「ビークル合体」は後から決まったコンセプト⁉ 『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』の「プラレール」誕生の裏側を聞いてみた|タカラトミー玩具開発担当者インタビュー
先人が敷いてくれた青いレールの上を走って開発するのが『シンカリオン』なんです
──『シンカリオン』の特徴はモデルとなる実在の新幹線が存在していて、それが変形してシンカリオンになるというところにあります。試作品をJR各社やアニメ側に見せた時に「ここを調整してほしい」といった戻しがあることはあったのでしょうか?
濱﨑:車両に関してJR各社からこうして欲しいといった戻しは特になかったと思います。というのも『シンカリオン』はプラレールブランドで作っているので、そもそもプラレールチームも同じチームなんです。
プラレールの車両は先に発売していて、それを元にシンカリオン化という流れをとっているので、特に車両の形や色味などで大きな戻しは無かったですね。
どちらかというと映像にした時を想定して「こういう武器にしたい」「こんな合体ができるようにしてほしい」といった要望を、JR各社に限らずプロデューサー陣からもいただくことが多かったかなと思います。
──タカラトミーさんの玩具の歴史があるので、ある程度の下準備ができた状態でスタートしているんですね。
濱﨑:先人が敷いてくれた青いレールの上を走って開発するのが『シンカリオン』なんです。このフレーズ、インタビューでぜひ使ってください(笑)。
一同:(笑)。
──今作だとハーデスシンカリオンは架空の新幹線ですが、架空の新幹線をイチからデザインする場合には開発の流れも変わってきますか?
木口:架空の新幹線でもレールの上を走ることは変わらないので、こういう形にまとめれば良いというおおよそのイメージがあるので、大きく変わったりはしません。どちらかというとハーデスシンカリオンで大変だったのはオルトロスとミニュアデスですね。
前作『シンカリオンZ』のダークシンカリオンもそうですが、神話に登場する動物の強そうな要素を取り入れたいみたいなテーマがあって、実は最初は「ケルベロスってかっこいい!」と思っていたんです。
でも、ケルベロスを作ろうとしたら、頭を3つ並べるには基礎フレームの幅が狭くて「3つは無理ですね……」「2つならいけるかも」みたいなやり取りがあって(笑)。それで調べたら頭が2つの「オルトロス」というギリシャ神話の動物がいると判明して。
濱﨑:「よっしゃあ!」という感じでしたよね。
岸:それから空を飛ぶのも入れたいと思ってコウモリっぽいのを試作したんですけど、ギリシャ神話に「コウモリはいないか?」とみんなで調べたら、ちょうど「ミニュアデス」がいたんです。
木口:冥界の王・ハーデスとその子分みたいな関係性を、神話の怪物をテーマで作りたかったので、そこからハーデスとオルトロス、ミニュアデスをなぞらえてもおかしくないかを考えていきました。
濱﨑:今回のハーデスシンカリオンに関しては、運転士のレイジの心境や立ち位置的なところが冥界の王に重なるイメージもあって「ハーデス」と決まった覚えがあります。
「ホーネットライフル」の命名秘話
──シンカリオンの設定のように、武器や必殺技の名前を決める会議もあるんですか?
濱﨑:ジェイアール東日本企画さん、小学館集英社プロダクションさんとかみんなが集まる会議があるんですけど、そういう時にアイデアを出し合っていますね。
岸:これはどうでしょうと提案したり、逆にジェイアール東日本企画さんと小学館集英社プロダクションさんからもご提案をいただいたりしています。
濱﨑:実はキシコーが命名した武器もいっぱいあるんです。
──命名ってファンの夢だと思いますが、岸さんはどの武器の名付け親なんですか?
岸:「シンカリオン E8つばさドローンフォーム」の「ホーネットライフル」という武器は、僕が提案させていただいた案が採用になってます。
ホーネットは「蜂(はち)」という意味ですけれど、「E8つばさ」の「8(はち)」とかけています。しかもドローンという単語自体も「オスの蜂」を意味しているのがトリプルミーニングになっていて。
そこにライフルの突き刺すようなイメージもあって「ホーネットライフル」を提案したんです。
『シンカリオン』シリーズは武器を使う時に声優さんがその名前を言ってくれるので、それは凄く嬉しいですね。
木口:これは余談ですが、『シンカリオンZ』の『エヴァンゲリオン』コラボで「ロンギヌスの槍」をどうもじるかの話になった時、僕が「ブンキヌスの槍」って言ったら通ってしまったこともあります。
そうしたら声優の緒方恵美さんがSNSか何かで「これ、言うの恥ずかしかったです」と仰っているのを見て、本当に「すいません!」と。ずっとアニメで見ていた大御所中の大御所にそんなことを言わせてしまって、もう前代未聞の事態ですよ(笑)。
一同:(笑)
※編集部注:緒方さんの発言は2021年9月10日の「週プレNEWS」のインタビューで確認できます。 https://wpb.shueisha.co.jp/news/entertainment/2021/09/10/114389/
──実際に取材で本物を見に行ったりはしたのでしょうか?
濱﨑:『シンカリオンCW』で取材したのは「E8つばさ」です。というのも「E8つばさ」は新型車両だったので、プラレールも同時期に開発していたのに合流させてもらいました。
SMDEさんと一緒に利府の車両基地に伺って、実際に色味やノーズの流し方などを見学して玩具に反映させたりしましたね。
岸:そういえばアニメ制作チームとの会議中に山野井さん(CGアニメーションプロデューサー・山野井創さん)がドローンを飛ばしたことがありましたよね。
──会議中にドローンを飛ばす……?
濱﨑:山野井さんはドローンの免許を持っているので、エルダドローンの参考として会議室内で飛ばしたら、机の上の資料が全部ぶわーって飛び散って(笑)。
岸:僕はその会議にリモートで参加していたんですけど、ドローンの飛ぶ音だけが聞こえてきて何だろうって思いました(笑)。
一同:(笑)。