夏アニメ「先輩はおとこのこ」連載：シリーズ構成・冨田頼子さん｜第10話の頭の方のりゅーじと咲の会話。あれこそ差別や偏見をなくす一番の近道だと思っていて

「自分が納得できないことはしない方がいいと思う」と悩んでいる人に伝えたい

――まことは、他の人とは違う、普通じゃないかもしれない自分の感覚に悩む少年です。冨田さんは“普通”とはどういうことを指すと思いますか？

冨田：どういった場面で使われるかによって意味が変わってくるかと思うのですが、この場合は“多数派”のことで、世の中全体を見たときにどちらかというと多くの方が選択している事柄や物事、習慣、好みといったものを指すのかなと思いました。“常識”も含まれますでしょうか。ただその多数派って誰が決めたのか、本当に多数派なのか、本当だとしてもどうして合わせなきゃいけないのかといったところで衝突が生じているのかなと思います。

　
わたしが学生の頃は“個性を出せ”とか“個性的になれ”とか“自分らしさを見つけなさい”などと言われることの方が多かったので、どちらかというと“普通”でいることの方がダメとされていて、“普通でいたいのにどうして普通でいさせてくれないんだ”と悩む人もいたように思います。時代によって言うことが変わる教育ってほんと迷惑ですよね。

――なるほど……。

冨田：また今の場合は、誰に決められたわけでもないのに、周りに合わせなくてはいけないと思い込んでいる人も多いように思います。他人の目を気にしてしまうのも分かるのですが、そういう思い込みから苦痛を自ら抱え込んでいる人もいるのかなと。

わたしは親に言われようが、先生に言われようが納得できないことはあまりやってこなかったので、“普通”でいることも、個性を出すこともあまり悩まずに過ごしてきたほうでした。

なので、どの時代でも悩んでいる人に伝えたいなと思うのは、「自分が納得できないことはしない方がいいと思う」です。自分が納得できれば、周りに合わせて“普通”に生きていくのもいいと思いますし、納得できなければ誰になんと言われようと、どんな目で見られようと自分の生き方を貫いたほうがいいんじゃないかなと思います。

　
某論破王さんみたいな言い方になってしまいますが、何かを押し付けられたら「それって誰が決めたんですか？」「どうしてあなたに決められなきゃいけないんですか？」と、抗っていいんじゃないかなと思います（とはいえ誰かに危害を加えたり迷惑をかけたり違法なことをするのはダメですけどね）。

――今後もアニメを楽しみにしている読者のみなさまに、見どころなどを含めたメッセージをお願いします。

冨田：アニメをご覧いただいて、ありがとうございます。ぽむ先生が紡がれた素敵なストーリーに、まことに共感してる方、りゅーじに共感してる方、咲に共感してる方、いろんな方がいらっしゃると思います。

わたしも原作を読んでいて、ぽむ先生の書かれるセリフの中に、わたし自身も思ったり感じたりしていたことが書かれてあって、「もしかしたらぽむ先生も同じようなことを経験したり感じたりしたことがあるのかも……！」と勝手ながら親近感を覚えておりました。そういう“経験”などから書かれているセリフは特に大切にさせてもらっています。きっとこのあとの話数でもみなさんに響くものがあるはずですので、引き続きご覧いただきたいです。

　
また、この作品の中でわたしが個人的に一番みなさんに伝わってほしいと思っていることが第10話の冒頭の方のりゅーじと咲の会話のなかにあります。このあとのオンエアなので具体的にはどれと言えないのですが、あれこそ差別や偏見をなくす一番の近道だとわたしも思っていて、ぽむ先生には「よくぞ書いてくださいました！」と感謝するとともに、この作品を通していろんな方に伝わるといいなと思っています。ぜひご注目くださいませ。

いろんな観点から見ることができるこの作品を、どうかこれからも大切にしていただきたいです。よければ原作もぜひお手に取ってみてください。ありがとうございました。