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神谷浩史(薬売り役)が解き明かす『劇場版モノノ怪』の真と理【インタビュー】

『劇場版モノノ怪 唐傘』神谷浩史さんが紐解く、劇場版・薬売りの真(まこと)と情念渦巻く大奥の理(ことわり)【インタビュー】

黒沢さんと悠木さんは「引き算」の芝居ができる新世代声優

ーーアサ役の黒沢ともよさんとカメ役の悠木碧さんのお芝居の印象は?

神谷:ふたりとも、新世代の芝居をするんですよ。すごく上手で、こんな言い方をすると安っぽくなっちゃうんですけど、生っぽい芝居なんです。

アニメは基本的にカリカチュアライズ(caricaturize=誇張して風刺的に表現)されているじゃないですか。記号化して、純化していったものに声をあてていくので、その記号の補助として過剰な芝居をつけていくことによって、アニメが成立している側面があると思うんです。でも、「泣いている」「笑っている」「怒っている」という喜怒哀楽がとても複雑に表現できるように絵のクオリティがどんどん上がっていますから。「どう泣いているのか」を説明する必要がある場合、「泣く」芝居を幅広く要求されたり、「怒る」芝居も過剰に表現することが、声優の芝居にはあるんです。

でも、絵のほうがそれを十二分に説明してくれているなら、「泣いている音」を少し足すだけで、そのキャラやシーンが成立するので、極端な「引き算」の芝居になります。これまでの声優の芝居が「足し算」で作られていたとしたら、最近は「引き算」でも成立するようになってきているんです。それは年齢を重ねてきたベテランの人がたどり着く境地ですが、ふたりは若い時からできているので、新世代なんですよね。そのふたりが今回メインにきているので、「本当にうまい人が来ちゃったな」と。役の魅力を加味したうえで、本当に適切なキャスティングだと思っています。

ーーそんなおふたりに、歌山役としてベテランの小山茉美さんが絡んできて。

神谷:僕は茉美姉さんが大好きなんです(笑)。子供の頃に『Dr.スランプ アラレちゃん』や『魔法のプリンセス ミンキーモモ』、『あんみつ姫』などの主人公で、かわいらしいキャラをやっていたかと思えば、『機動戦士ガンダム』のキシリアのような怖いお姉さんや、『AKIRA』のケイのように信念と若々しさを兼ね備えたアンバランスな女性も憑依して演じられるタイプの俳優さんなので、今回の『モノノ怪』の中では無視できない存在感を激烈に放っているわけです。たぶん小山茉美以上に、歌山を上手に演じられる人はいないだろうなと思っています。まさにベストキャストです。そんなことを言ったら怒られそうですけど(笑)。

ーー坂下役の細見大輔さんと一緒の収録が多かったそうですが、坂下というキャラについての印象は?

神谷:おもしろい役だと思います。感情がそのまま表情や声に反映される役だったので、「表裏がない、いい役だな」と思ったし、薬売りとは正反対なので、見ていて気持ちがいいですね。一緒にアフレコしていても楽しかったです。

ーー坂下は薬売りと掛け合うシーンが多かったように思います。

神谷:薬売りは、基本的にあまりしゃべらないキャラなので、今作でもそれほどセリフ数は多くないんですけど、坂下とは会話を交わしていて。「薬売りは、こんなふうに会話するんだな」というヒントになりました。感情豊かな坂下と話すにあたって、からかいやすいところもあったし、「こういう人の扱い方を心得ているんだな」ということもわかって。ただクールに対応するだけでなく、ちょっとからかってみたり、無視してみたり、動揺させてみたり、対人関係の駆け引きが垣間見えるだけで、薬売りのキャラがより際立つので、坂下との会話は僕にとって重要な要素でした。

ーー薬売りは、最初は物売りとして大奥にやってきました。

神谷:「儲け話の匂いがしたもので」と言っていましたが、それが本当なのか、ウソなのかというところも含めて、坂下に少し警戒されながらも、ぐいぐい入っていく関係性も面白いんですよね。様子見しながらではなく、俗な感じで入っていくところに劇場版の薬売りの一端が見えた気がして、僕にとって印象的なシーンのひとつです。

(C)ツインエンジン
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