をいただきました。日本国内だけでなく、世界中のファンの方々があれだけ熱狂して、手を振って、名前を呼んでくれて。そういう人たちがいる限り、僕たちはいつでも戻ってくることができると思っています。
[取材&文・小川いなり / 写真・MoA]
『ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突』作品情報
あらすじ
この地帯に工場を持ち、怪獣の残骸の処理や研究を行う先進化学企業・ネクロマス社に何らかの関係があると考えたSKaRDは、最高経営責任者で世界有数の化学研究者でもあるマブセ博士のもとへ急行。
ネクロマス社の研究所では生命の根源にも関わる「不老不死」を実現できる物質「ダムドキシン」を開発しており、完成間近だという。
そんな中、突然「宇宙の覇者」と名乗る謎の「ダムノー星人」が出現!
破壊されたタンクから溢れ出した「ダムドキシン」が研究所のサンプルを飲み込み、恐ろしく巨大な「妖骸魔獣ゴンギルガン」が生み出されてしまう。
いま、日本の首都を舞台に、ウルトラマンブレーザー&SKaRDと大怪獣との壮絶な大激突の幕が切って落とされる!
キャスト
(C)円谷プロ (C)ウルトラマンブレーザー特別編製作委員会