
「片田舎のおっさん、剣聖になるII」アニメーション制作・ハヤブサフィルムインタビュー|「ともすれば地味に映る立ち合いの中に、見た目以上のものを込めています」
おっさんの魅力を届けられたことを実感した次回予告の魅力
──実際に剣術道場に行ったことも伺いました。そのあたりのアクションシーン制作の裏話もお願いします。
別府:西洋剣術の道場があることを知り、私が最初に確認してからスタッフが続々と伺いました。録画もさせていただいて、基本的な剣の握り方や構え方、打ち込みの方法をレクチャーしていただきました。剣の重さも、その時にリアルなものを持たせてもらって把握しています。
ベリルの剣はドイツの剣術をモデルにしているので、その先生のところで学んだことに加え、DVDや書籍も購入させていただき、これでもう間違いは許されないという状態で制作に臨みました。
──そんなアクションシーンはCGと作画のハイブリッドで、CG部分はYAMATOWORKSさんが担われていたかと思います。やはり相互に連携しつつ制作は進んだのでしょうか?
別府:YAMATOWORKSさんは剣戟やキャラクターの表情芝居が巧みなCGクリエイターが揃った会社なので、ある程度安心しつつその技術を前提に発注していました。こちらで集めた資料を提供しつつ、どういったアクションなのかテーマやコンセプトを全てお伝えした上で制作をお願いしています。
YAMATOWORKSさんの持つ技術やアニメーターとしての意識の高さは本当に素晴らしいので、連携したというよりも、まずはいったん完成した映像をあげてもらい、それに対して調整をかけていくような形で進めさせていただきました。我々はそこに乗っからせていただいた形です。
通常はアニメーション制作会社側がラフを描いて、そこにCGクリエイターが絵をのせるのが基本的なアクションアニメのフローなんです。ですがそこはもうYAMATOWORKSさんを信頼していたので、僕たちはYAMATOWORKSさんが望むスケジュールを確保するために、絵コンテをあげたり設定をあげたり、可能な限り時間を提供できるように務めていました。
──日常シーン……中でも料理の描写も凄まじいものがあったと思います。そのこだわりについてもぜひ伺いたいです。
別府:たまにAIではないかと言われるのですが、料理を選任で描いてくれているスタッフたちが100パーセント手描きで頑張ってくれています。
──やっぱり手描きなんですね。
別府:一番最後まで粘るのが料理のカットというのが定番になっています。キャラクターや他のセクションは仕上がり次第次の話数の作業へ行くのですが、料理だけはずっとこだわって調整を続けるんです。
この作品は基本的に1話ごとに1アクションあるようなコンセプトなのですが、戦闘シーンやアクションシーンばかりだとベリルやミュイの周りが殺伐として日常が寂しいものに見えてしまう。だから、そうとられてしまいそうなキャラクターたちへ愛情を込めるべく、料理は美味しそうに見せたかった。
藤川:料理に関しては別府さんから「違う、そうじゃない」と指示が飛んできて、担当者がさらに気合を入れるんです。キャラクターの修正は1~2回で通るのですが、料理だけはそのくらいの修正回数では通らないんです。
別府:キャラクターたちの生活を彩ってあげたかったんです。美味しい料理は世界共通言語ですし、キャラクターたちへの僕たち自身の想い……みたいなものがあって。そうやって料理は引くに引けなくなり、どんどんクオリティが高められていったのだと思います。
──そんな第一期ですが、視聴者のみなさんの反応はどのように受け止められていますか?
別府: 原作ノベル・コミカライズ・スピンオフシリーズの持っている力がとても強かったので、非常に多くの方にご覧になっていただけたのかなと。日本だけでなく海外の方にも見てもらうのだと常に意識しながら、制作に打ち込んでいましたね。剣戟も含めてですが、極力画面に嘘がないよう、見ていて違和感がないよう頑張って仕上げていきました。その成果をしっかり受け取っていただいて、違和感なくご覧になっていただけたのではないかと思っています。
ベリルというキャラクター自体が多くの共感を得られていたことも本当に嬉しかったです。きっと佐賀崎先生にもご納得いただけたのではないかと信じていますし、安心できるリアクションが返ってきて良かったです。
特にベリルが海外の方にどう受け取られるかは心配でした。同時期に大作が多かったので埋もれてしまわないかと思っていましたが、海外からとても大きな反響をいただいて、ベリルの生き様を自分に重ねて喜んでもらえた。その事実を非常に嬉しく思いました。
我がことのように嬉しいというのもおかしな話なのですが、年齢感も僕や鹿住朗生監督に近いものがありますし、全世界のおっさんたちにご納得いただけて良かったです。
──ベリルはやっぱり多くの共感を呼んだんですね。
別府:僕も鹿住監督も、シリーズ構成の岡田さんも年齢感が近くて同じような境遇ですので、おっさんへの解像度や理解度に関しては自信を持っていました。脚本会議では「おっさんはそんなことはしない」と話し合いをしつつこだわっていて。
特に視聴者さんの反応で印象に残っているのが、次回予告でベリルが来週の話をしないことでした。その話数に関係するネタを一言、二言喋った後に次回のタイトルを言うのですが、それがベリル役の平田広明さんのアドリブなのではないかという声があったんです。
もちろん岡田さんが文言を考えて、鹿住監督やスタッフ陣でおっさんなら言いそうな塩梅に調整して、ベリルがおっさんあるあるを心の中でボヤくというものでした。それが平田さんのアドリブだと思われたということは、視聴者さんに対しておっさんの魅力を届けられたのかなと思っています。
──自分は第4話「片田舎のおっさん、モンスターと空を飛ぶ」の鳥の足はお肉屋さんで鳥もみじくださいと言えば買えるというところが好きでした。
藤川:命からがら倒したグリフォンの足を、スレナが武器屋に持ってきてダン!と置くところですよね。劇中では全く別の話が展開していましたが、もしかしたらその裏でベリルの頭の中は、鶏の足のことを考えていたのかなと。想像が膨らみますよね。なんとなく滲み出るおっさんっぽさが、上手く視聴者の方々に届いていたことは自分も手ごたえとして非常に嬉しかったですね。































