共犯者=ファンと創造するAve Mujicaの世界。完成されたステージを届けるハードルと自由自在が故の醍醐味。佐々木李子さん&高尾奏音さんが1st LIVEまでの道のりを振り返る【中編】
唯一無二の世界観。限界のないバンド
ーーAve Mujicaの世界観というのは、おふたりが先におっしゃっていた通り『バンドリ!』の中でも異色の世界観ですよね。
佐々木:本当に異色と言いますか。唯一無二の世界観。「成長を見せる」というよりは「完成された世界を届ける」という感覚ですね。
高尾:「常にお客さんの期待感を高め続けていかなきゃ」というプレッシャーも常にあります。
佐々木:そうですね。私たちがパフォーマンスをしたら、それが世界として出来上がってしまうので。
ーー前回、今までの『バンドリ!』シリーズの中でも新しい試みのバンドだから、受け入れてもらえるのか不安だったというお話がありました。MyGO!!!!!の立石凛さんと林鼓子さんにも取材させていただきましたが、やはり最初は受け入れてもらえるのか懸念があったというお話をされていて。
佐々木:やっぱりみんな懸念や不安があったんですね。
高尾:MyGO!!!!!ちゃんも、最初は顔を出さずにライブしていましたし。
ーー MyGO!!!!!とAve Mujicaはある意味、対照的な存在でもあります。おふたりは、そこはどのように捉えていますか。
佐々木:アニメを観ていると、MyGO!!!!!ちゃんも色々と紆余曲折していて。でも、まっすぐにキラキラとしたイメージがあります。「アスファルトに雨が降ったあとの水たまりのキラキラ」みたいな。
それに対して、Ave Mujicaはブラックホールのような、黒光りする闇の中でも輝く強さを持っていますし、音楽性も類を見ないシアトリカルでサスペンスショーのような衝撃があります。
ーーゴシックで、メタリックで。
佐々木:ヘヴィメタルに挑戦するのは、私自身初めてだったんです。「こんなに楽しいジャンルがあったんだ!」って。魂を込めて、ロジカルにテクニックを駆使しつつも、様式美じゃないですけど、本当に一筋縄ではいかない大変さがあって、演奏もそれぞれがとんでもないことをやっています。全員が一生懸命やって、一つの世界を作り上げたときに感動して、「もっと極めたい」という気持ちになりました。
高尾: MyGO!!!!!ちゃんはストーリーを見ていても、青春感がありますよね。メンバーの努力も含め、良い意味で人間味に溢れているバンドだなという印象があって。祥子としてはCRYCHICもありましたし、燈の歌や立希ちゃん、そよちゃんとの関係もあって、MyGO!!!!!自体を熱い視線で見ていて。
一方のAve Mujicaは非現実的で、普段は味わえない物語を体感できるというか。一つの芸術を見ているような、こちらは良い意味で人間味がないバンドで、やはり圧倒的な世界観がAve Mujicaの強みだなと思います。普通のライブではなく、舞台を作り上げてるような感覚なんです。劇が挟まる場面もあって、視覚的にも聴覚的にも楽しめるバンドなんじゃないかなと。
佐々木:1st LIVEのセットリストも物語が繋がるように考えられていたので、リハーサルをやるたびに「曲の順番はこっちじゃない?」ということをみんなで話し合って、色々と試していました。Ave Mujicaの曲は本当にクセの強いものが多くて、セットリストも難しいと思うんです。プロデューサーとも話し合いながら、同時に演奏中の表情の管理や動きについても考えています。
例えば、前回は笑顔で歌ったけど、「今回は次の曲が暗めだから、かっこよく決めよう」とか。難しいところもありますけど、Ave Mujicaの音楽性って様々なことができるバンドだなと思うんです。
高尾:限界がないバンドですね。
佐々木:自由自在に世界を作っていけるので、本当に楽しいです。色々な要望を出してスタッフさんを困らせてしまったり、直前まで悩んで試行錯誤したり……。でも、その時間すら愛おしいというか。
高尾:自分たちで作り上げている感覚が楽しいですね。後々、そういう私たちの思いが、Xのハッシュタグで「こういう意味だったんじゃないか?」と考察されているのを見て、「そうだよ!」って(笑)。
例えば、1st LIVEの劇では、台詞を事前に収録していて、口は動かさずに体の動きだけでやらせていただいたんです。それはプロデューサーさんと話し合う中で、お人形さんという設定だから、口は動かさずに表現することになったんですけど、それをわかってくださっているファンの方もいらっしゃって。嬉しかったので、Ave MujicaのグループLINEに送りました(笑)。
佐々木:いつも色々な情報を共有してくれています。
高尾:「みんなの思いが伝わっています!」って。
佐々木:新感覚のライブをやったときに、「この世界観は何だろう?」と疑問に感じる方もいると思うんですけど、瞬時に理解して、劇の部分もライブの部分も全部含めて楽しんでくれるんです。そういう意味では、お客さんも一緒に世界観を作ってくれていると感じます。
ーーライブでは、お客さんがもうひとりのAve Mujicaだと。
佐々木:そうです。皆さんが目撃者であり、共犯者なので。