音楽
『ヒプマイ』7連続リリースCD『.どついたれ本舗』レビュー

『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』『.どついたれ本舗』レビュー|孤独な葛藤を乗り越え“笑い”あるチームになる【7連続リリースCD連動企画】

アニメ、舞台、ゲームアプリと、楽曲CDにとどまらず様々なメディアミックス展開でも話題をかっさらっていく『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-(以下、ヒプマイ)』。5作品目の新曲リリースがやってきました。今回もディビジョンごとのシングル、しかも7か月連続リリース!

アニメイトタイムズでは、作品が始まった当初から楽曲のレビューをさせていただいておりますが、今回も編集部の石橋が担当させていただくことになりました。ありがたし……! もちろん、7か月連続で全曲をレビューさせていただきますよ!

連載第5回となる今回は、2024年10月16日(水)に発売となったオオサカ・ディビジョン「どついたれ本舗」の『.どついたれ本舗』をレビュー。

「どついたれ本舗」といえば、気になるのが白膠木 簓&躑躅森 盧笙コンビと天谷奴 零との関係です。言の葉党没落の直接的原因になった天谷奴 零。事件の主犯格とも言える彼との関係は一体どうなるのか……?

その答えは楽曲の中にある!

 

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漫才師としてだけでなく一人の人間としても立ち上がる白膠木 簓の「Laughin' hope」

前回のソロ曲「コメディアン・ラプソディ」ではその名の通り、漫才師としての生き様を愉快に歌い上げていた白膠木 簓。

しかし、彼にも様々な過去との葛藤があり、思い悩んでいた事柄が多々ありました。躑躅森 盧笙のこと、天谷奴 零のこと……。その悩みや思いが今回の「Laughin' hope」では歌われています。

<前は見えてんのに何故か後ろめたい 空気読めすぎてて逆に空気読めない 韻は踏めてももう一歩踏み込めない 高らかに笑いたいが薄ら笑い ハハッ… 繰り返すミス 蘇るトラウマにまた苦しむ>

明るいファンキーな曲調なのにド頭から歌詞がシリアスです……。こんな白膠木 簓は今まで見たことがありません。

これまで彼は心の奥底に暗いものを抱えたまま、目を瞑ったまま、作っていた笑顔の裏でそのトラウマを隠していたのかもしれません。

しかし、今はもう違います。今回のジャケットイラストをご覧なさい!

 
これまで白膠木 簓が写っているイラストはどれもいつもの糸目に笑顔のものばかりだったのが、今回は鋭い眼光を覗かせ、真剣な表情を見せています。

立ち上がった彼の心境はその後の歌詞にも現れていると思いました。

<過去の俺が言う「何逃げ出しとんねん?」 もう傷つくことビビらない どんな状況でも起こす一笑い それができやな俺である意味がない On the stage白膠木簓やgimmie a light>

何クヨクヨしとんねん、と。どんなことがあっても笑わせたろやないかい、と。そんな強い意志を感じます。

個人的には、<どんな状況でも起こす一笑い>というところが好きで、中盤の<見せて笑われるくらいならばくたばる>ともつながるのですが、あくまでも漫才師として「笑われるのではなく、笑わせる」というところが格好いいなと思っています。

芸人は笑われるようになったらお終いとは聞いたことがありましたが、白膠木 簓は漫才師としても、一人の人間としても、人から笑われるのではなく、自ら人を笑わせられる人間を目指しているのでしょう。

そしてそれは、一人で目指しているものではなく、「どついたれ本舗」の3人で目指す目標でもあるのです。

<横に理解者それこそが財産 本気の笑いが俺なりの愛や 口先だけなら響かない 覚悟決めた今意志は固い 3人揃えば拍手喝采 On the stageどついたれ本舗 gimmie the mic>

この歌詞、熱すぎますよね……! もはや説明不要な歌詞ではありますが、<On the stage白膠木簓やgimmie a light>となっていたところが、後半では<On the stageどついたれ本舗 gimmie the mic>となっているところが特に熱い。

やはり、「どついたれ本舗」はコンビではなく、トリオだというのがはっきりわかります!

 

梅田サイファーからの刺客!

Creepy NutsのR-指定も所属していることで有名な「梅田サイファー」のMC兼DJのpekoが作詞で参加。

pekoは個人での活動も積極的で、「Red Bull 64 Bars」に登場したことでも話題になりました。

pekoの魅力といえばその声。聞き取りやすい歌声かつリリックも明確で、万人に受け入れられるラッパーと言えるでしょう。

もちろん、関西出身なので、どついたれ本舗にもぴったりですね!

 

大阪のファンクバンドとヒップホップの名サウンドエンジニアのタッグ!

「Laughin' hope」を作曲したのは、日本を代表するオーセンティック・ファンク・バンドであるオーサカ=モノレールとヒップホップの名サウンドエンジニアと言われているThe Anticipation Illicit Tsuboi。

どちらもかなりのベテランで、実はとても贅沢な組み合わせでもあるんです。

オーサカ=モノレールは1992年の結成から、世界各国でのライブを成功させ、名だたるアーティストたちとツアーをともにした経験があります。

その独自のサウンドは、日本内でもなかなかお目にかかれるものではありません。

対して、The Anticipation Illicit Tsuboiもかなりの経歴の持ち主で、ヒップホップヘッズでその名を知らない者はいないほどの知名度を誇る「BUDDHA BRAND」のCQ、今は亡き伝説のMC・MAKI THE MAGIC とともに「キエるマキュウ」というユニットでも活動していました。

オーサカ=モノレール、The Anticipation Illicit Tsuboiがつながるのが、先にも名前が出たBUDDHA BRAND。クラシックと名高いBUDDHA BRANDのアルバム「病める無限のブッダの世界」の冒頭イントロを担当したのがオーサカ=モノレールでした。そして、それをMIXしていたのがThe Anticipation Illicit Tsuboiです。

この両者が『ヒプマイ』で再び同じ曲を共同で作るというのは、実はヒップホップファンとしては涎が出てしまうほど豪華。お名前を見たときに石橋も夜中なのに「ひぇ〜!」と叫んでしまい、奥さんに「うるさい!」と怒られたくらいの衝撃でしたよ。

 

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