本作に影響を与えた人物のひとり!? 偉大な脚本家が語る本作のテーマとは｜『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』シリーズ構成・脚本、吉田玲子さんインタビュー

観客の目線で物語を組み立てる技術、浅野先生との密なコミュニケーションが作品を形成する

ーー本作の執筆をしていて、意識したことや難しかった部分はありますか？

吉田：情報量が多いので、情報をどの順番で観客のみなさんに伝えていくのかという部分です。コミックだと文字で追えるので、わからなかったところや気になるシーンを振り返って読むことができますが、映像だとセリフを耳で聞いて情報を処理しなければいけない。

流れていく映像とセリフで、どれだけの設定・物語を伝えることができるのかを意識していました。初めて見る方にとっては、作品の設定だけでも情報が多いですし、登場人物ひとりひとりの性格なども把握しなければならない。

情報が立て続けに来るとやっぱり処理が追いつかなくなるので、いかにすんなり状況を飲み込んでもらいながら物語を進めていくのかに苦心しました。テンポのコントロールや情報の出し方を調整して今の形になっています。

ーー登場人物でいうと、前章は門出の掘り下げや行動が多く描かれていた印象です。吉田さんは門出をどのようなキャラクターだと思って書いていたのでしょう。

吉田：門出の中には、光と影があって、正義と悪があって、作品で表現したい「いろんなものの2面性」を体現しているキャラクターだなと。

誰が誰をどう思っているとか、他人との距離感など、キャラクターたちのことがすごく丁寧に描かれているので、アニメーションにする際には原作に沿っていく感覚でした。

——後章では、凰蘭と大葉（CV：入野自由）がフォーカスされていきますね。

吉田：執筆していて、大葉が1番難しいキャラだったかもしれません。人間でありながら人間ではないという不思議な存在です。前章で描いてきた人間たちの輪の中で浮かないかどうか心配でした。

門出や凰蘭たちの日常の中に入りこんできた異分子であって、後半のムードを変えていきます。そういうキーになるキャラクターなので、どうやって馴染ませるかを考えていました。

ーー実際どうされたのでしょう？

吉田：他のみんなのリアクションですかね。異質な存在なんですけど、凰蘭たちは意外とすんなり受け入れるんですよ（笑）。大葉の顔がズレたりとかするとびっくりしますけど……。

門出や凰蘭たちが、大葉にするリアクションは、観客のみなさんのリアクションとも繋がっていくと思うので、そこでコントロールしていきました。

ーーシナリオやキャラクターのことなどは、浅野先生とコミュニケーションを取りながら制作を進めていったのですか？

吉田：浅野先生には、何度かシナリオ会議に参加していただきました。設定を整理してシンプルにしたいとか、後半のアニメオリジナルなラストなど相談させてもらいました。

最初に構成を作って、監督やスタッフの方々と意見を固めてから、先生に入っていただいて相談して、判断をしていく感じでしたね。

ーーやり取りを通して、浅野先生にどのような印象を抱きましたか？

吉田：すごくクレバーな方なんだろうなと。ご自身が描いた作品が映像化される際に、出てくる問題や処理が難しくなるであろうポイントをすごく理解してくださっていました。

ご自身の作品でありながら、「これを原作としてまた違ったアニメーションを作る」というスタンスと言いますか。映像化する時にはここが難しいよね、みたいな部分を客観視されていました。

いろんな視点でご自身の作品と向き合っていらっしゃるんだなと思いました。

日常をより丁寧に、愛おしく、大切に生きていく

ーー吉田さんの思う『デデデデ』という作品のテーマを教えて下さい。

吉田：この作品のテーマは、かなり中川ひろしのセリフに集約されていると思うんです。彼は、真っ当なことを言うだけではなく、その裏に優しさや思いやりが見え隠れして、素敵なキャラクターです。

世の中がどういう状況になったとしても、そこで生きるしかない人たちにとっては、今を大切に生きていくことしかできない。そこが、すごく実感として伝わってきました。

日々を丁寧に生きていく。終末だからって何かを破壊したり、無軌道になったりするのではなく、今まで続けて来た日常をより愛おしく、大切に思って生きていくっていうことを貫いている作品だと思います。

ーーもし、私達が生きる現実に終末が訪れたとしても、そうやって生きていくしかないですよね。

吉田：そうするしかない気がします。それに気づかせてくれる作品です。

ーー門出たちは、友達との繋がりや自分たちの生活を絶対的なものとして大切にしていきます。吉田さんの「絶対」はなんですか？

吉田：理性ですかね。状況を見たり、周りの人のことを考えたり。感情を優先するよりも、ちょっと引いてシチュエーションを見ることは生きていく上で必要なことなのかなと思います。

感情が1番難しい。人の感情って予測不可能で、他人の感情をコントロールすることは不可能に近い。でも、自分が理性的でいることはできます。

辛かったり、悲しかったり、いろんな状況が訪れても自分で自分をコントロールすることはできるはずなので、そこを大事にしていきたいなと思います。

ちょっと引いて、自分を客観視する。本作みたいな、世紀末だったらより理性的になることが大切なのかなと感じています。

ーー確かに、本作でも理性的な行動の有無や、各々の正義がお話の鍵になっていきます。最後に、後章の公開を楽しみにしているファンの方へメッセージをお願いします。

吉田：後章は前章と比較しても、状況が目まぐるしく変わっていきます。前章のラストに「人類終了」というワードが出てきました。物語は終末へとどんどんエスカレートしていきます。

でもその中で、門出と凰蘭の日常も続いていく。皆さんも一緒に、世界の終末と彼女たちの日常を体験していただけたらと思います。

[インタビュー/タイラ]

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』作品概要

あらすじ

3年前の8月31日。突如巨大な『母艦』が東京へ舞い降り、この世界は終わりを迎えるかにみえた──

その後、絶望は日常に溶け込み、大きな円盤が空に浮かぶ世界は今日も変わらず廻り続ける。

友情と初恋と終末と･･･ 2人の少女のディストピア青春日常譚!!

キャスト

小山門出：幾田りら
中川凰蘭 ：あの
栗原キホ：種﨑敦美
出元亜衣：島袋美由利
平間凛：大木咲絵子
竹本ふたば：和氣あず未
田井沼マコト：白石涼子
大葉圭太：入野自由
小比類巻健一：内山昂輝
渡良瀬：坂泰斗
中川ひろし：諏訪部順一
小山ノブオ：津田健次郎
イソベやん：杉田智和
デベ子：TARAKO
議長：竹中直人
尾城：沢城千春
須丸光：大西沙織
宝田：松田健一郎
三浦太郎：河西健吾
荻野：こばたけまさふみ

(C)浅野いにお／小学館／DeDeDeDe Committee

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