
冬アニメ『全修。』スタッフ連載インタビュー第十一回:脚本担当・うえのきみこさん|「コミュニケーションは苦手なのが普通で、みんな少しずつ距離を縮めて平気を培っていく」
株式会社MAPPAのオリジナルTVアニメ『全修。』が、2025年1月5日よりテレ東系列ほかで放送中。初恋をテーマにした劇場ラブコメ作品のコンテ作業中に意識を失い、子供の頃に夢中になったアニメ映画『滅びゆく物語』の世界へと転生した天才監督・広瀬ナツ子。いよいよクライマックスを迎える本作ですが、果たして、物語はどのような結末を迎えるのか、そしてナツ子はどうなるのでしょうか?
アニメイトタイムズでは、本作の魅力、そしてアニメ業界のお仕事に迫るインタビュー連載を展開! 第十一回は脚本担当・うえのきみこさんに再びお話を聞きました。作品を作るうえで『誰かの「楽しみ」になりますように』という気持ちを込めているうえのさん。そんなうえのさんに、本作最終話の見どころをお聞きしました。
どんなに絶望しても世界から消えないでほしい
──アニメ『滅びゆく物語』の元々のストーリーへと収束していこうとする世界。一度は諦めかけるも、ユニオの呼びかけや自身の原点を思い出したことでナツ子は再起します。うえのさんはナツ子をどういうキャラクターとして描いていましたか?
脚本担当・うえのきみこさん(以下、うえの):ナツ子は誰に対しても平等に傲慢で、ストイックに物事を突き詰めて初恋狩りする変人。世間からは天才とも言われていますが、孤独で、不安で、絶望しかけていた普通の人間だと思います。
──ここまでの物語は、ナツ子の現実世界での心の内や悩みともリンクしているように感じました。前回のインタビューでも「本作を通じて伝えたいこと」についてお聞きしましたが、ストーリーが進んだいま、改めて本作がどのような物語なのか、何を伝えたい・伝わればいいなと思って描いてきた物語なのか教えてください。
うえの:まだ最終話がありますし、私が『全修。』とはこういう物語ですと語ると、それが答えになってしまいそうで。観ていただいた方がそれぞれ自由に作品から受け取ってもらえたらそれでいいなと思っているのですが……。強いていうなら、どんなに絶望しても世界から消えないでほしいということでしょうか。
──本作の脚本制作を担当するうえで難しかったことや、脚本制作に時間がかかった話数があれば教えてください。
うえの:オリジナル作品なので『滅びゆく物語』の大まかなストーリーを作ったり、キャラクターの設定や背景を考えるので脚本を書くまでに時間がかかりました。脚本を書きはじめてからも相当時間がかかってます。特に7話のナツ子の過去は、他人から見たナツ子を描きたいとは思っていたのですが、高校生のナツ子がどう他人と関わっていたのかわからず、とても難しかったですね。
『全修。』は時間とエネルギーがとてもかかりましたし、苦しんだ部分もたくさんありますが、それもオリジナル作品の醍醐味と言いますか。すべてが楽しかったです。