
レース業界とアニメ業界の懸け橋となる作品に――臨場感あふれるレース映像とヒューマンドラマが詰まった日常パートに注目! 『HIGHSPEED Étoile』輪堂凛役・和泉風花さん&小町永遠役・井澤詩織さんインタビュー
凛は裏表のない、底抜けに素直なキャラクター。永遠は感情を一定のトーンに保つことを意識
――お互いから見たキャラクターの印象についてお聞かせください。まずは、井澤さんから見た輪堂凛についてお願いします。
井澤:凛ちゃんはバレエダンサーを夢見ていたけれど、故障により挫折した暗い過去を持っています。ですが本編ではそれをあまり引きずっていなくて……。
――プロフィールを見た後に、PVを見るとかなりギャップがあるなと思いました。
井澤:バレエダンサーの道を辞めてゲーマーへ、そしてレーサーになるという急変化をしていますからね(笑)。そんな彼女は本作における光属性のキャラクターであり、面倒を見たくなるタイプだなと思います。

――和泉さんから見た小町永遠の印象はいかがですか?
和泉:ゲームがすごく好きで突き詰めるタイプという印象があって、いつも一緒にいる凛やカナタよりも先に上位へ上がるんだろうなと勝手にイメージしています(笑)。
井澤:要領がよさそうだもんね。人のいいところだけをうまくかいつまんで、上達していきそう。
――収録を通して自分が演じるキャラクターに共感したり、相違点を感じたりしたところはありますか?
和泉:凛はみんなに助けてもらうことで何もわからないまま車に乗ることが出来たんですが、その境遇が似ていると思いました。私もアフレコ時には多くの方に助けてもらったので。失敗したときは「大丈夫! 私も若いときは同じことをやっていたよ」と声をかけてくださり、伸び伸びと演じられるような環境を作っていただきました。そこは凛と同じような立場だったかなと。
一方で、場所や人によらず飾らないで自分らしくいられるのは私と違うなと思いました。私は結構人の目を気にするタイプなので(笑)。自分らしさを貫いて、みんなから愛されるのはすごい能力だなって思いますし、羨ましいです。

――井澤さんはいかがですか?
井澤:永遠ちゃんと似ているのは、人の中心にいないところですかね。みんなで盛り上がっているなか、一歩引いた位置で見守る感じはそっくりかな。
違うのは感情がフラットなところでしょうか。冷めているわけでもないし、穏やかなわけでもないんですが、気持ちに一定の振り幅があるんです。私はどっちかっていうと感情がジェットコースターのように上下するタイプなので、独特の空気がある彼女は魅力的に見えますね。
――そのテンションを保つ演技は大変でしたか?
井澤:永遠ちゃんの場合は「やったー!」っていう歓喜のセリフも高揚感を出しすぎず、一定のトーンで言わなくてはいけなかったので大変でした。
和泉:周りのキャラクターが結構キャピキャピしているから余計に。
井澤:みんなで声を合わせて「オー!」っていうときも永遠ちゃんはブレないようにしなくちゃいけないから難しかったんですが、そういうお芝居をするのがまた楽しいんですよね。

――役作りをする際に意識したことはありますか? スタッフの方から演技についてのディレクションなどがありましたらお聞かせください。
和泉:凛は素直な子だと思って事前にキャラクター作りして現場へいったんですが、とにかくアホな子だという話を現場でされました。私なりにアホな感じで演じてみたら「このセリフ、頭良くなっちゃってます! もっとバカになってください!」と何回も言われました。
井澤:「どうしてこうなっちゃうの!?」というセリフをお馬鹿さんの感じでやらないと嫌味になっちゃうんですよね。「どうしてなの!」って文句みたいになっちゃうから。
和泉:そう言われました! 「文句は言わないし、嫌味の含みは何もない。ただの疑問で裏表はないよ」って。
井澤:でも、素直に演技するって難しいんですよ。大変だったでしょ?
和泉:人間って常に考えて生きているじゃないですか。それを取っ払って、凛の底抜けに何も考えていない様を演じるのは苦戦しました。

――永遠を演じる上でディレクションはありましたか?
井澤:特にこうしてほしいという注文はなかったです。第1話のアフレコ時に事前に用意したものを見せたところ、「はっきりとした人物像を把握してなかったんですけど、井澤さんのイメージでピッタリです」と言われて。
和泉:なんでやねん! (スタッフさんは)最初にイメージを作ってから来てさってるんじゃないんですか(笑)。
井澤:(笑)。ただ、同じドライバーの悠然(ようらん)と永遠ちゃんはキャラクター性が似ていて、そこは差別化しないといけないなと思いました。なので演じる際は、クールなだけじゃなく不思議ちゃん要素を残すようにしています。
――本作では、キャラクター同士やマシンに搭載されているAIとの掛け合いが多く見られますが、そのなかで意識したことはありますか?
和泉:凛は誰に対しても取り繕うことができない子なので、目上の相手に対しても恐れずぶつかっていくんです。なので、思ったことを口に出すみたいな感じで、どのキャラクターとも自然に喋るよう意識しました。
井澤:永遠ちゃんとカナタはスクールの同期で、過ごした年月が長いんです。なので他のキャラクターと比べて距離感が近く感じられるように演じています。カナタに対して厳しいセリフを言うときもありますが、そんなふたりの特別な関係を楽しんでもらえればと思います。

専門知識がなくても楽しめる、カーレースへの愛が詰まった作品
――ふたりを取り巻くキャラクターたちも個性豊かです。特に気になったキャラクターを挙げるなら誰ですか?
和泉:amiちゃんですね。本作においてこのキャラクターはかなり重要な存在で、近未来で人と一緒に走るAIがどのような役割を果たしているのか注目してもらいたいです。
井澤:私はレースの解説をしてくれるキャラクターに着目していただけたらと思います。私たちが演じるドライバーたちは、レース中は集中しているのであまり話さないんですが、代わりにレースの状況を教えてくれるキャラたちは専門用語をたくさん使って喋っていて。
和泉:アフレコが大変そうでしたよね。もしかしたら、本編で一番声を聞くことになるかも(笑)。
井澤:アナウンサーやキャスターの役は、他の作品だとキャラクター性を作らないことが多いと思うんですが、この作品では音響監督さんが「立ち位置はこうだ!」とすごくこだわっていて。そんなキャラが解説して喋っているシーンはぜひとも見てもらいたいです。

――収録現場の雰囲気や、印象に残っているエピソードがあればお聞かせください。
井澤:8人ぐらい入れるスタジオだったので、メインキャラクターは一緒に収録しました。雰囲気は和気あいあいとしていたよね。
和泉:そうですね。キャストさんが憧れのメンバーだったので、どんな雰囲気になるのか緊張しながら行ったんですが、日笠さんを筆頭に、先輩方が和やかな雰囲気を作ってくれました。
井澤:そんななか、先輩も私たちもコロナ禍での分散収録が長かったので、マイクワークに困るという珍現象がありました。マイク4本で入れかわる感じだったんですが、なかなか行けないみたいな(笑)。
和泉:日常パートでは女の子のキャラクターが全員集まってキャッキャするシーンがあるんですが、各キャラが同時に別々のことを話し出すので、空いているマイクを探して走り回るなんてことがありました。ただ、それもキャラクターたちの雰囲気とリンクして作品に盛り込まれているのかなと思いますし、なにより私自身楽しく収録することができてよかったなと思います。

――最後に、おふたりが思う作品のおすすめポイントを教えてください。
和泉:近未来のレースならではの設定があり、現代のレースとは違った内容となっているので、車好きの方もそうでない方も新鮮に楽しめるんじゃないかなと思います。
また、キャラクターたちの日常シーンも多いので、キャスト同士の掛け合いにも注目していただきたいです。
井澤:題材としてはカーレースという専門的な分野を取り扱っているんですが、最初は「キャラクターが可愛い」というところから入っていただければ充分に楽しめる作品になっています。
映像は、アニメーションの強みを生かして、実際には見られない角度から車がコースのギリギリを走る様子を見ることでき、スタッフさんたちの作品に対する愛を感じることができると思います。
プロデューサーさんがカーレース好きということから始まった作品なので、元々レースが好きな人は「そうだよ! これこれ!」と感じるシーンはたくさんあると思いますし、今まで全くレースを知らなかった人も「こんな魅力があったんだ!」と気づかせてくれますので、ぜひ男性も女性も一度見ていただきたいなと思います。
――レーシングドライバーの佐藤蓮選手が声優を務めていたりと、作品への愛が詰まっているなと感じました。
和泉:プロデューサーさんはもちろん、アニメに関わってくださっている企業さんが本気でカーレースのアニメを作って盛り上げたいと思っているんです。同時に、本作を通してレース業界も知ってもらおうと頑張っていて。この作品はいつか二つの世界の懸け橋になるんじゃないかなと思っています。
作品概要

あらすじ
少なくとも表面上はその目的を達成していた。
そんななか、突如発表された次世代レース『NEX Race』。
最高時速500kmオーバー。
AIによるコントロールサポートに加え、
逆転の可能性を生み出すリボルバースト。
最新技術による安全性を担保に、世界を舞台としたレースシーンは一変した。
熱狂と興奮。そして挑戦者の瞳が、見る者の心を震わせる。
圧倒的な力で連覇を重ねる『キング』。
野性的な走りで追従する『クィーン』。
そしてここに、ひとりの少女がデビュー戦を迎える。
輪堂凜。
世界がその名を知る時、レースはさらなる革命の刻を迎える――。
キャスト
(C)HSE Project