
「私たちにとって、服や髪の毛は“感情の延長”なんです」――『トイ・ストーリー5』日本人スタッフ・小西園子さんに訊く、ピクサーが守り抜いてきた“壊さないルール”【インタビュー】
1996年の日本公開から30年。おもちゃと人間の絆を描き、世界中の観客に感動を与えてきたディズニー&ピクサーの傑作「トイ・ストーリー」シリーズ。その最新作となる『トイ・ストーリー5』が、7月3日(金)から全国公開されます。
今回ウッディとジェシーたちが立ち向かうのは、最先端のタブレット<リリーパッド>という“デジタル”の脅威。時代とともに遊びの形が変わる中で、おもちゃにできる「本当の役割」とは何なのか?
本稿では、ピクサーの日本人スタッフ・小西園子さんにインタビュー。「トイ・ストーリー」シリーズの1作目から関わる小西さんにピクサーが守り抜いてきたものづくりのルールからクリエイターたちの熱量まで、必見の制作秘話をお聞きしました。
「私たちにとって、服や髪の毛は“感情の延長”なんです」
ーーまずは小西さんがピクサーで担当されているお仕事について、お聞かせください。
小西園子さん(以下、小西):担当は「シミュレーション」です。キャラクターの髪の毛や服をなびかせたり、動かす仕事になります。あとは木や草などの自然のものや紙切れなど、とにかくキャラクターに触れるものを動かす仕事をやっています。
ーー今作で特に力を入れた場面を挙げるなら?
小西:今回はボニー(アンディからおもちゃを譲り受けた女の子)のシーンが多かったですよね。私たちにとって、服や髪の毛は“感情の延長”なんです。ボニーの場合、嬉しい時は髪の毛を少し大げさに動かして、悲しい時はちょっと落としてみるとか。そういうところに気をつけました。
小西:彼女のお友達のブレイズも、髪の毛がすごく大変だったんです。3Dではカールの髪の毛ってものすごく難しいんですね。メリダ(『メリダとおそろしの森』)の時からカールの髪の毛をやってきてましたけど、とにかく大変(笑)。特に彼女の場合は若い女の子で、髪の毛がソフトで柔らかい感じもあります。その動き方も、カールごとにバラバラ動くんじゃなくて一緒に動いたり、ちょっと跳ねてみたり、風になびくとソフトに動くとか。そういうものすごく微妙なところにもこだわっています。
「素材は壊さない」ピクサーの変わらないルール
ーー今作から登場するリリーパッドやスマーティー・パンツは、“ザ・無機物”と言える形をしています。人間ではないものにアニメ表現で命を吹き込んでいく、ピクサーならではのキャラクター作りについて、小西さんのお考えをお聞きしたいです。
小西:うちのアニメーターは優秀ですね。ピクサーには“壊さないルール”というものがあって。
ーー壊さないルール?
小西:素材は壊さない。例えば、プラスチックを下手に曲げたりしないというルールがあるんですよ。その限られた中で、アニメーターが表現しています。まず、本物を壊さないという前提がある。そこからだんだん引き算や足し算をしますけど、エッセンスは逃さない。そうすると見ているだけでも、そのキャラクターが“何でできているか”が分かるんです。スマーティー・パンツはハンドルの使い方で腕みたいに見せていて、すごいなと思いました。
ーーマテリアルで言えば、ウッディやジェシーが着ている服も人間とは違うニュアンスを感じますが、その辺りはいかがですか?
小西:そうですね。服については、人間のサイズとおもちゃのサイズで、完全にマテリアルの違いが出ています。おもちゃの場合はサイズが小さいので、布の表面が少ない。ということは、そんなに垂れ下がることもないし、なびくこともないし、結構硬めなんですよ。人間の場合は生地の量も多いし、動き方も全く違うので、『トイ・ストーリー』の世界なんですけども、違うスケールだとすぐわかるんですね。
ーー今作では馬や豚といった動物たちも活躍しますが、おもちゃ/人間/動物が一緒の画面にいて、それぞれの違いが一目でわかる映像表現に感動しました。
小西:特にジェシーが本物の馬に乗るシーンは、素晴らしかったですね。馬のたてがみって、そこまで柔らかくないんですよ。量も多いし、そんなになびくわけでもない。「ちょうどいい加減だなあ」と思いながら観ていました。




























