音楽
青山吉能、声優デビュー10周年を新曲『Flowery』と共に振り返る/インタビュー

青山吉能さんの新曲『Flowery』リリースの取材に行ったら、声優デビュー10周年を振り返る時間になった/インタビュー

 

声優デビュー10周年。誰かにもらった言葉で印象に残っているもの

――雰囲気があって良いと思います。今年はデビュー10周年、アーティストデビュー2周年になりますね。

青山:2014年の1月10日に自分の名前が初めてテレビのエンドロールに乗った日のことはよく覚えていて、小さいホテルについてるテレビで当時のメンバーみんなで集まって見ていました。「やっと夢が叶った」じゃないですけど、「これを見るために今まで頑張ってきたんだな」って。まっすぐ右肩上がりの調子でそうなれたわけではなかったので、色々なオーディションを受けては落ちて、「やっぱ才能ないな」みたいなことを思いながら、やっと掴んだ夢。今思えば「やっと」というか、結構順風満帆なつかみだったとは思うんですけど、当時は「やっと」と感じていました。

その初心は意外と忘れていなくて、これまでのどんな役でもエンドロールに自分の名前があると嬉しいんです。当たり前に感じることはこの先もないと思いますし、そのおかげでずっと続けてこられているというか。特にここ2年で知ってくださったみなさんは、「苦節十年」だと思われてる節もあるんですけど、私自身は「停滞している」という時期を感じたことがなくて。マジで一生楽しいというか、一生何かにのめり込んでるというか……。

台本を読むときもセリフがある役だから忙しい、一言しかないから楽と思うことはなく、「この人はどうやって生きてるんだろう?」と主役と同じくらい考えて臨んでいるので、「やっとここまで来た」という印象も正直ないです。

ずっと同じテンションでお仕事をさせていただいているので、それが自分の中で正しいのかどうかは、10年後の自分がきっと決めるんだと思います。もちろん物量は増えたので、今までの7、8年間と同じような生活リズムではないんですけど、取り組むものや10年前にもらった気持ちは、ずっと忘れずにやれているので、これからも初心を忘れず、キャラクターひとりひとりに愛情を持ってやっていけたらいいなと思っています。

 

 

――10年間で、印象に残っている出来事はありますか?

青山:初めての〇〇はめちゃくちゃ印象に残っています。初めてのアフレコやアニメでデビューした後に受けた初めてのオーディションはよく覚えていて。初めてのテープオーディションでいくつか原作からセリフが抜き取られたものを収録して送るみたいな。その収録もすごく覚えてます。

あとは、初めてのスタジオオーディション。テープが受かったら、スタジオオーディションという実際のアフレコスタジオに行って、色々な大人に見られながら演ったことも記憶に残っていて、一緒にスタジオで並んでいた声優さんも覚えています。

今思えば、めっちゃ大活躍されているみなさんで、貴重なグループに入れてもらったなと思いますし、その作品はご縁がなかったんですけど、結果的にそのスタッフさんとは時を経て、ご一緒する機会があって。「実は人生初のオーディションでした」と言ったら、「覚えてるよ。色々あったんだよね」みたいな。

続けることによって、初めての〇〇がどんどん活かされていくなと感じています。この2年で仕事も増えたおかげで、「あのときこうだったよ」という思い出話をする機会も増えましたし、そのときからお世話になってる方には、私の仕事が増えることで恩返しにもなるので。仕事をいっぱいすることによって、育てていただいたみなさんに、自分のお仕事で返していけたらいいなと日々思っています。

――誰かにもらった言葉で印象に残っているものは?

青山:「自分でも何でだろう」と思うのですが、初めてアニメに出たとき、共演した日髙のり子さんと浅沼晋太郎さんにマイクの入り方やアフレコのイロハをお2人には教えていただいたので、感謝しています。なかなか現場でご一緒する機会がこの10年間で沢山あったかと言われるとほぼ一度もないと言っても過言じゃないので、お会いはできてないんですけど……。

そのときに浅沼さんが「ナスは喉に悪い」とおっしゃっていたことをすごく覚えていて、「収録前に茄子は食べない方が良い」と。多分油をよく吸うから、「喉を潤わしても吸っちゃうから駄目だよ」と教えていただいたことは、なぜか覚えています。今でも収録前に茄子を食べないようにしていますね。

――初めて聞きました。

青山:アフレコの1話の台本のメモ欄に「茄子は駄目」って書いたことをよく覚えてます。「もっと格好良い言葉を覚えてろよ」と思うんですけど、今ぱっと出てきたのは、浅沼さんの「茄子は喉に悪い」ですね。

――(笑)アーティスト活動を始めてから印象に残っていることは?

青山:私は鎖国的な生き方をしているので……。

ただ、ヒグチアイさんと『透明人間』という楽曲をともに作ったことは印象に残っています。私の理想とする作り方ができたというか。ヒグチさんと何度もお話する機会をいただいて、ふたりでカフェに行って、お話を聞いてもらったりしながら、私からこぼれたものをきっかけに曲を作ってもらったんです。自分のやりたい楽曲の作り方だったので、また機会があったらヒグチさんに曲を書いていただきたいなと思いました。なかなかに鎖国しすぎていて、フェスや外部のライブにも出たことがないですし、「出たいか」と聞かれても、前向きに「はい!」とは言えないですし、難しいですね。私は何で鎖国なんでしょうか……。

――親しい人には、オープンというイメージもありますが。

青山:そうですね。踏み込みすぎることに対して、あまり前向きじゃないのかもしれないです。難しい……。

 

 

――昔と比べると、青山さん自身もすごく変わったなという印象があります。

青山:昔は自分が7分の1であるという自覚を持っていて。私は突発担当というか。突飛なことを言う担当だったから、突発的だったり、変なことを言ったりするのが私のアイデンティティでした。ただ、それはあくまでも7人の中でバランスを取った結果でしかなくて、突発的なことを言うのが私なのではなく、バランスを取った結果、突発的なことを言っている人になっているだけだったんです。

決して私は常日頃から突発的な人間だったかと言われると「そうじゃないかも」みたいな。それが自分に染み込んでいるから、だんだん「それが自分だ」と思っていたけど、「本当の自分って何だろう」ということにコラムなどを通じて向き合うようになって。意外と慎重だったり、人間関係に対して前向きに門扉を広げたりするわけではなかったと気づかされていきました。

――個人的に、突拍子もないことを言う人のイメージはないですね。7人の中でもライブで良いこと言うのが青山さんだったという印象です。

青山:いや嬉しいです。当時のライブを見ていても、今の私にあのときの感性はないなと思います。「とても良いことを言う」と我ながら思うけど、今はもう出せない。だから、やっぱり私は変わったんだと思います。今の方が悪い意味で上手に喋れるので、あの爆発感、その場で得たものを何も経由せずに喋っている感覚はないかもしれない。それをなぞることはできるけど、それはあくまでもなぞったものなので、偽物に近いというか。だからこそ、あのときああいう活動をして、そういう自分が残っているのは良いことだなと。

――当時は後半に向けて終わりが明確だったので、感情がすごく乗っていたと思います。今の活動は好きなことをやって、長く活動していくという意味で違いがありますよね。

青山:ある意味での満足感があって、焦燥感みたいなものはないですね。泣くこともなくなったかも。駄目ですね。敗北にも目を向けていかないとなと。でも、声優の活動で毎日毎日打ちのめされているから、音楽活動だけは楽しくやらせてほしいな(笑)。

――感情が動いているところを見たい人も一定数いるとは思いますが、それを本人がやりたいのかと言われたら……。

青山:泣き芸、やりたいかと。

――芸ではないですけど(笑)。

青山:心のかさぶた剥がす芸をやりたいかと言われると、やりたくはない。ファンのみなさんに「それが見れるから行こう」となって欲しくないです。やりたいことをやった先にそれがあるならいいですけど、それをやるためなら「ちょっと本末転倒かな」と思います。

――言える範囲でOKなんですけど、辛かったことはありましたか?

青山:めちゃめちゃあったと思うんですけど、今は何にも覚えていないですね。ありがたいことに、いっぱいお仕事をさせていただいてるからなのかなと思います。やはり“辛かった”が一番詰まっていたのは、最初期です。デビューしたての頃は、「自分には才能があって、選ばれし者なんだ」と思っていたので、自分がそうじゃないこと、プロの世界にいる自分の凡すぎる才能に毎日気付かされていました。「こんなのできて当たり前だったんだ」みたいな。自分が天才だと思い込んでいたからこそ。その落差って想像もできてなくて、今はその落差以上のものがないというか。今は想定の範囲内で、上がったり下がったりしているので。

昔の自分は自己評価が高くて、「幸せな脳みそで何より」という感じだったんですけど、最初は自分にがっかりしていました。「自分はこれが得意なのかも」を見つけては打ちのめされ、自分が一番秀でてないといけないのに、集団の中でNo.1にはなれず……。当時はすごく辛かったんじゃないかなと思います。ただ、絶対に比べられるし、比べざるを得ない環境にいたことは、今になって「本当に良い経験だったな」って。

――逆に上手く行っていない人は、辛い経験に対して“やらかした”と言うんですよね。

青山:そうですね。「あれのせいで」って。でも、ずっと一番辛かったことは塗り替えられていないです。あれ以上の落差は今後生まれないからこそ、良い経験だったと思えます。伸びきってた花が長すぎた分、折れた衝撃はすごかったから。多少伸びても、ちょくちょく自分で折るようにするとそんなに痛くないというか。

 

 

――10年前に、今の自分はどのくらい想像できていましたか?

青山:10年前思い描いていた自分……。10年前はそもそも、10年後のことを考えていなかったです。何となく80年後は考えていたんですけど……。「死ぬまで声優」みたいな。

具体的な「5年後はどういうキャリアで何をやっているか」は全く考えていなかったし、アーティスト活動をやるなんて毛ほども思っていなかったです。今は自分の想像していた未来よりも遥かに豊かなものになっているなとはすごく感じています。それこそ声優になってから、「誰しもがどのクールにもいて、何十キャラもやっているような声優にはなれないけど、それになれなかったから、不幸せではないんだ」とようやく気づけたんです。声優の仕事は多岐にわたるし、「アニメでにバンバン出るのだけが声優」と思って目指してきたけど、もっと色々な仕事があるし、ラジオなどのアニメ以外の仕事もめちゃくちゃ楽しいし、「こんなに楽しいことがいっぱいあって、それで食べていけるんだ」というのがすごく幸せだなと思いました。

それにデビューしてすぐ気づけたからこそ、停滞している感覚がなかったのかもしれないです。今の現状って特異点のような感じだと思っているので、ありがたい。ありがたすぎる。ここまで来たら、もっと自分の声がいろんな作品に乗って、その結果、「みなさんの元気だったり、活動の源になれたら嬉しいかも」と思い始めているところです。

――最後に。10年後はどんな自分になっていたいですか?

青山:そのくらいの年齢の方を今思い浮かべると、自分の武器を持っている方がすごく多いなという印象で、「もうこの役ってこの人しかいないじゃん」みたいな。今って色々なオーディションを受けて、「意外とこれもいけるんだね」というものを見つけていただいてると思うんです。『ぼっち・ざ・ろっく!』のぼっちちゃんは、正にそれで。

今はそれに気づいていただけている期間なので、10年後には青山吉能にこれを振りたいというものが少しでも確立できていると嬉しいですし、自分はどんな役でもやりたいと思っていますが、その軸と同じくらい「自分だったら何ができるんだろう」と。今はもうAIに取って代わられる時代で、学習させたら、自分のように喋らせられるという中で、「AIに勝る自分らしいお芝居って何だろう」というものを磨いていく必要があるとここ数年はずっと思っています。それが37〜38になったときに、「これはもう人間ならではだ」となっていけるように、精進していこうと思います。

――アーティストとしてはいかがですか?

青山:アーティストは、続けてるのかな? 誰かに「続けて欲しいです」と言われて、やっているものではないので、自分にもう歌いたい世界がないと思ったら、辞めてるかもしれないし、辞めてまた復活しているかもしれないし、未知数ですね。でも、アーティスト活動においては、そのくらいにしておきたいかも。自分のタイミングでやりたいことをやっていくので、10年後も歌いたいものがあれば歌っていたら良いなと思います。

――ありがとうございました!

 
[インタビュー&文・川野優希]

 

5th Digital Single「Flowery」

 
ソロアーティストデビュー後初となる、 トーク&ライブツアー 2023 「こぼればな (し)」 を経て
感じたこと、 ファンからもらった愛をテーマに新曲リリース!

配信開始日:2024年2月28日(水)
https://aoyama-yoshino.lnk.to/Flowery

 
オフィシャルWeb site:https://www.teichiku.co.jp/artist/aoyama-yoshino/
アーティストSTAFF X:@yopipi_artist
青山吉能 本人X:@Yopipi555
公式Instagram:@yopipinsta555
オフィシャルYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@YoshinoAoyama_official/
青山吉能 個人YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@user-uc6do2dm8k/featured
FCサイト「よぴぴん家 DX」:https://yopipinchidx.fanpla.jp/

 

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