アイドルとオタク。様々な道のりを経て生まれた“作家”という第三の自分――『境界のメロディ』著者・宮田俊哉さん(Kis-My-Ft2)インタビュー
頭の中のアイデアに命が吹きまれる感動
――執筆中は初めての経験ばかりだったと思いますが、特に苦労した点はありますか?
宮田:大変なことを言い出したらキリがないです……(笑)。お恥ずかしい話ですが、小学6年生で芸能界に入ったので、勉強というものをほとんどやってきませんでした。ちゃんと高校まで通っていた人たちと比べると、語彙力もなく、漢字の読み書きも知らない。書き始める前に一マス空けるというルールを聞いて、「そうだったの!?」って。「歌って踊る」、「テレビに出る」ということは自分なりに勉強してきましたが、そんな状態からのスタートだったので、いちから学ぶ必要があったんです。
忙しい時期には夜遅くまで書いて、3時間くらい寝てから仕事に行くこともありましたが、見直したら同じことを書いてしまっていて、「大人しく寝れば良かった」と後悔したり(笑)。「自分が無理をしなきゃ」というマインドになっていたのも、大変だったポイントかもしれないです。
――物を書く人にとっては、すごく共感できるお話です。逆に制作期間の中で、特に嬉しかったことは?
宮田:作品が告知されて、ホームページが開設されたときでしょうか。ページに飛ぶと、そこに『境界のメロディ』の世界が広がっていて。あとは、キョウスケとカイのイラストを見た瞬間もめちゃくちゃ嬉しかったです。「キョウスケとカイがいる!」って。
――今作のイラストは、人気イラストレーターのLAMさんが担当されていますね。
宮田:素敵なキョウスケとカイを作り上げていただきました。LAMさんには、原稿を読んでいただいたり、僕から直接「キョウスケとカイはこういうキャラクターで……」という説明をさせていただいたところ、任せてほしいと言っていただきました。年齢も近かったので、ふたりでご飯に行って、お互いに言いたいことが言い合えるような関係性を作りました。
そして、最初に仕上がりを見たときは、もう泣きそうでしたよ。頭の中にある砂一粒くらいのアイデアがイラストになって、ドラマCDでは声も入れてもらって……。もしかしたら、「子供が生まれたときってこういう気持ちなのかな」と。
――今お話できる範囲でドラマCDについてもお聞かせいただけますか?
宮田:自分の作品をこんなに「最高だぞ」と持ち上げる作家さんはあまりいないかもしれませんが、本当に素晴らしかったです。作品を作り上げていく中で、カイの声は最初の段階から明確なイメージの人がいて、憧れの後輩を描くうえで、それ以外の人はハマらなかったんです。僕にとってのカイは彼でしかなくて、自分の中で切り離せなかったというか。
また、キョウスケに関しては、自分で演じることも選択肢にありましたが、「やっぱり自分じゃ無理だ」と。そんな中で、キョウスケそのものだと感じる方がいたんです。社会人としてはダメなんですけど、ご本人の連絡先を直接ゲットして、「このキャラクターをやってほしいんですけど……どうですか!?」と熱量を伝えました。そうしたら、「嬉しいですけど……事務所を通してもらわないと」という、ごもっともなお返事をいただいたんです。その瞬間、その人とキョウスケのイメージがさらにバチッとハマりました(笑)。