小鞠ちゃんは、いい恋をしたんじゃないかなって思います――『負けヒロインが多すぎる!』連載 第7回:寺澤百花さん(小鞠知花 役)インタビュー
負けて輝け少女たち! マケインたちのはちゃめちゃ敗走系青春ストーリー TVアニメ『負けヒロインが多すぎる!』。
ツワブキ祭がスタートし、文芸部の展示も大成功! 最初は一人で抱え込んでしまった小鞠も、頼れる仲間がいたと確認できたはずだったのだが……。第11話では、再び周りを頼らず、一人で部長会という試練を乗り越えようとしていた。温水とすれ違ってしまう場面もあったが、いろいろありつつも、最終的に温水が部長となり、賑やかになった文芸部が、小鞠の新たな居場所となった。
感動が続いた小鞠にスポットがあたった、第8話から第11話を、小鞠知花役の寺澤百花さんにたっぷり語ってもらった。
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声優さんってすごい!と思うくらい、素敵な演技でした
――TVアニメ『負けヒロインが多すぎる!』、すごく盛り上がっていますね!
寺澤百花さん(以下、寺澤):反応は凄まじいですよね。放送開始から、作品公式Xアカウントも毎話ごとにフォロワーが増えている感じで、すごく注目されている作品なんだなと、嬉しくなりました。小鞠ちゃんのグッズが完売したという話も聞いたことがあるので、そういう反応も嬉しかったですし、今は、小鞠にスポットが当たるお話が放送中なので、自分のアカウントで公式アカウントの引用ポストをしたら、自分史上最多くらいのコメントがあったりもしたんです。第11話の反響も楽しみです。
――特に第11話は涙なしでは見られないですから。
寺澤:小鞠ちゃんが成長するエピソードなので、たくさんの人に見守っていただけたら私も嬉しいです。小鞠ちゃんのことを4話かけてしっかり描いていただいているので、小鞠ちゃんの魅力をもっと知ってもらいたいです。
――その話は、このあとたっぷり聞かせていただきますが、まずは第7話までで、印象に残っているシーンはありますか?
寺澤:檸檬ちゃんと温水くんが夜の神社で話す第7話のシーンは、アフレコを現場で見ていたんですけど、それが忘れられなくて。檸檬ちゃんが泣きながら、自分の罪悪感を、懺悔するように温水くんに話すんですけど、テストから若山(詩音)さんは泣きながら演じられていたんです。
このままこれが採用されても良いんじゃないかと思うほど素晴らしい演技だったんですけど、本番では、テストを上回るものを出していたので、本当にすごいなと思いました。本人にも「本当に良かった」と伝えたくらい印象に残っています。檸檬ちゃんと気持ちを完全にリンクして話されていたので、声優の私が言うのもなんですけど、声優さんってすごい!と思うくらい、素敵な演技でした。
――アフレコスタジオで実際に聴いていると、相当すごいのでしょうね。
寺澤:鳥肌が立っていました。でも、アニメで観たときはさらに感動しました。若山さんの演技には、すごいなと思わされることが多いので、尊敬しています。
――他のシーンはいかがですか?
寺澤:やっぱり、八奈見ちゃんの「浮気だよ!」ですね(第5話)。あそこは本当に大好きで。実は私、Bパートは出ていなくて収録を生では見られなかったんです。でも、本番後に音声だけ聞かせていただいたら、ものすごく面白くて(笑)。だから公式アカウントに投稿されている切り抜き動画を元気がないときに見ています。よくあんな声が出るなと思いました。
――その使い方は正しいと思います(笑)。全体的にですが、絵はもちろん、演出のクオリティも高い作品ですよね。
寺澤:アフレコの時点で、これが映像になったら面白いだろうなと思っていたんですけど、毎話、その期待値を上回るんですよね。出演している私自身が視聴者として楽しめているので、本当にプロのクリエイターの方々はすごいと思います。
――ではさっそく第8話「おこまりでしたらコンサルに」から振り返っていきましょう。
寺澤:タイトルが小鞠ちゃん推しで面白いなと思いました。ただ、第8話から第10話まで通して、いい意味で言うと、小鞠はすごく頑張り屋さんだなと思いました。でも裏を返せば一人で抱え込みすぎているのが随所に出ているんですよね…。
小鞠ちゃん自身はすごく不器用なので、自分のキャパをわかっていない部分があるし、明らかに一人でできないことを、一人でやろうとしているのが、見ている側からしても心配だし、何でそんなに一人で抱え込むんだろうっていうのが、特に8話と9話では多いと思いました。
その理由は、第11話ではっきりと明かされるわけですけど、周りが心配になるような感じでしたよね。不安、プレッシャーに押しつぶされている小鞠ちゃんを演じていたので、私としても、すごく苦しい回が続きました。
――小鞠の焦りや不安はわかりつつも、ユーモアで中和させているところもありましたよね。
寺澤:特に八奈見ちゃんのギャグが盛り込まれていて、「重い!」という感じにはなっていなかったですよね。でも、箇所箇所で、温水くんにだけ本音を話すシーンもあって、特に第9話の図書館のシーンでは、思わずネガティブなことを言ってしまったり……。
月之木先輩と玉木部長が歩いているところを見てしまったというのもあるんですけど、自分が告白しなければ、もう少し3人で一緒にいられたのかなと思って、それが「も、元に戻っちゃった…」っていう台詞に出ていたと思うんですけど、ここは原作でも、台本でも深く突き刺さった言葉でした。
――この文化祭で先輩2人は部活を卒業するからこそ、ツワブキ祭は、一人でやり遂げないといけないと思い詰めるんですよね。
寺澤:ここはアフレコでも、「もう少しプレッシャーを感じているように」「自分の世界に入っちゃう感じにしてください」というディレクションをいただいていたんです。自分が考えていた以上に、小鞠ちゃんは重圧に押しつぶされそうになっていたんだなと思いました。
――玉木部長に告白したことに対する少しの後悔と、一人でなんとかしようと焦る小鞠の雰囲気が、よく出ていたと思います。
寺澤:第8話もモヤッとする終わり方だったので、そこから「重圧を感じているな」とは思っていたんですけどね……。
――水道の水を出しっぱなしにして、考え込んでいるシーンですね。
寺澤:開けっ放しにするくらい考え込んじゃってるの?と思ったんですけど、あの水の描写にも意味があるんじゃないかなと思ったりもしていて。溢れ出る思いがあるけど、その水が行き場のない気持ちになっているという描写なのかなと思ったんです。八奈見ちゃんがいい感じにギャグを入れて柔らかくしてくれているけど、小鞠ちゃんの心配のほうが勝っちゃう第8話と第9話でした。
――このアニメは、そういうシーンが多いですよね。原作の言葉や描写をカットしているからこそ、演出部分で、キャラクターの心情を感じてほしいんだろうなと思いました。
寺澤:それこそ光の入り方も、本当に細かく作り込まれていて、素晴らしい作品だと思います。それを感じ取っている視聴者の方も多いんじゃないかな。
――小鞠が過労で倒れる前だと、八奈見がコンサルに乗り気なのが面白かったです。
寺澤:ちょろい感じが出ていましたよね(笑)。コンサルタントというのも、八奈見ちゃんを参加させるために作った役職だと思うんですけど、そこに子犬のように食いつく感じが本当にかわいくて。
「それってコンサルってことだよね」と言っちゃうアホっぽさと、焼菓子を食べて、自分が作ったかのように振る舞うところとか、なぜか憎めないんですよね(笑)。
――しっかり、胡散臭いコンサル風のしゃべり方にはなっていました(笑)。
寺澤:アホっぽさの出し方が、遠野さんは完璧すぎるんです(笑)。回を追うごとに八奈見が楽しみになってくるのが、このアニメの醍醐味ですよね! だから遠野さんの演じる八奈見が好きな人は本当に多いと思います。遠野さんがやっているから、八奈見ちゃんがさらに面白くなっているところもあると思います。
――でもたまに、「小鞠ちゃんはね、どうしようもなく女の子なんだよ」とか、核心ついてくるじゃないですか。それに関してはどう思いますか?
寺澤:そういうところが私は好きで。普段はアホっぽくて、何も考えていないんじゃないの?って思うこともあるけど、実はそんなことはなくて、すごく賢いんですよね。ちゃんと周りを見ている子で、今、あの子はこういうことを思っているんだろうなって常に考えていて、温水くんと話すときに、それを伝えているんです。
これは私が勘ぐっているだけかもしれないんですけど、小鞠も檸檬ちゃんも、八奈見ちゃんが直接話すのではなく、温水くんが助けて行ってるじゃないですか。女心がわからない温水くんにヒントを与えて、さり気なく背中を押しているとも捉えられるんですよね。いつもの面白さからのギャップもあるし、中身のある女の子だから、すごく魅力的だと思います。
――ギャップがいいんですよね。自分が言うよりも、温水くんが伝えたほうがいいと思ったときは、サポートに徹する。4Kでも、素晴らしいんですよね。
寺澤:第9話の、温水くんの「あ、4K」は、すごく面白かったです。八奈見ちゃんがわかっていないところも含めて。
――全話通して、温水のツッコミは本当に素晴らしかったです。
寺澤:梅田(修一朗)さんはテンプレじゃない、こちらがさらっと笑ってしまうようなナチュラルなツッコミをするんです。台詞の出し方も絶妙で、毎回見事だなと思いながら見ています。大正解のツッコミを入れてくれるので、作品を面白くしてくれているのは梅田さんだと思います。