
「たくさんの方々に応援していただいたおかげで第2期という次のステップに進むことができました」――『地縛少年花子くん2』プロデューサー・片山悠樹さんインタビュー
月刊「Gファンタジー」で連載中の、あいだいろ先生による大人気コミック『地縛少年花子くん』。2022年冬にアニメ再始動プロジェクトが発表され、2023年&2024年秋にショートアニメ『放課後少年花子くん』がテレビ放送&グローバル配信、そして2025年1月12日(日)ごご4時30分からはTBS系全国28局ネットにてTVアニメ『地縛少年花子くん2』の放送が開始されました。
今回アニメ放送に先駆けて、プロデューサー・片山悠樹さんにインタビューを実施しました。1月6日(月)~1月12日(日)に池袋駅で開催された「トイレ掃除イベント」施策についてや作品に対する想いなど、盛りだくさんな内容となっています。
期待を超える作品を目指して――『地縛少年花子くん』第2期の挑戦
──池袋駅で開催された「トイレ掃除イベント」施策について、どのような経緯で実施することになったのか、お伺いできますでしょうか。
プロデューサー・片山悠樹さん(以下、片山):第1期を2020年1月にアニメ放送させていただき2025年1月12日(日)より第2期が放送開始ということで、間にショートアニメが2023年・2024年にありましたが、本編としてはちょうど丸5年が経っています。
そんな空白期間を埋める楽しい施策をやりたいなということで、TBSの社内や『地縛少年花子くん』に関わるアニメスタッフのみなさんと相談しながら、「トイレ掃除」のアイデアが出てきました。
「もっけ」というキャラクターのグリーティングだったり、「アニメイトガールズフェスティバル(AGF)2024」に参加させていただいたり、アニメ『地縛少年花子くん』としてファンのみなさんと直接接してきた場所が池袋だったので、その池袋の街で人々が足を止めて喜んでくれるような施策を作品の世界観に入り込める形で、かつ驚きを込めてお届けしたいという想いが具現化されたものとなっています。
──実際に皆さんが楽しんでいる様子をご覧になって、いかがでしたか?
片山:そうですね。スタッフと力を合わせて大きなトイレを作って良かったなと思います(笑)。
──それでは、作品についてお伺いしていきたいと思います。この作品との出会いはどのようなものだったのでしょうか?
片山:この作品は原作の出版社のスクウェア・エニックスさんとアニメ制作会社のスタジオ雲雀さん、TBSの3社で取り組んで制作を進めることになった作品です。
僕はほぼ立ち上げから関わらせていただいていて、作品に関わらせていただいてからは7年ぐらいが経っています。この部署に異動して間もなく、ほぼ初めて担当した作品が『地縛少年花子くん』で、それがこの作品との出会いでしたね。
──作品に携わり始めた際の原作漫画を読まれた時の印象を教えてください。
片山:若い女性のファンが多い作品ということは知っていたのですが、僕自身は男性であり年齢的にもその層に合致するのかどうか分からない、いわば真っ白な状態で読ませていただいて。その中で、自分が関わっているというバイアスもあると思いますが、良い意味でたくさん裏切られる作品だと感じました。
原作の冒頭では、“萌えポイント”がある作品だなと思いつつ、読み進めるうちに全然また違った顔が見えてくるんですよ。本当に深い作品で、こうしてアニメとしても長く続けられることができて良かったなと。
──片山さん目線で感じた“萌えポイント”というのは、具体的にはどのようなところでしたか?
片山:作品の良さに直結する部分なのですが、あいだいろ先生は1人のキャラクターにさまざまな性質を持たせる天才だと思っています。
花子くんやミツバといった怪異たちは、“人間だった時”と“怪異になった後”では同一視できないキャラクターもたくさんいたりするんです。おそらく、花子くんも同じではないというか。1つのキャラクターに多様な性質を持たせる描き方が本当にお上手な原作者さんで、簡単に掴みきれないキャラクターの感情を読む楽しさがものすごくあると思っています。
学園の生徒たちの方も、寧々ちゃんは変わらない前向きな強いキャラクターではあるんですけれど、怪異たちに触れて、彼らもどんどんどんどん変化していくというキャラクターの感情の起伏の描き方が本当に素晴らしいなと。読む手が止まらずどんどんのめり込んでいきました。
──そんな『地縛少年花子くん』をテレビアニメ化する際、大切にされた部分について教えてください。
片山:監督や脚本家さん、先生、制作会社のプロデューサーさんなど、みなさん百戦錬磨の方々が集結しています。みなさんが原作を読んで感じた良いなと思うポイントが自然と一致していた部分が多く、結構高い次元でイメージが共有できていました。
そんなに僕の立場で意識的に「こうしてほしい」というよりは、スタッフの皆さんと作り上げた結果、このようなアニメの仕上がりになっています。最初は1シーズン(全12話)を作るというのが目標だったので、12話の中で物語を描いていくにあたってシナリオやストーリーを丁寧に描くことを一番強く意識しましたね。
原作には重要な要素やエピソードがたくさんあり、その全てを12話の中で盛り込みすぎると中途半端になってしまうと思ったので、原作をご覧になられている方は分かると思いますが、エピソードを取捨選択して制作させていただいた感じです。
また、あいだいろ先生の作品の特徴のひとつでもある色彩表現には特にこだわりを持って作っていただきました。制作スタッフのみなさんが丁寧に仕上げてくれたおかげで、原作の美しい世界観をアニメでも表現することができたのではないかなと思っています。
──先ほど、みなさんが同じ方向を向いて制作されていたというお話もありましたが、制作過程において、あいだいろ先生やスタジオ雲雀、スタッフ陣の方々とはどのような話し合いをされたのでしょうか?
片山:先生はシナリオ会議にもほぼ毎回ご参加いただき、アフレコ現場にも頻繁にお越しいただいていて、シリーズ構成制作から積極的に関わってくださっていました。基本的にアニメ制作の工程を一緒に作り上げているという感覚でしたね。
そういう意味で、監督やプロデューサーのみなさんともフラットに意見交換ができたり、先生にその場で「この部分ってどういう感情なんですか?」といった確認ができていたので、制作がスタックすることなくスムーズに進められていたと思います。
──アニメ化が決定した際の当時の裏話がありましたら、ぜひ教えてください。
片山:作品のプロジェクト立ち上げ当初から、主人公・花子くんを緒方恵美さんにお願いすることが決まっていました。
関わる方々はみなさんそうだと思いますが、あの緒方さんと仕事ができるという……。しかも、僕がアニメ業界でのキャリアが始まったばかりの時期で、そんな中でお仕事がご一緒できるんだという驚きと僕でいいのかという葛藤を抱えながらずっと現場に入らせていただいて……(笑)。
緒方さんがご出演されている作品を子供の頃から拝見させていただいていて、その当時から考えると、今は一緒にお酒を飲むような関係にもなり、あの時の自分からは信じられないです。
──ちなみに……飲みに行かれた際はどのような会話をされるのでしょうか?
片山:もちろん、作品のお話もしますが、社会情勢などの世間話などいろんなお話をさせていただきます!
直近でご一緒させていただいた際には、緒方さんが『地縛少年花子くん』という作品とキャラクターにどう向き合ってきたかという話を改めてお伺いできて。それに対して、僕からも「こういう気持ちで作品と向き合ってきて、第2期をやるにあたってこんなことがあった」というような話をしました。
最初は第1期のアフレコ後に、何人かで飲みに行ったのが始まりです。
『地縛少年花子くん』というアニメが長く続いている作品だからこそだとは思いますが、演者の皆様とプロデュース側の想いみたいな部分を深く掘りさげてお話ができる関係を築けていることは貴重だと思っています。
──それでは、実際にアフレコ現場で緒方さんをはじめとするキャストの方々のお芝居をご覧になった際の感想をお聞かせください。
片山:みなさん非常にプロフェッショナルで、アフレコに向けてたくさん準備をしてくださって、かつ現場でも多くの試行錯誤を重ねながら演じていらっしゃるのが伝わってきました。
アフレコ初日から、初日とは思えない雰囲気があったといいますか。それぞれのキャラクターがしっかりと確立されていて、まるで「長く共に生活してきたかもめ学園の仲間が久々に集まった」ぐらいの空気があったので、「これから楽しい作品が生まれるぞ」という期待感はありました。
──第1期を振り返って、お好きなエピソードや台詞などがあれば教えてください。
片山:やはり一番は、主人公の花子くんの過去が垣間見えるエピソードが個人的には好きです。
あと、キャラクターとして一番好きなのは土籠ですね。 第六の怪「16時の書庫」は土籠と普(生前の花子くん)のやりとりが回想されるシーンがある話数なので、ここが僕にとっては一番エモい回です。
──続いて、主題歌についてお伺いさせてください。オープニングはオーイシマサヨシさんの「L'oN」、エンディングは本作で八尋寧々役を務めている鬼頭明里さんの「With a Wish」ですが、このおふたりに主題歌をオファーされた経緯をお聞かせください。
片山:『地縛少年花子くん』の制作において、委員会を創成する上でポニーキャニオンさんともがっつりタッグを組むことになりました。
ポニーキャニオンのプロデューサーさんと作品の方向性を色々とご相談させていただいた上で、アイデアをいただきながらアーティスト選定を進めていき、オープニングテーマはオーイシマサヨシさんに決定しました。鬼頭さんは八尋寧々として作品にご出演もされているので、経緯は分かりやすいかなと思います。
もちろん、作品自体のキャラクターも魅力的ですが、第1期の地縛少年バンドを含めてアーティストさん、音楽プロデューサーさんにそれぞれ『地縛少年花子くん』の世界をイメージして作ってもらおうと。キャラクターソングにはしない形の方が作品の世界がより表現できるのではないか、というのが監督やスタッフのみなさんと話し合って出た結論です。
そのイメージをポニーキャニオンさんにもお伝えさせていただいたところ、アイデアを練っていただいてオーイシさんと特別なバンド(地縛少年バンド)を作っていただくという最高の形をご提案いただけたという流れになりました。鬼頭さんの「Tiny Light」の歌詞も楽曲も本当に素晴らしく、『地縛少年花子くん』の世界を上手に表現していただいたとおもっています。
──たくさんお話しいただきありがとうございました。第2期は1月12日(日)よりスタートしました。視聴者の方に期待してほしい部分や片山さんが届けたいメッセージがあれば教えてください。
片山:『地縛少年花子くん』のプロジェクトは第1期、ショートアニメと内容によって表現をいろいろとチャレンジしつつも、基本的にはこれまでご覧いただいていたアニメ『地縛少年花子くん』の世界がさらに拡張している、と期待していただいて良いのかなと思っています。
一番印象的だったのは、第1期が深夜2時台の放送で、深夜アニメの中でもかなり遅めの放送だった中で、多くの方々がSNSなどで感想を呟いてくださっていたことです。この作品は海外にもたくさんのファンがいて、さまざまな言語で反応をいただいています。
原作ファンの方やアニメから入られた方、たくさんの方々に応援していただいたおかげで第2期という次のステップに進むことができました。正直なところ最初から決まっていた第2期ではなく、だからこそ余計にみなさんの応援があったからこそ実現したものだと思っています。その応援やファンの方々の想いに応えるべく、期待を裏切らないようにスタッフ一同で取り組んでいますので、楽しみにしていただければ幸いです。
また、第1期では12話に収めるために削ってきたエピソードがありましたが、第2期ではそれらをしっかりと存分に描いているのでご期待ください。これからも『地縛少年花子くん』を応援していただけたら嬉しいですし、僕たちとしてももっと続けていきたいという想いがあります。これからもぜひ、よろしくお願いいたします。
[取材・文/笹本千尋]
作品概要

あらすじ
ねえ、知ってる? かもめ学園の七不思議、七番目の噂話。
旧校舎3階の女子トイレ。そこには花子さんがいて、何かひとつを代償に呼び出した人の願いを叶えてくれる。
呼び出し方はノックを3回。
そして――
「花子さん、花子さん、いらっしゃいますか?」
七不思議七番目『トイレの花子さん』こと“花子くん”と縁を結んだ少女・八尋寧々。祓い屋の少年・源 光。2人は花子くんと共に、改変された七不思議や怪異たちの噂を元に戻すため、日々奔走していた。
ある日、花子くんは言う。七不思議の中に裏切り者がいる、と。
寧々たちは裏切り者を炙り出すため、七不思議の依代を破壊していく。二番目『ミサキ階段』、五番目『16時の書庫』を壊し、残る七不思議は『トイレの花子さん』を含めると五つ……
一方、その裏で花子くんの弟・つかさは、七峰 桜、日向夏彦、そして新たに七不思議三番目「カガミジゴク」となったミツバと共に、寧々たちがまだ見ぬ七不思議に近づいて――
キャスト
花子くん:緒方恵美
八尋寧々:鬼頭明里
源光:千葉翔也
源輝:内田雄馬
蒼井茜:土岐隼一
赤根葵:佐藤未奈子
もっけ:吉田有里 森永千才 金澤まい
ミツバ:小林大紀
つかさ:緒方恵美
七峰桜:安済知佳
日向夏彦:水島大宙
ヤコ:ゆかな
土籠:津田健次郎
カコ:大塚芳忠
ミライ:釘宮理恵
(C)あいだいろ/SQUARE ENIX・「地縛少年花子くん2」製作委員会