アネットじゃなくてもセンセーに惚れる気持ちがわかる!? メロスの喜怒哀楽を「キ」の一音で表現する難しさは? 夏アニメ『異世界失格』メロス役・木野日菜さんが活躍を見せた第4話を振り返る【インタビュー連載第4回】
「とある文豪」が異世界に転移してモンスターを倒す……わけでもなく、ダメな作家のまま、しかし確実に異世界に影響を与えていく異色作『異世界失格』(野田 宏さん原作、若松卓宏さん作画。小学館『やわらかスピリッツ』連載中)のアニメが7月から好評放送中!
第4話では、街を支配しようする転移者・スズキのギフテッド「絶対服従(ペット)」によって、支配されてしまうアネットとタマ。スズキが使役する魔物が街を襲う窮地に現れたセンセーは、第3話でアネットが着せてくれた鎧と、自身の持つ毒で魔物たちの攻撃をはねのけます。
そこでスズキは切り札としてアネットを仕向けようとしますが、その時、「君は籠の中の鳥ではないはずだ。そうだろう? アネット君」というセンセーからの問いかけが。アネットは自ら支配を解くためにナイフを自分の太ももに刺し、正気を取り戻すのでした。窮地に追いやられたスズキは自害を図ろうとしますが、「自殺は、いけない」と止めるセンセー。そこでスズキは自分の過去を語り始めます。
クラスメイトからは「ポチ」と呼ばれてイジメられ、街で因縁を付けられても対抗する勇気もなかったところに、センセー同様、トラックに轢かれて異世界へ。勇者としてギフテッドを与えられるも、結局自分は小物のままだと自重するスズキ。そんな彼の話を聞いて、「君をモデルにした小説が、ついに完成した ――題して『勇者失格』……いや――『異世界失格』」と言うとセンセーが書いた本が輝き出します。
しかし、「傑作とは呼べない」と投げ捨てた瞬間、本のページが光り、魔法陣が出現。センセーの持つギフテッド「執筆(ストーリーテラー)」が発動し、スズキは元の世界へ送り返されます。センセーの異世界での役割を知ったイーシャは、旅を続けるセンセーとアネットを見送るのでした。
アニメイトタイムズでは、声優陣のインタビュー連載を実施中。第4回は、アネットの使い魔であり、センセーたち一行のマスコット的な存在のメロス役を演じる木野日菜さんです。
作品の印象や放送されたばかりの第4話の振り返りと今後の見どころ、更に次回登場するニア役の小市眞琴さんへのオススメ作品の紹介もしていただきました。
センセーの第一印象は「こんな主人公、見たことない!?」
――原作を読んだり、演じられて感じた作品の印象と魅力をお聞かせください。
メロス役 木野日菜さん(以下、木野):原作を読んだ時に最初に思ったのは、「こんな主人公、見たことない!?」と。主人公のセンセーは基本的に頑張らないし、戦わないし、自分から眠剤を飲んでいるので常に猛毒状態で(笑)。そんなセンセーにどんどん引き込まれていきました。
――確かに異世界ものの主人公としては珍しく、隙あらば死のうとしていますね。
木野:ちょっと目を離すと眠剤をボリボリ食べていたり、強い敵の前に自分から進んでいったり。戦う能力もないのに(笑)。
――あとアネットはたくさんの転移者をアテンドしてきましたが、そのうちやる気をなくしてしまうほど、ダメな転移者が多いですよね。
木野:その設定も他の「異世界もの」にはないもので。一般的には異世界に召喚されてきた人は得た能力をその世界の人のために使うのに、この作品では転移者として「ギフテッド」という能力を得た人たちが私利私欲のために悪用して。
むしろ厄介者として見られているのは、「異世界もの」ではここまで想像もしたことがなかったので衝撃を受けました。よくよく考えてみると、異世界に転移する人の多くは、元の世界でうまくいかなかった人だから、異世界では自分が思うように生きようと考えるのは自然かもしれませんね。
――演じるメロスの印象とご自身と似ている点や魅力を感じる点をお聞かせください。
木野:メロスはアネットの使い魔で、すごくセンセーになついていて。愛情表現としてセンセーの頭をよくかじっていますが、ちょっと強すぎるのか、よくセンセーは血を流しています(笑)。でもセンセーはまったく気にしません。だって死のうとしているから(笑)。センセーとアネットたちのコミカルなやり取りに、メロスも加わることで癒し効果も感じてもらえたらいいなと。メロスと似ている点は……。
――むしろ似ていたら……。
木野:何とかひねり出しました(笑)。それは単純なところです。センセーにメロスという名前を付けてもらって、「キ~ッ」と喜んだり、落ち込むことがあったらどっぷり落ち込んだりしたり、センセーが変なことを言ったら思い切りドン引いたりして(笑)。その時の気持ちが表情に現れやすいところは私もそうで、嬉しい時は「嬉しい!」とすごく喜ぶし、悲しい時にはすごく悲しくなるので、そこは似ているかなと思います。
――主人公はセンセーと呼ばれていますが、アネットの使い魔に「メロス」と名付けたところで既にヒントになっているような?
木野:そうですよね~!(笑) まあ、そこはファンタジーなので気にしないでください。
――あとメロスはよくセンセーをかじっていますが、毒は回らないんですよね。
木野:私もそれが不思議で。メロスはコウモリみたいなビジュアルじゃないですか。コウモリはファンタジー作品では悪魔側だったり、闇属性を持っていることが多いので、もしかしたらメロスも毒性を持っているからセンセーの毒を中和できてしまうのかも?なんて考えたりしました。
メロスの喜怒哀楽の感情を「キ」の一音で表現する難しさ。不快に聞こえないのか心配も!?
――演じる際に意識された点やディレクションで印象的だったものをお聞かせください。
木野:台本を見ると、メロスのセリフはほぼ全部「キーッ」と書かれています。表情が豊かなこともあって、違う言葉も話したくなるんですけど、「キ」という文字だけを使って演じてほしいというディレクションをいただいたので、「キ」の言い方にバリエーションを付けて演じています。ただ、今後は、これまでに見せていない男の子らしいメロスが見られるエピソードがあって。その時のディレクションはものすごく変わっていました。まだ詳しくは言えないけど(笑)。とても楽しかったです。
――アネット役の大久保瑠美さんが「もっと汚く」というディレクションを受けたとおっしゃっていたので、皆さん特殊なディレクションを受けているのかなと。
木野:私はそのシーンくらいです(笑)。でもただただかわいいだけじゃなくて、違った一面を見せることになるので、メロスの魅力が広がる気がします。
――でも「キ」だけで、喜怒哀楽を表現するのは難しそうですね。
木野:シーンごとに感じたまま演じて、ディレクションをもらったらその通りに修正していました。
――もしかしたらそのうち、メロスの「キ」だけを集めた動画が出回ったりして。
木野:そうしたら違いがわかってしまうかも(笑)。だけどこの作品で私は何回、「キ」って言ったのかな? 今度台本で数えてみようかな?(笑) あとメロスはセンセーたちに危険を知らせるためによく叫んでいますが、最初はどのくらい叫んだらいいのかわからなくて。「キ」って音は耳に直接響くので、人によっては不快な音に聞こえるかもしれないし。とりあえず全力でやってみたので、オンエアを見て、大丈夫だったのか確かめるつもりです(笑)。