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- 藤崎萌恵
- 数年前にBLと出会い、心に潤いを取り戻しました。BLとブロマンスが癒し。主な記事は『チェリまほ』『陳情令』等。
ここからはエジプト神話と、神話におけるセト神がどのような存在なのかなどを簡単に解説していきます。(ただし、エジプト各地では異なる創世神話が伝わっており、原典がひとつではないためエジプト神話には諸説あります。)
はるか昔、紀元前3000年頃から栄えていた古代エジプト王朝。人々は、太陽や月、動物、植物など様々なものを守護者として崇め、ナイル川に沿った広大な地域でさまざまな神と神話が誕生しました。
古代エジプトでは王朝の興亡が繰り返され、統治範囲が変化しながら神々の位置づけも変わっていきます。したがってエジプト神話の伝承は多様で矛盾も多く、唯一であるはずの創造神でさえも複数存在しているのです。
エジプト神話は、「ヘリオポリス神話」「ヘルモポリス神話」「メンフィス神話」「テーベ神話」の4つに大別することができます。
そのうち最もポピュラーで、天地創造の最古の神話とも言われる「ヘリオポリス神話」の主神は太陽神アトゥム(ラーと同一視される)。はじまりの海であるヌンから創造神アトゥムが自らの意志で誕生し、ヘリオポリス九柱神(エネアド)と呼ばれるアトゥムの子孫たちが生まれました。(アトゥムはのちに太陽神ラーと習合し、アトゥム・ラーになります。)
セトはそのヘリオポリス九柱神のうちの一人で、『ENNEAD』は主にヘリオポリス神話をベースに創られているようです。
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— 모히또 Mojito (@mojito_ennead) December 31, 2018
~세트에게 물어봐~ 가 남아있길래 이것도 공개합니다. 호루스버젼은...언젠가 제 폴더호수에서 찾게되면 올릴게요. pic.twitter.com/mtktfG2P9W
創造神アトゥム(ラー)から生み出された大気の神シュウと湿気の女神テフヌトは、愛し交わって天空の女神ヌトと大地の神ゲブを生み出しました。
ヌトとゲブは情熱的に愛し合い片時も離れないため、シュウはヌトを高く持ち上げてふたりを引き離し、これにより太陽の通り道と人間の生活する空間が確保されたのです。
愛妻ヌトと引き離されたゲブは地面に伏せて悲しみでいっぱいに。ヌトは引き離される前に妊娠していましたが、太陽神ラーはヌトに一年のうちどの日にも出産することを禁じたので、知恵のある神トトが月から充分な光を盗みとり、暦にない余分な5日を創り出しました。月が満ちたり欠けたりするのはこれが理由だとされています。
そして、その5日間でヌトは冥界の神オシリス、ホルス、再生の女神イシス、破壊の神セト、葬送の女神ネフティスを生み出しました。
◆ワンポイント解説
ここでいうホルスは、オシリスとイシスの間に生まれた天空の神ホルスと同一視されています。ホルスは、ファラオ時代のエジプトにおいて最も偉大で多様化した神のひとつ。時間に束縛されず四次元の世界で自由に行動し、同時にあらゆる年齢を持つことができるそうです。
そんなわけで、ホルスはオシリスの弟にしてその息子であり、セトの兄にしてその甥でもあります。
エジプトの王として国を治めていた豊穣の神オシリス。ある夜、弟セトの妻でありオシリスに恋をするネフティスに「わが夫セトには種がなく息子を授けられない」とささやかれ、ふたりは結ばれました。これにより生まれたのがアヌビスです。
元々、オシリスを妬んでいたセトはさらに兄を憎むように。オシリスの体に合わせた棺を作り、そこへ閉じ込めてナイル川に流しました。その棺を妻のイシスが見つけますが、セトがオシリスの骸をバラバラにしてしまいます。
妹のネフティスとともにイシスは断片を集め、アヌビスの協力を得てオシリスをミイラに。オシリスは復活しますが性器だけは見つからなかったため、イシスは魔術で性器を再生して息子ホルスを身籠もります。そして、オシリスは冥界の王として君臨するのでした。
◆ワンポイント解説
セトは一般的に特定不能な現存しない動物の姿で表現されることが多いようです。オシリス神話のなかで、セトは徹底的に悪役として扱われ、肌の色は古代エジプト人が忌み嫌った赤色。
一説によると、セトはエジプトの砂漠や砂嵐、暴風など厳しい自然の象徴であり、オシリスを殺したのも自然災害を意味していると考えられます。
エジプト神話のなかでも特に有名な、王位継承権をめぐるホルスとセトの戦い。父オシリスが叔父のセトにより殺されたことを知ったホルスは、自身の王位継承権を主張。復讐に燃えてセトに戦いを挑みます。
しかしホルスはオシリスの死後に生まれたため、セトは彼の主張を認めません。神々の会議を経て、カバになって潜水対決をし、石船の競争などを繰り広げたセトとホルス。80年にわたる長い戦いの末にホルスが勝利をおさめ、王座奪還に成功します。ホルスはファラオとなってエジプト全土を治め、セトは名誉を失い追放されました。
イシスの協力のもとホルスが優勢のなかで80年も戦いが続いたのは、太陽神ラーが太陽の守護者でもあるセトの味方につきたかったことも関係しているようです。
「太陽の船」に乗り太陽の運行を日課としている太陽神ラー。日の出とともに生まれ、昼は天高く昇って日暮れに死を迎え、冥界を通って再生する船旅を毎日繰り返します。
ラーと神々が乗り込んだ船を大蛇アポピスが襲撃するのですが、セトが対抗してラーを守りながら毎日アポピスを倒しているのです。
つまり太陽が出るのはセトの活躍によるもので、ラーは太陽の運行でセトの力に頼っているためセトに味方したかったようです。しかし、最終的にラーは「エジプト王はホルスにする」と決断して決着しました。
参考文献
『図説エジプト神話物語』(原書房)
『図説エジプトの神々事典』(河出書房新社)
『全部わかる世界の神々と神話』(成美堂出版)
数年前にBLと出会い、心に潤いを取り戻しました。BLとブロマンスを愛し、大好きな作品はたくさんありますが『チェリまほ』が心のよりどころです。そして『魔道祖師』をはじめ中華BLの沼へ。趣味は国内外のBL漫画や小説を読むこと&ドラマ観賞で、これまでに執筆した記事は『チェリまほ』『美しい彼』『魔道祖師』『陳情令』『ENNEAD』など。
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