声優
古賀葵が振り返る声優になるまでの軌跡【インタビュー】

声優という職業は「私にとって生きている意味」。引っ込み思案な自分が嫌だった。だからこそ、自由に生きているアニメのキャラクターに憧れたんです──古賀葵さんが声優になるまでの軌跡を振り返る

81ACTOR'S STUDIOのレッスン開始 古賀葵の上京物語

――「81ACTOR'S STUDIO」に入所したときのことは覚えていらっしゃいますか?

古賀:私の代の「81ACTOR'S STUDIO」は5クラス編成でした。4月に入所式があったんですけども、そこにスーツを着ている子たちが並んで、目の前には先生たちがいて「うわああ」って(笑)。

まず、会場に行くまでの道のりに緊張しているんですよ。人も多いし、電車にも乗らなきゃいけないし、電車が何両もあるし、ヒィヒィ言ってました(笑)。一時間くらい早く着いて、そのあたりをうろうろしながら、その時間がくるのを待っていました。とても緊張していたことを覚えています。

――「81ACTOR'S STUDIO」自体にはすぐ馴染めました?

古賀:私が最初に配属されたのはAクラスでした。「本科」という、声楽・肉体訓練等の基礎訓練などのクラスは1年間同じ仲間なのですが、「ことば(演技)」はクラスが1学期ごとに変わるんです。Aクラスのみんなは……言葉が合っているかわからないのですが、陽キャが多くて「やばい!陽キャのいるクラスになってしまった! 怖い!」と(笑)。

――明るいクラスだったんですね(笑)。

古賀:みんなめちゃくちゃ早く溶け込んでいたんです。レッスン後にファミリーレストランに行っていたようなんですが、私は人見知りだからそそくさと帰ってました(笑)。でも友だちもできて。思ったよりも、想像以上に和気あいあいとしてた子たちだったので、打ち解けることができました。未だに連絡を取り合っています。

――「ことば」の授業のお話がありましたが、古賀さんも中尾隆聖さん、鈴木清信さんの授業を受けられていたのでしょうか。

古賀:はい。おふたりから授業を受けていました。中尾さんに関しては、私がNHKが好きだったこともあって、ずっとお声を聞いていました。だから最初は「本物だ!」って気持ちがあったのですが、「今は先生と生徒なんだ」と気合いを入れて、授業を受けさせていただいていました。

でもやっぱり、独特のオーラがあって。中尾さんが教室に入ってくるだけで、空気がピリッと引き締まって、良い緊張感の中でレッスンを受けていました。(鈴木)清信さんの授業もとても覚えています。授業前のトークがいつも面白くて、場を和ませてくれていました。

――当時授業で磨いていったものは、プロとして仕事をはじめた今も役立っていますか?

古賀:めちゃくちゃ役に立っています。特にマイクワークです。「81ACTOR'S STUDIO」で仕込んでいただきました。

それと、授業の中で「キャラクターが画面から消えても、その場面が続いているのであれば、自分はまだそこにいるという意識を持ちなさい」と教えていただいたことがありました。「気持ちはずっとその場にいるんだよ」と。それは今でも意識しているものです。

――キャラクターが息づいていることを忘れるなと。

古賀:そうしたパッション、呼吸……今日受けたレッスンから次のレッスンまでの期間をどうやって過ごすのか、それが次につながってくるんだよってことも教えてもらいました。ここで吸収したものを絶対に次に生かして「よくなったね!」って誰もが思うようになりたい!って。

また、Aクラスの子たちはとても向上心が高くて。「ことば」のレッスンは所内発表会があるんですが、その自主練のために、自分たちで近くのスタジオを借りて、来られる人たちだけで集まって、大きな鏡の前で練習したことも。それと「本科」では空手の授業があって。

――古賀さんは空手はお得意でしたか?

古賀:精神を鍛えていただきました(笑)。空手ってひとりで動いているようで、みんなで練習する機会が多かったんですね。お互いに意見を言い合って、アドバイスし合うこともありました。それは朗読の練習に関してもそうです。

私たちはみんなライバルだけど、ひとりで現場を作っているわけではないし、みんなが一緒に力を合わせることでひとつの作品が出来上がるということをそこでも学べたなって思っています。本当に良い仲間に恵まれたなって。あの養成所時代がなかったら、今の私はあるんだろうか?って思うくらい、クラスに恵まれていました。

「佐賀に帰るなんて絶対に許さない」と自分を追い込む

――その後、古賀さんは81プロデュースに所属されます。その時のお気持ちはどのようなものでしたか?

古賀:めちゃくちゃ嬉しかったです! タイミング的には、修了式が終わって数日経ってから郵送で結果が届くんです。「所属」「研究生」「卒業」、それぞれの道に進むことになるわけですが……封筒を開ける瞬間がいちばん怖くて正座していました。それで結果を見て「わーーー!」って騒いで、母に電話したら泣いて喜んでくれて「良かったね」って。

というのも、「81ACTOR'S STUDIO」時代、1学期、2学期はAクラスだったんですけれども、3学期はEクラスになったんですね。それで絶望していて(苦笑)。

――そういうケースもあるんですね!

古賀:ただ、2学期からのAクラスが選抜クラスというだけで、Aクラス以外は「普通科」という括りなんです。それでも、アルファベット的に一番上から下に落ちた気分になってしまって。でも「ここで諦めたら終わる。なんのために東京に来たんだ、このまま佐賀に帰るのは絶対に許さない!」と、自分にムチを打っていました。

それと、AクラスからEクラスの判定となったのは私だけではなかったんですね。その仲間がいたから頑張れたのかもしれません。

――お互いを鼓舞しながら、モチベーションを高めていたのでしょうか。

古賀:本当にそうでした。「絶対に所属になろうな!」って境地でした。それと、「81ACTOR'S STUDIO」の事務局のスタッフの方々にも勇気をつけていただきました。私の時は3学期がAクラスであれば、所属オーディションってスタジオでやる1回だけなんですね。でもB〜Eクラスの生徒は、1回教室でのオーディションがあって、そこから選ばれた何人かがスタジオでのオーディションに進むことができるっていうシステムで。最初それを聞いた時は「2回あるの?」と腰が引けていたんですね。でも事務局の方に「逆にチャンスだと思いなさい」と。

「あなたたちは2回見てもらえるチャンスがある。すごくお得じゃない!」って言われて「確かに! 頑張ります!」ってなっていました。気持ちをポジティブに変えてくださったのは、とてもありがたかったです。

――いまのお話は、古賀さんが司会で参加された「81オーディション」にもつながるようにも思います。「見てもらうチャンスがある」と、前向きな気持ちで挑むことって、何事にも大切ですよね。

古賀:そう思います。自分でマインドをコントロールしていくのも大切だと思います。

――所属が決まったあともルームシェアって続いていたんですか?

古賀:そうですね。2年間、3人でルームシェアをしていました。3人とも違う団体や事務所にいたので、それぞれで違うことが起きているから、お互いに励ましあったことも。気持ちを共有することができて、ルームシェアしていて良かったなって思っています。

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