「こんなにかわいい子が家にいたらお家に帰りたくなる」という画づくりを意識──『ワンルーム、日当たり普通、天使つき。』リレーインタビュー 第6回:監督 大西健太
もどかしい距離感、じれったい感じを意識
――では、とわについてはいかがでしょうか?
大西:とわについては、外見、内面ともに天使であるということですね。内面に関しては他人を思いやる心があり、相手を受け入れられる器の大きさ、心の広さがあるという点で森太郎と共通しています。そのうえで、『よいこの地上大百科』をちゃんと読んできて、森太郎を通して地上のことも学ぼうとしている、とてもしっかりした子なんです。
ただ、天界と地上との差で少しずれた行動をしたり、たまに好奇心の旺盛さが出てしまったりするので、そういうところがかわいらしく見えればいいなと考えていました。あとは森太郎に対してやや心配性なところもそうですね。
――デザイン面ではどのような工夫があったのでしょうか?
大西:スタイルよく見せつつも、肩幅が広く見えないように上武さんに調整してもらいました。個人的にはたれ目で口が小さいほどとわっぽいなと考えていたのですが、口はやや大きいほうが表情の動きが出せて感情が出しやすいので、あまり小さくならないようにしています。
衣装に関しては、細身かつスタイルがいいというところを出したかったのと、全体的に柔らかい雰囲気がほしかったので、matoba先生に監修していただきながら、原作をもとにしてアニメ用に落とし込んでいきました。また、森太郎が頑張って買ってあげた服というのも意識しています。
――本当にとわの服装はいろいろなパターンを楽しめましたが、確かにあれは全部森太郎が買ってあげているんですよね(笑)。
大西:そうなんです。でも、とわちゃんのためだったら僕もバイトを頑張れますよ(笑)。森太郎はそのために働いているわけではありませんが、バイト代を切り崩して自分は着回せばいいみたいな感覚ではあると思っています。
――そんな森太郎ととわの距離感を描くうえでは、どのようなことを大事にされましたか?
大西:二人の関係値は難しい部分もありました。恋人というわけではありませんし、かといってお互いに遠い存在でもない。それを踏まえたうえでのワンルーム生活である、という距離感は一番大事にしたところです。
お話が盛り上がっていく中で当然二人の関係も進んでいきます。仲良くなり、心の距離と物理的な距離が近くなっていく。かといって近すぎるわけでもなく、遠いわけでもない……そのもどかしい距離感、じれったい感じを意識しました。外側から見ている我々からすると、「いけいけ!」という感じですが(笑)、その絶妙な距離感は絶対に大事にしたいな、と。
matoba先生は前作(『ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。』)も含めて距離感というものを丁寧に描かれている方なので、先生の作品をアニメ化するにあたって、過去の作品をすべて読ませていただき、先生が大事にしているキャラクターとキャラクターの距離感を把握して、大切に描いていきたいと考えました。
――もどかしい距離感にキュンキュンしました。
大西:恋人ではないけれど、一緒に過ごす中でお互いに安心感や安らぎを抱く瞬間もあると思います。それでも初々しさは必ずお届けするようにしました。
――そういった距離感も含めて、物語を作っていく中でシリーズ構成・脚本のヤスカワショウゴさんとはどのようなご相談をされたのでしょうか?
大西:基本的に僕のほうから構成で「こうしてほしい」というのはなかったですね。もう完璧でした。各話の打ち合わせの前に原作のどこまでやるかを決める会議があるのですが、その時点で先生からも好評をいただくくらいうまくまとめてくださったんです。ただ、第12話のラストだけは追加で森太郎ととわの後日談的なエピソードを入れてほしいとお願いしました。
――どうして後日談的なエピソードを入れてほしいと?
大西:二人の距離感で変わったことと変わらないことを見せたかったんです。森太郎がとわに出会って変わったこと、とわが森太郎と出会って変わったことってたくさんあると思いますが、当然変わらないこともあります。
第12話のラストと第1話が繋がり、対比できるような形にしたいと思って、最初は東京スカイツリーのところで終わる予定だったのを、第12話の本読みでヤスカワさんに急きょ変更していただいたんです。先生もシナリオの変更を快く受け入れてくださって、本当にお二人のおかげで自分がやりたかったことができました。
――そうだったんですね。そもそも原作でひすいの別邸に行くのは、東京スカイツリーに行ったあとでしたよね。
大西:それは、最終話なので森太郎ととわの日常で終わらせたかったのと、ひすいと森太郎が打ち解けるのも第11話にまとめておきたかったという理由があります。原作では森太郎がひすいと温泉で遭遇するのは合宿の最後でした。
ですが、ひすいのエピソードを先延ばしにせず合宿の流れに組み込んで、第12話では悪魔召喚や花火で森太郎とヒロインたちが盛り上がるという流れから、森太郎ととわの話に繋げるようにしたんです。この辺の流れは僕の提案というよりは、ヤスカワさんや先生と相談してみんなで決めたことですね。
――「変わったこと、変わらないこと」を第12話で見せるために、どのような仕込みがあったのでしょうか?
大西:第1話と第12話の対比構造があることを示唆するために、最初の布石として第6話がありました。第6話Aパートではとわが森太郎のことを、Bパートでは森太郎がとわのことをモノローグで「優しい」と言うんです。そして、変化するものとして春から夏への季節の流れを描き、映像の雰囲気も変化させました。第12話の東京スカイツリーでは、マグカップを買った第1話に対してスノードームを買うという対比があります。これは原作でも描かれているシーンなのですが、それをヒントに第12話と第1話を繋げたいと思うようになり、「変わったこと、変わらないこと」がより明確になるよう、第12話が第1話のリフレインになるような見せ方にしたんです。
例えば、二人の関係値を強調するために画づくりとして第1話と同じアングルを持ってきて、とわの仕草、セリフ、森太郎のリアクションの変化などで、「変わったこと、変わらないこと」を描くようにしました。
――過ぎていく時間の中で、変わるものがあり、変わらないものがあると。
大西:そうですね。ほかには第1話のアバンで羽根が舞っていて1枚だけが森太郎の部屋に着地するシーンがあるので、それと対になるように第12話ではキャラクターを象徴する6枚の羽根が舞って、重なりあって、最後には2枚がアップになるという流れにしています。
一番大きな対比はCパートですね。第1話だと森太郎は体調を崩してとぼとぼ歩きながら帰宅するのですが、第12話では店長に明るく挨拶をして小走りで帰って行くと、自宅にはとわが待っている。画としてはとわで締めくくられていますが、基本は森太郎の目線で第1話と対比し、「変わったこと、変わらないこと」を描きました。
――お話を伺って第1話と第12話を改めて見比べてみたくなりました。
大西:原作にない部分だったので、matoba先生がOKを出してくださってとてもありがたかったですね。Cパートについては、原作に負けたくないとずっと現場で言っていたんです(笑)。アニメと原作はいい意味での戦いがあるというか、決して原作をおろそかにするとか我を出したいというわけではなく、寄り添いつつもアニメならではのよさを出していくのが大事だと思うんです。アニメのとわもかわいいな、本当にいたらいいなと思っていただきたいという気持ちでやらせていただきました。
――ありがとうございます。では最後に、ここまで『天使つき。』を応援してくださった方へひと言いただけますでしょうか。
大西:最後まで見てくださり、本当にありがとうございます。アニメとはしてはいったん終わってしまいますが、原作も連載中ですし、森太郎たちの温かい日常はまだまだ続いています。単行本も7巻というすぐに追いつける巻数なので、原作のほうもぜひ楽しんでください。僕自身、アニメでとわたちにまた会いたいと思っていますので、皆さんも原作を読みながら、またとわに会えるようアニメのほうも応援していただけたら嬉しいです。
TVアニメ『ワンルーム、日当たり普通、天使つき。』作品情報
放送・配情報
<放送>
4月6日(土)より放送開始!
TOKYO MX:4月6日より 毎週土曜日22:00~
関西テレビ放送:4月7日より 毎週日曜日26:29~
テレビ愛知:4月9日より 毎週火曜日25:30~
BS日テレ:4月6日より 毎週土曜日22:30~
AT-X:4月7日より 毎週日曜日21:30~
※【リピート放送】毎週水曜日29:00~/毎週日曜日6:30~
北海道テレビ:4月10日より 毎週水曜日25:55~
新潟テレビ21:4月15日より 毎週月曜日25:15~
秋田朝日放送:4月15日より 毎週月曜日25:20~
テレビ愛媛:4月15日より 毎週月曜日25:30~ ※初回のみ25:45〜の放送となります。
長崎文化放送:4月24日より 毎週水曜日25:18~
YTS山形テレビ:4月25日より 毎週木曜日25:40~
北陸朝日放送:5月11日より 毎週土曜日26:30~
東日本放送:5月17日より 毎週金曜日26:25〜
<配信>
■ABEMAにて3月30日(土)より毎週土曜日22:30~
地上波1週間先行・単独最速配信!
■dアニメストア:4月6日(土)22:00~配信開始
■4月8日(月)22:00~順次配信開始
【見放題サイト】
マンガUP!/Prime Video/ニコニコチャンネル/ニコニコ生放送/バンダイチャンネル/Hulu/FOD/DMM TV/J:COM STREAM/auスマートパスプレミアム/milplus/TELASA/U-NEXT/アニメ放題/Lemino/ひかりTV/SPOOX/TVer
【都度課金サイト】
Google TV/YouTube/クランクイン!ビデオ/Happy!動画
※放送・配信日時は変更になる場合があります。
イントロダクション
高校1年生になり、一人暮らしを始めた徳光森太郎。
ある日、ベランダを覗くと清楚で可憐な女の子「とわ」が眠っていた。
どこか天然だけど、間違いなくいい子な彼女。
その正体は――「天使」だった。
行くあてもないとわと始める、
とっても甘くて、とってもピュアなワンルーム生活。
森太郎は、無垢な天使と少しずつ心を通わせていくけれど……。
さらなるワケあり少女が次々と現れて!?
天使と高1男子が織りなす癒やされ同居ラブコメ、開幕!
スタッフ
原作:matoba(掲載 月刊「少年ガンガン」スクウェア・エニックス刊)
監督:大西健太(オクルトノボル)
シリーズ構成・脚本:ヤスカワショウゴ
キャラクターデザイン:上武優也
色彩設計:吉田隼人
美術設定:海津利子(スタジオちゅーりっぷ)
美術監督:根岸大輔(スタジオちゅーりっぷ)
撮影監督:青木睦希(旭プロダクション)
編集:本田優規(旭プロダクション)
3Dディレクター:中島 豊(旭プロダクション)
音楽:滝澤俊輔(TRYTONELABO)
音楽制作:日本コロムビア
音響監督:中谷希美
音響制作:ブシロードムーブ
アニメーション制作:オクルトノボル
オープニングテーマ「君色のキセキ」/小倉 唯
エンディングテーマ「Sunny Canvas」/サンドリオン
キャスト
徳光森太郎:梅田修一朗
とわ:遠野ひかる
堤 つむぎ:集貝はな
和泉のえる:大西沙織
リリーシュカ:小倉 唯
蔓深ひすい:高尾奏音
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原作情報
原作コミックス「ワンルーム、日当たり普通、天使つき。」
著:matoba
(ガンガンコミックス/スクウェア・エニックス刊)
1~6巻 好評発売中!
最新7巻は4月12日(金)発売!