映画
『がんばっていきまっしょい』雨宮天&伊藤美来インタビュー

繊細なアプローチで表現した、思春期の揺れ動く感情――『がんばっていきまっしょい』村上悦子役・雨宮天さん&佐伯姫役・伊藤美来さんインタビュー|ボート部の5人が「ここに存在している」とハッキリ思えた

挫折を味わう悦子には多くの人が共感できるはず

ーーご自身が演じるキャラクターの印象と共感できる点をお聞かせください。

雨宮:悦ネエは、小中学校を経て、高校に入ったら自分が特別な存在ではないことを知ってしまい、諦めグセがついてしまっています。そんな悦ネエには共感しまくり……というか、もはや私なんじゃないかと思うくらい(笑)。

小学生の頃は「足が速い」や「勉強ができる」というだけで、「自分は世界一なんだ」と万能感や特別感を感じたものですが、高校生になると、周りにはもっと上の人が大勢いて、自信を打ち砕かれるんですよね。

悦ネエも高校に合格した瞬間は「私って天才かも!?」と自信を深めるけど、実はそこがスタートで、自分の実力を思い知らされるタイミングがやってきます。悦ネエは自分に対して諦めたくない気持ちがありつつ、諦めた方が傷つかずに済むし、努力や苦労をしなくていいから、諦めたように振る舞っている。

私も当時は同じような感じで、授業もダルいし、眠いし……。それは多くの人が人生で最初にぶつかる壁で、誰しも抱くような感情だと思います。もちろん何も感じずに生きていく人もいると思いますが、私や悦ネエが少数派ではないはずです。

ーー続いて、伊藤さんから姫の印象を伺えますか?

伊藤:姫は優しくて、明るくて、誰とでもコミュニケーションが取れて、誰もが好きになるような女の子です。私自身は姫ほどコミュ力が高いかと言えば、そうではない気がします(笑)。どちらかと言えば、似ているというよりも憧れる部分が多いですね。

「悦ネエが幸せでいてくれたら」「頑張っている姿を隣で見ていたい」という気持ちがあって、友達思いで自分を前に出さない。ある種の嫁ムーブみたいな(笑)。無償の愛みたいなところが魅力的ですし、だからこそボート部のみんなや悦ネエが前を向けるんじゃないかなと。ボート部の中で、姫の存在はかなり大きいと思います。

ーー高校二年生なのに、あれだけ人のことを考えられるのはすごいですよね。

伊藤:すごいと思います! 

雨宮:言われてみれば、まだ高校二年生なんだよね。

伊藤:すっかりお母さんみたいで、「みんな、よかったよ!やったね~!」って(笑)。もちろん自分自身の嬉しい気持ちもあるけど、それよりも悦ネエと一緒にボート部で頑張れていることが嬉しいんだと思います。そういう意味では、外に愛情が向いているタイプですね。

ーー収録の際に意識した点を教えてください。

雨宮:悦ネエを演じるにあたっては、いわゆるアニメ的なアプローチを極力減らしたいと思って。喜怒哀楽を立てて、わかりやすく伝えるというよりは、シーンごとに「こんな時、自分だったらどうなるかな?」と考えながら、お芝居を突き詰めていきました。お芝居の中で音に頼ったり、アニメ的な分かりやすいアプローチに寄ったりすると、悦ネエから外れるし、作品のイメージとも違う気がしたんです。

悦ネエは「うん」という相槌のセリフが多く、大げさにニュアンスを付けてしまえばわかりやすく伝わるかもしれませんが、今回はそうではなく、例えるなら出汁やスパイスで味付けに微妙な変化を加えるような。「うん」のリテイクは自分から申し出て、何度もやらせていただきました。

普段とは異なるアプローチだったので、自分の中で準備し過ぎてもいけないというのは、難しかったですね。相手に合わせて自分の出方を変えていかないと、悦ネエがただセリフを喋っているように聞こえてしまうので、自分の中にある悦ネエ像や演技プランを固めすぎない、その塩梅が難しかったです。小さな針に糸を通していくような細かい作業を続けていたイメージで。難航したわけでもなく、叫ぶようなセリフもそれほどなかったのに、収録が終わった時にはヘトヘトで……ずっと集中していたからか、疲労感がものすごかったです。

伊藤:姫を演じるにあたって、絵がある状態でアフレコできたので、実写に近い感じを意識しながら収録できました。加えて、姫には「あはは」という口グセがあるんですけど、色々な「あはは」をやらせていただいたんです(笑)。みんなと話している時の可愛い「あはは」、少し引いている「あはは」や、困っている時の「あはは」もあって。映画を観るときに、姫の色々な「あはは」に注目していただきたいです。

あとボート部では「コックス※1」を担当しているので、掛け声も頑張りました。最初の頃の上手くリズムが揃っていない「キャッチ・ロー」と、後半の「キャッチ・ロー」「イージーオール」はまったく違うものにしたくて。二宮くん(二宮隼人/CV:江口拓也)から「もっと声出して!」と言われるシーンもあって、すごく頑張りました。

実は録り終わった後も、追加でコックスの掛け声のセリフをやらせていただいたんです。「頑張れ!」「あとちょっと!」といった励ますセリフや「一本」「二本」「三本」をずっと言い続ける収録もしました。そういった姫の掛け声にも注目してみてください。


※1:ボートの後方位置にいて、掛け声でメンバーがオールで漕ぐリズムを与えたり、指示を与える指令塔

夏祭りを境に変化する、悦子と姫の想い

ーーこの映画では高校二年生の多感な時期を描いていますが、特に悦子は感情の波の変化が大きい印象がありました。

雨宮:1回上がったらそのままキープするのではなく、どこかで一番下まで落ち込んだりして、そしてまた上がるというサイクルを繰り返すのがリアルですよね。

伊藤:それこそ夏祭りのシーンは「悦ネエ、気にしすぎ」って(笑)。二宮くんへの感情は、すごく繊細なものだと思いましたね。私たちから見ると、ただ部員同士で話しているだけなのに、思春期ということもあり、ちょっとしたことで落ち込んでしまうとか。

雨宮:恋が始まったのか、始まってないのか……みたいな(笑)。

伊藤:悦ネエは自分の気持ちを素直に表すシーンが少ないので、表情の変化や短いセリフで感情を出す必要があって、演じるのは大変そうだなと。

ーー一方の姫も、悦子のちょっとした変化にも気付きながら、表に出さずに内面で心配しているような。

伊藤:そうですね。大体悦ネエを見ている時なんですけど、姫の表情がワンカットだけ映されることも多かった気がします。そこで「すべて察しているんだな」「今、色々と考えているんだな」と分かるようになっていて、私自身もその表情に助けられていたんです。悦ネエのことが大好きだし、友達としても大切に想っているけど、近寄り過ぎず、嫌われない距離感を探っている感じですね。

ーー悦ネエと一緒に帰るのを断って、梨衣奈のバイト先に行く場面は、姫が自発的に行動を起こすシーンでした。

伊藤:悦ネエにひとりになる時間が必要だとわかったうえでの行動だったと思います。「リー(梨衣奈)とふたりで話したい」「あの喫茶店に行ってみたい」という気持ちもあったと思いますが、やはり相当大人ですね。

雨宮:本当に大人。悦ネエが何を思っているのかを側で感じたうえで、一緒にショックを受けたり、傷ついたり……。それでいて踏み込みすぎず、ただ自然と側に居るのがすごいと思います。私なら「もうそろそろ仲直りしたら」って言っちゃうかも。巻き込まれたくないとか、自分が傷つきたくないからではなく、常に悦ネエの為を思って、寄り添ってくれるから「姫~!」と思います(笑)。

伊藤:(笑)。姫は良い女だよね。どんな女性に成長していくのか、これからが楽しみ。

雨宮:個人的にも姫がすごく好きなんです。ちゃんと周りのことを見ているし、いつも優しくて、誰からも好かれる性格だけど、媚びもウソも一切なくて。もし叶うのなら、私と結婚してほしい(笑)。

伊藤:良いお嫁さんになるんじゃないかな?(笑)

ーーボート部の梨衣奈、妙子、真優美の印象もお聞かせください。

伊藤:(高橋)李依ちゃんは真っすぐさや純粋さなど、リー(高橋梨衣奈)と近いかもしれません。

雨宮:確かに。自分の気持ちに真っすぐで、一度やると決めたら自分から行動するところとか。あと名前も似てる(笑)。これは私の解釈ですが、悦ネエと姫とリーはボート部の中でも生っぽい系なので、ある程度本人に近くないと演じにくいキャラかなと思っています。一方のダッコ(兵頭妙子)とイモッチ(井本真優美)はアニメっぽいキャラなので、その対照的なところも面白いですよね。監督によると、ボート部の女子5人は声質だけでなく、キャスト本人の普段の喋り方も調べて決められたそうで、それぞれに通じるものがあるのかなと思います。

伊藤:そうなんだ。そこまで拘って選んでくださったと知って、今とても感動しています。ダッコとイモッチは、この二人の関係性が深いし、掛け合いも多くて。悦ネエと姫に近い関係性のふたりなので、わちゃわちゃしているだけで面白いんですよね。

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