「玲王にとって凪は宝物のような存在」『劇場版 ブルーロック -EPISODE 凪-』御影玲王役・内田雄馬さんインタビュー|キャラの内面を紐解く、役を演じて感じたこととは?
4月19日(金)より全国公開となった『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』。本作はシリーズ初の劇場版!『ブルーロック』の人気キャラクター・凪 誠士郎にスポットを当てた 『ブルーロック -EPISODE 凪-』の物語が描かれています。
ファンのみなさんは、特に凪 誠士郎と御影玲王の関係性がどのように描かれるのか、気になっている方も多いことでしょう。
そこで今回は、御影玲王役・内田雄馬さんのインタビューを実施しました。役を演じているからこそ見える「御影玲王」についてや、凪 誠士郎との関係性について聞いてみました。
「御影玲王」の内面を紐解く、芝居をして感じたこと
――改めて『劇場版 ブルーロック -EPISODE 凪-』の映画化が決定した際の心境をお聞かせください。
御影玲王役・内田雄馬さん(以下、内田):そうですね、「EPISODE 凪」が映画化されるということで。本作の「すごいな」と思う部分は、「凪 誠士郎」というキャラクターに焦点を当てた作品で劇場版を1本作ることが出来るというところですね。
各キャラクターの個性やドラマが練られて作られているからこそ、キャラの視点を変えて見ても面白いんだと思います。
どのキャラクターもそうですが、凪というキャラクターに底知れない魅力があるからこそ、劇場版で描くということが可能になったと思うので、そこは『ブルーロック』の緻密さ、奥深さのようなものを感じましたね。
――ふと気になったのですが、原作『ブルーロック』を初めてみた際はどのように感じましたか?
内田:まず、「絵の力」が強いと感じました。
――画力!! って感じですよね。
内田:絵の中に感情がすごく乗っていて。表情の一つ一つにキャラクターの個性が滲んでいるなと感じました。
一同:(頷く)。
――それでは、(本編『ブルーロック』含む)「御影玲王」というキャラクターを演じてみていかがでしたか?
内田:玲王はとても「小器用な人」で、生まれもそうですが世の中を上手く渡れてしまう環境で生きていたが故に自分の失敗を知らない。
人間って心が折れたりとか、自分の失敗から学んでいくことってすごくあるんですけど、そういう感覚を味わったことがない。だから未熟な部分が多いんだと思います。
――側から見ると順風満帆な人生のようにも見えていますよね。
内田:「誰かから与えられたもので俺が欲しいものじゃない」みたいな部分もあって。傲慢な話ですがある意味、強いエゴなので上手い形になれば爆発力のある火種になると思います。
玲王は他人に対して、「教育(帝王学)」でこういうふうに接したらみんなは喜ぶし、動くだろうという自分の中の、ちょっと学んでしまった小手先の部分でのコミュニケーションがとても多くて。
ぱっと見は「明るくてスター」のように見えていても、子供らしいというか。僕からすると「未熟」という言葉が合っていると思うんですけど……。
だから演じていても、何が許せなくて、何に感情的になるのかという理由が結構分かりやすかったです。自分の心の中で納得できない、整理できないっていう部分が多々あるんです。
なぜなら、“ブルーロック”は自分の想像を越える人たちがいっぱいいるから。なんとなくみんな、このくらいの枠の中で動くのが気持ちいいよね? じゃなくて、その枠からぶっ飛んで自分のフィールドにしていく人が多い中だと、玲王の考えは追いつかない。
なので、玲王は葛藤したり焦ったりしてしまうんです。突発的な何かが起きた際の経験値の少なさで、自身の感情に翻弄されている所があったり、感情的な部分は割とシンプルだと思います。
そして、ここでTVシリーズと劇場版でのディレクションで違いがあったという話になっていくんですが……。玲王に関しては、TVシリーズと劇場版で芝居のアプローチも結構違います。
――どのような違いでしょうか?
内田:TVシリーズの際はあくまでも潔たちの視点だったので、「感情の振り幅をめっちゃ出してください」と。
自然な流れの芝居を持って行ったのですが、キレたら別人っていうくらい思い切り起伏をつけてくださいというディレクションがありました。それは潔たちの視点から見ているので「怖さ」や「ヤバさ」があった方が良いということで。
そして今回はこちら側の視点なので、キャラの細かい感情の機微も全部繋げて作っていいというディレクションでしたね。なので、かなり自然に感情を繋げて作れたなぁという感覚があります。
――それが、AnimeJapan 2024『ブルーロック』ステージの際に、みなさんでお話しされていた「キャラの立場や視点によって演技が変わってくる」の話に繋がるんですね。
内田:そうですね。『ブルーロック』に関してはそういった部分を制作陣が大事に作っているというのがあって。TVシリーズの際は潔の目線で見た時に、得体の知れない人たちに見えてほしいという部分があったと思います。
だけど今回は、凪たちからすると潔がとても怖く見えているようになっています。
浦くん(潔 世一役・浦 和希さん)も言ってましたが、石川俊介監督からは「潔は“魔王”です。それぐらい演じていいです」と。玲王たちからするとさっきまで簡単に勝てそうな相手だったのに、どんどん進化していくという怖さがありました。
――今回、凪に焦点が当たったことによって、玲王の凪に対する保護者感(?)のようなものをより感じました。おそらく「面倒見がいい」みたいな部分がそう見えたのかなぁと。そこでふたりのキャラの関係性について、内田さん自身はどう感じられていますか?
内田:そうですね。まず、玲王にとって凪は宝物であると、自分の物であるという感覚があるわけですね。
もちろん、いろんな意味があると思いますが、僕にとっては「所有物だ」っていう感覚なのかな? と。人としての凪の好きなところもたくさんあるはずですが、それ以上に俺の物であるという感情が大きくなっていて、凪を大事にする理由でもあると思います。
だから、凪が玲王と離れるという選択をした際に許せないのは、「所有物だ」という感覚と自分の気持ちがぶつかっちゃったからだと思います。
玲王としては「人として好きな凪」と「自分の宝物である凪」という2つの優先順位が、おそらく上手に折り合いがついていなくて、混ざっちゃってる。
僕はそんな部分が子供だなと思っていて。例えば、「親友」と呼べる相手がいた時に、その親友が別の友達と仲良くしていたら「なんかイライラする」っていう人もいると思います。
――「取られた」みたいな、ジェラシーですね。
内田:はい。大人になってから、こういう感覚はあまりないんじゃないかと思うのですが、子供の時はそういう話、よく聞いた気がしていて。
でもそれって、対自分という目線でしか見られていなくて、相手が外で築くコミュニティにまで考えが及んでいないですよね。
凪だって人間だから色々なことへ興味が伸びていくわけです。そして玲王は、凪がサッカーに興味を持ったことが嬉しいのに、それに素直になれなくて「勝手にしろ」と言っちゃう……みたいな。
凪が変わっていくことが嬉しいことでも、自分の手から離れるということは許せない、という。でも、それはそうだと思うんです。誰かを自分の手の上に乗せることなんて無理なんだから。
一同:(頷く)。
内田:どんな存在であれ、人は自分の所有物にはなり得ないということを知って、自分の中で落とし込めたら、初めてその時に凪と良い関係になれるんじゃないかな。
――同じ土俵というか。
内田:はい。だから今の彼がちょっと「保護者」っぽいというのはある意味、「自分の中では大事にしたいな」「サボテンに水をあげたいな」っていうことのような気がします。
凪が1人で成長していくのは、「玲王と2人で世界一を取る」って約束したからであって。
凪は、もっとサッカーのことを知りたい、サッカーが面白いって思ったから、「俺もW杯を取りたい」と。でもそこで「約束したよね? 玲王と2人で取るって」というふうになっていくんですけど、その凪の変化は自分の隣であってほしいと思うのは、玲王のエゴですよね。
だから、ここから本当に相手のことを想えるようになってほしいな、と玲王を見ていると僕は思います。
――ありがとうございます。キャラクターに対する想いがとても伝わってきました! それでは最後となりますが、内田さんイチオシのベストシーンを教えてください。
内田:それでいうと、一番最後の凪との2人のシーンです。
そこまでは半分ぐらいしか(凪 誠士郎役・島﨑信長さんと)一緒に収録ができませんでしたが、あのシーンは信長さんと収録ができて。
4つほどの短い言葉でしたが、これまでの積み重ねが乗っていたというか、あそこの掛け合いはすごく良かった。ああいう会話が大事だなと。
玲王としても強がる言葉でもなく、今感じていることを思いのままにしっかり伝えて、凪自身もそれを受け取ってくれたという感じがしました。
時間軸が少し異なるシーンなので難しさもあったのですが、だからこそ、今まで『ブルーロック』で演じさせてもらってきているということも踏まえて、未来を感じられるような、そういう1シーンになったんじゃないかな。
あの段階だと2人の立ち位置に距離があるのですが、心は絶対前よりも近づいていると思います。それが感じられた芝居になっていたと思うので、自分としてもやっていてすごく楽しかったです。
[取材・文/笹本千尋]
作品概要
あらすじ
W杯優勝を夢見る同級生の御影玲王が、その才能を見つけだすまでは。
玲王に誘われるがままにサッカーを始めた凪は、圧倒的なサッカーセンスを発揮。
ある日、“ブルーロック(青い監獄)”プロジェクトの招待状が届く。
そこで待ち受けていたのは、潔世一、蜂楽廻、糸師凛ら、全国から集められた選りすぐりのストライカーたちとの出会いだった。
玲王とはじめた世界一(ゆめ)への挑戦が、凪(天才)をまだ見ぬ世界へと連れて行く・・・。
<天才>は見つける者がいて初めてその輪郭を成す──。
今、天才ストライカー・凪誠士郎のエゴが世界をアツくする!!
キャスト
(C)金城宗幸・三宮宏太・ノ村優介・講談社/「劇場版ブルーロック」製作委員会