【アニメイトに売っていない「モノ」を買いに行こう！】『シティーハンター』の「ミニクーパー」を買う編｜歴史から実際の購入まで徹底解説！ リアリティを与える日本のアニメ特有の演出手法「実証主義」に会いに行こう

クラシック·ミニのマイナーチェンジで外観が大きく変わったのは1967年と1969年の2回

この間にクラシック·ミニは10回に及ぶマイナーチェンジが行われました。基本設計に変更はありませんが、細かいところを見て行くと外装で目立つ変更があったのは1967年と1969年で、1959年に登場した最初期型をMK.Iと呼ぶのに倣って、それぞれMK.II、MK.IIIとされます。1978年のMK.Ⅳ以降は、「センターメーター」の廃止やホイールサイズを10インチから12インチへの変更、メカニズムなどの改良が都度行われました。

それぞれの外装の主な特徴は下記の通りです。

▲クラシック・ミニMK-I。

ミニ MK-I

·かまぼこ型のフロントグリル
·小さなリアウィンドウ
·小さなテールランプ
·ドア上の水切り
·小さなサイズのドア
·スライド式サイドウィンドウ
·凝った形状の雨どい
·フロント下側部分左右のボディの切り欠きがない

▲クラシック・ミニMK-II。

ミニ MK-II

·フロントグリルを角ばった大きなものへと変更
·リアウィンドウの大型化
·テールランプの大型化
·ドア上の水切りの廃止
·小さなサイズのドア
·スライド式サイドウィンドウ
·アウタードアハンドルの形状変更
·雨どいの意匠変更
·フロント下側部分左右のボディの切り欠きの追加

▲クラシック・ミニMK-III

ミニ MK-III（MK-IIでの変更点を継承した上で）

·ドアの大型化と形状変更
·アウタードアハンドルの形状変更（2度目）
·サイドウィンドウをスライド式から巻き上げ式に変更
·ドアヒンジを外ヒンジ式から内ヒンジ式へと変更

以降のモデルはタイヤサイズを12インチ（最終型では13インチ）に変更し、オーバーフェンダーの追加があるくらいで、外観に大きな変化は見られません。

冴羽獠のミニクーパーはどの時代に作られたどのモデルか？

▲モーリス・ミニクーパーMK-I。

　
ここで問題となるのが、冴羽獠と同じクラシック·ミニを手に入れようとした場合、彼がどのモデルに乗っていたかです。

じつはこれが悩ましく、いずれの作品もボディカラーは赤で、ルーフを色分けされた（『シティハンター 』シリーズの屋根は白、パラレルワード作品の『エンジェル·ハート』は黒）ミニクーパー、もしくはミニクーパー風のカスタムが施された車両であることに間違いないのですが、作品によって登場するミニのディティールが異なっているのです。

北条司先生の原作マンガとパラレルワード作品の『エンジェル·ハート』、そして令和に制作された２本の映画では、設定画と劇中の描写からモーリス·ミニクーパー1275S Mk-Iだとわかるのですが、TVアニメ版はエピソードによって登場するミニが異なり、MK-IIやMK-III、放映時に新車で販売されていたローバー·ミニ、ターボを追加したチューニングカーのERAミニなどさまざまです。

なお、TVアニメ版の冴羽獠はクラシック·ミニ以外にも、イタリア車のフィアット·ウーノ·ターボやアウトビアンキA112、フィアット·パンダなどのコンパクトカーを運転することもありました。

令和版『シティーハンター』で冴羽獠が乗るミニクーパーを手に入れるには？

▲41年間に及ぶ長期に渡って生産されたクラシック・ミニには年式によってディティールは異なり、バリエーションも豊富にあります。『シティーハンター』に登場するクラシック·ミニも作品によって異なるため、赤いボディ色にルーフを塗り分けた仕様ならどのモデルでも冴羽獠と同じ仕様のミニと言うこともできます。

　
こうしたことからボディカラーが合っていれば、どのミニを購入しても冴羽獠の愛車と同じクルマと言えるわけですが、最新作に準拠するのなら選ぶべきはモーリス·ミニクーパー1275S Mk-Iとなります。

しかしながら、この車両は今から半世紀も昔に製造されたミニのスポーツモデルということで残存数も少なく、現在ではその希少性から良好な車両は700～1200万円で販売されています。さすがにこれほど高価だと普通の人にはなかなか手が出しづらく、たとえ手に入れたとしても、機械遺産とも呼べるようなクラシックカーですから初心者が買ってアシに乗るにはあまり適した選択とは言えないでしょう。

古いクルマだけに良好な状態をキープするにはには屋内保管が望ましいですし、後年式車に比べて維持するのに相応の手間とお金が必要になります。しかも、冴羽獠の愛車を完全再現するには、ルーフに後付けのキャンバストップを備えなければならず、オリジナルの状態で価値を持つクラシックカーを改造するには勇気がいることでしょう。

では、冴羽獠と同じ仕様のミニクーパー1275S Mk-Iに乗りたい場合はどうしたら良いのでしょうか？　それは1990年代に日本に正規輸入されたローバー·ミニをベースに“それっぽく”カスタマイズすることです。

　
前述した通り、クラシック·ミニはMK-IからMK-II、そしてMK-IIからMK-IIIにかけて細かなディティールはかなり変わっていますが、基本となるデザインは1990年代のローバー·ミニもほとんど変わりがありません。そして、豊富なアフターパーツを利用すれば、内外装をMK-IやMK-II仕様にカスタムできるのです。

もちろん、完璧を求めてリアウインドウのサイズ変更やMK-III以前の小さなドアへの交換、スライド式サイドウインドウへの変更などは、ドナー車からボディパーツを切り出して、板金、溶接、再塗装と言った作業が必要になることから、パーツの確保や製作に膨大な手間と時間、部品代と工賃だけで300～500万円ほどの費用がかかります。

ですが、ボルトオンの部品交換だけで、それっぽい雰囲気に仕上げるだけなら費用はグッと金額を抑えることができます（どのようなカスタムするかによって費用は変わってきます）。

オリジナルのMK-Iミニにこだわらくても冴羽獠の愛車は手に入れられる！

▲高年式のクラシック・ミニをベースにしたモーリス・ミニクーパーMK-I仕様。

　
某大手中古車サイトを確認したところ2024年9月末現在でローバー·ミニの中古車は354台が販売されていました。中古車の販売価格は80～624万円（支払い総額）と大きな開きがあります。高いクルマは少量生産の限定車やレアモデル、なかには未登録の新車（支払い総額は460万円）もありました。

これらは一般の中古車と同じく、走行距離が少ない、事故を起こしていない、カスタムが施されていないノーマル状態で、コンディションの良いものほど高価になり、これらの条件を満たしていないクルマほど安くなります。中心価格帯は150～250万円くらい（MT車の場合。同じようなコンディションの場合、AT車は１～２割ほど安くなります）で、同クラスの国産の新車を買うのとほぼ同じくらいの金額です。このくらいの価格帯のクルマなら、とりあえず乗り出しが可能です。

ただし、登録から年月を経たクルマですから、カツカツの予算で買うのではなく、予備費として100万円くらいは貯金を残しておきたいところです。また、格安でベース車を買って、たっぷり手間と時間をかけて自分で仕上げるのもひとつの選択です。その場合はクルマに詳しい人を見つけてベース車選びを手伝ってもらい、後述する専門店や修理工場と打ち合わせをしながら自分の理想とするクルマに仕上げて行きます。ベース車はネットオークションなどの個人間売買で70～80万円くらいで手に入れられますので、それに200～300万円くらいの修理費用を充てることになります。その場合は同じ予算でも中古車店に並んでいるミニをそのまま買うよりも、最終的にコンディションの良い車両を手に入れられる可能性があります。

オススメは1995年以降のモデルで、排気量が性能に余裕のある1271ccであるとともに、燃料噴射装置が機械式のキャブレター式から始動性に優れるインジェクション式になりました。また、高温多湿な日本市場に対応するためクーラーが強化され、暑い夏でも涼しく快適に乗れるようになりました。

とは言え、最終型でも四半世紀を経過したクルマです。一般的なコンパクトカーや軽自動車なら「古くなった」という理由だけで廃車になってもおかしくない年式でしょう。新車や比較的年式の新しい中古車と同じような感覚でクルマ選びをすることはできません。