この記事をかいた人
- 笹本千尋
- 1998年生まれのフリーライター。アニメ文化とアンティーク雑貨と絵を見ることが好きです。
――『鬼上司・獄寺さんは暴かれたい。4』発売記念サイン会の感想をお聞かせください。
あらた六花先生(以下、あらた):サイン会が去年の夏ぶりだったので結構久しぶりというか。昨日の夜、寝る際に「あれ、緊張してるかも?」と思ったのですが、サイン会が始まると皆さんのお顔も見れてすごく楽しかったです。
――ファンの方との交流も約1年ぶりでしたか?
あらた:本作のコラボカフェ(「鬼暴Cafe」)で、ファンの方とお会いしてお話しする機会はあったのですが……やはりこういうちゃんとした場でファンの方とお話し出来るというのは嬉しいですね。
――(3巻までで)シリーズ累計100万部を突破された際の心境を教えてください。
あらた:やっとだなといった感じで(笑)。第3巻が出た時にじわじわ100万部が見えてくるような数字になっていたので、「これは100万部いけるのかな?」と思っていたら第4巻発売前に突破できて、1つの区切りだなぁと。自分の中で目標としていた部分でもありましたし、やっぱり4巻発売前に100万部を突破することが出来たのは応援してくださる皆さんのおかげだなと思って本当に嬉しかったです。
――それでは本作について。キャラクターデザインを考える時、どのようなことを意識しましたか?
あらた:この連載を始めて丸4年が経って。キャラクターデザインをしたのが、もう4年半ぐらいとだいぶ前なのですが、当時は鬼上司受けの作品があまりなかったので“ワンコ部下攻め×仕事ができる鬼上司受け”というのがひと目見て分かるようなキャラクターデザインと、あとはただ単に私が茶髪でふわふわしたワンコっぽい攻め男子が好きで、受けも黒髪のクール系美人が好きなので庄司と獄寺さんは私の好みを詰め込みました。
――庄司と獄寺さんの内面やカップリング的な部分もお聞かせください。
あらた:獄寺さんは最初に登場した時から、怖い鬼上司で、笑顔も不気味で……。しかし蓋を開けてみると乙女で可愛らしい人です。実は鬼上司な面も、気持ちを悟られないように鬼な態度をとっていたという理由があるので、最初に比べると鬼加減が薄れていますが、元ヤンキーであったり結構世話焼きだったりとお兄ちゃん気質ではあります。鬼上司さは減りつつも年上らしい感じを崩さず、性格も義理堅い、元ヤンって感じです(笑)。
庄司は本当に素直で思った通りに行動する、ちょっと思慮が浅いというか(笑)。若さゆえにマイナスな面もあるかもしれませんが、良い所を上げると包容力があって彼氏力が高く一般的にいうモテ男。料理ができて、優しくて。性格的には本当に優しい攻めなんですかね。
――2人を見ているとお互いを補っているような、とてもマッチしているなぁと感じました。
あらた:そう、相性が良さそうな2人です。
――第4巻では獄寺さんが庄司を攻める場面もありましたね。
あらた:最近、獄寺さんが受け身だけじゃないというか、ちょっと楽しんでいる感じがしますね。お付き合いして、しばらく経って、獄寺さんも余裕が出てきたのか「ちょっとずつ2人の関係性にも変化があるな」と思いながら描いてました。
――作中で先生が共感するキャラクターは誰でしょうか?
あらた:共感するキャラクターとなると難しいですね。本作に関しては登場人物がみんな良い奴っていう感じで(笑)。あまり倫理的にぶっ飛んでいないというか、作家としてはどうなんだろう?と思うのですが「みんな良い子でいて欲しいな」とこの作品に関しては本当に思っています。
――感情移入というよりは俯瞰していると。
あらた:俯瞰していたり自分の中にボーダーラインのようなものがあって、ここから先は超えさせたくないな、みたいな。なので自分の性格ではないけれど、自分の中のこだわりをキャラクターの中に落とし込みつつ、暴走させすぎないようにしています。自己投影まではいきませんが、少し自分の考えをキャラクターに押し付けている(笑)。そういう部分はあるかもしれないですね。
――獄寺さんの愛犬である白のポメラニアン・みーちゃん(みたらし)のモデルが、先生が飼われていたポメラニアンだということも印象的でした。みーちゃんが庄司に対して威嚇したりする場面もありましたが、先生ご自身はいかがでしょうか?
あらた:私は庄司に対して甘々です。みーちゃんはみーちゃんですね(笑)。
――ちなみに……インタビュー前に亜武ちゃん(獄寺さんの弟・獄寺武蔵)がファンの中で人気だとおっしゃっていましたね。
あらた:亜武ちゃんの本当の姿・武蔵が見れる番外編(亜武編)があって。それが結構、皆さんに楽しんでいただけたようで、すごく武蔵が人気キャラになりました。
――本日のサイン会でも武蔵について言われましたか?
あらた:サイン会で毎回、(ファンの方々の)好きなキャラを1人描いているのですが、今日は本当にダントツで「武蔵描いてください」が多かったです!(笑)。
――(亜武ちゃんがランジェリーデザイナーという繋がりで)本作の肝でもありますが、先生は現在に至るまで獄寺さんのランジェリーを数多く描かれていますよね。
あらた:可愛い系でフリルがたっぷりでリボンがついていたりとか、獄寺さんの好みやこだわりが結構ありまして。
ランジェリーものの作品という先入観で見てしまうと、色々な凝ったデザインのパンティを履かないのかなと思う読者さんもいるかもしれませんが、やっぱり獄寺さん自身が選んで、履きたいものを履いているので、私も獄寺さんの嗜好に沿って獄寺さんの好みのものを履かせています。
ただ、庄司の妄想シーンになると結構セクシー系で、黒のレースやハードめなパンティを身に付けていたり。それが現実世界との違いというか。
――2人のそれぞれの嗜好がとても分かります。
あらた:そうなんですよ! 獄寺さんもそろそろ「庄司、こういうのが好きなんだ」って気づいたらセクシー系を履くかもしれないですね(笑)。
今までたくさんの反響があったのは(第3巻冒頭の)お尻がハート型にくり抜かれている下着とカラーイラストで描いたさくらんぼの下着でした。
――獄寺さんの大阪異動や社内旅行など、東京以外の土地に行くことも多いのかなと。そこで、もし2人が旅行に行くならどこをイメージしますか?
あらた:庄司の妄想でバカンスに行ったというif漫画を描いたことがあって、そういうリゾート地っぽい海で開放的になる2人も良いですし、国内だとわんちゃんもOKなおしゃれで映えるグランピングに2人を連れて行きたいな〜と思っていて。私もグランピングに行ったことがないので、資料集めのロケハンも兼ねて行きたいな。(2人を)星空を見ながらラブラブさせたいなって思いますね。
――大阪異動で登場した猿渡風真&可児雅(通称:さるかに)もかなり印象的でした。もしかして2人の名前の由来は『さるかに合戦』からきていますか?
あらた:そうです! 実は、鬼上司・獄寺さんが「鬼」、ワンコ系部下・庄司が「犬」で、百田(甲斐)が「桃」というモチーフがあって元々は『桃太郎』の登場人物からきています。
本当は3巻の時に、“キジ”っていうキャラが出るはずだったのですが、猿渡&可児(さるかに)が良い感じのキャラになったのでこの2人を膨らませようって、お蔵入りになりました。なので、実は日本昔ばなし(笑)。
――そこに繋がるんですね?! たしかに言われてみればですね。
あらた:百田・庄司・獄寺は初期に考えたキャラなので、1巻の時のキャラだけなのですが……。あの2人(猿渡&可児)の由来は『さるかに合戦』で合ってます。
――そんな猿渡&可児の2人は、今後カップリング的になってくるのでしょうか?
あらた:脇キャラたちをすごく好きと言ってくださる機会が多くて。BL漫画って基本的にメインの2人が特に人気になると思うのですが、ありがたいことに脇のキャラクターも同じくらいの熱量で応援してくださって。なので猿渡と可児の2人の物語もいつか描けたら良いなと思ってます!
――第4巻ではおにふわ2号ちゃんや獄寺さんの兄・伊吹さんの登場など盛りだくさんな内容でしたが、第5巻では獄寺家がメインで展開されていきますか?
あらた:そうですね。元々は4巻の最初で伊吹が登場したことによって、庄司と獄寺さんが今後どうなるのかを描こうと思っていました。5巻はちょっとシリアスになるかも?と思い、それならその前に楽しいことをいっぱいしようと。
せっかく獄寺さんが大阪から帰ってきたし、楽しい2人というか日常回というのを描きたかったので4巻の最初の方は、そういう日常回やドタバタラブコメディを挟んで、あとは「5巻頑張れ……」みたいな。
一同:(笑)。
――第4巻のお気に入りのシーンを教えてください。
あらた:紐パン送りつけ事件のサスペンス的な獄寺さんの表情は描いていてとても楽しかったです。読者さんは絶対ここで「どうしたの?!」ってなりますよね。
――まったく予想していなかった展開でした。
あらた:その展開からの見開き(P64〜65)でどーんと! 獄寺さんの(壁ドンならぬ)パンティドンも描いていて楽しかったですし、今日も読者さんに褒めていただきました。
またお花屋さんのページは作画コストが高いシーンではありますが、伊吹が出てくるだけで華やかになるので。私にとってはタレ目のキャラは珍しく、描いていて難しさもありましたが楽しくて……伊吹を生み出した際に担当さんに「すごいエロいキャラを産みましたね」って褒めてもらいました(笑)。
――伊吹さん、ほくろがグッときました。あとはこういう眉間に皺が寄っている獄寺さんたちのデフォルメ絵も可愛いなぁと。
あらた:あ〜! こういうデフォルメの顔ってネームで適当に描いたものが自分的にめちゃくちゃ気に入っちゃったりして、あえて崩した感じで描いたり、清書しちゃいますね。
――作業中の印象的なエピソードがありましたらお聞かせください。
あらた:コミックスの作業の時に体調を崩してしまって、肺炎になりました。咳が止まらなくて、熱も下がらなくて本当に大変でしたが、なんとか4巻を出せて連載も休まずに出来たので良かったです(笑)。
――本当に苦労して出来上がった4巻だったんですね……。
あらた:でも楽しく描かせていただきました!
――ありがとうございます。それでは、最後にファンの方へメッセージをお願いします!
あらた:シリーズ第4巻ということで、パンティBLというとかなりニッチなジャンルに入ると思うのですがありがたいことに応援していただけて100万部も突破できましたし、連載も長く続けさせていただけるのは本当に皆さんの応援のお陰です。今後も楽しんでいただけるように頑張りますので、よろしくお願いいたします!
[撮影・文/笹本千尋]
著者:あらた六花
発売日:2024年2月2日(土)
価格:770円/1,045円(初回特装版)