アニソンカバーアルバム『ENSON』第2弾も好調の遠藤正明さんが、夢のワンマンをO-EASTで敢行!『サイショでサイゴ!?のENSONライブ』ライブレポート
2008年にアニソンカバーアルバム『ENSON』を第2弾までリリースして好評を得た遠藤正明さんが、『ENSON』『ENSON2』収録曲をすべて歌うライブを1月24日に開催した。会場は、そこでワンマンライブをやるのが夢だったと語る渋谷O-EAST。「サイショでサイゴ!?」とタイトルにつけるなど、当初は開催にも不安があったようだが、蓋を開ければチケット発売1時間でソールドアウトという人気ぶりに、ライブを主催したランティスのスタッフが一番驚いたという。
アルバムの選曲は、遠藤さんの高音域を活かすような女性ボーカルの曲や、高音が特徴的な曲が多い。それをライブの最後までまったく声量も衰えずに歌い切り、ボーカリスト・遠藤正明のパワーを改めて認識する内容となった。
最後には歌手活動の恩人であるランティス社長の井上俊次氏や、兄さんと慕う先輩歌手の影山ヒロノブさんも友情出演し、記念のライブを盛り上げた。
●燃え萌えソングを超燃えで熱唱!
オープニングナンバーは水樹奈々さんの「ETERNAL BLAZE」。水樹さんも非常にパンチが効いた歌い方をするが、同じ高音域で美女と野獣的な差が出るギャップ感が実に面白い。水樹さんの歌にあった燃えと萌えのバランスが、遠藤さんにかかると燃え一色になる。それが“ENSON”なのだとこの1曲で理解できるほど強烈なインパクトだった。
続いては中川翔子さんの「空色デイズ」だが、熱いロボットソングが本職の遠藤さんだけに、もうひとつの“本物”が生まれたような不思議な感覚になる。
元々ハードロック調の「God knows...」はさらにハードかつパワフルに。ハルヒが熱唱するアニメのシーンも印象的な「きーずーあーとーなぞるー」からラストにかかる盛り上がり方は、会場全体が完全にロックコンサートのタテノリ状態だった。
米倉千尋さんの歌い方からして熱い「嵐の中で輝いて」も、高音に行くほど太く響く遠藤ボイスで歌い上げる。そしてここまでハードな曲が続いた後に、一転してメロウな「アンインストール」という選曲が心憎い。原曲の石川智晶さんの透明感あるハイトーンは美しさと儚さが印象的だが、遠藤さんの歌声は同じ高音域で力強く艶やかに伸びていく。
ここでMCを入れて一息。ENSONはアニソン界に育ててもらったと恩義を感じる遠藤さんが、自分はアニソンシンガーなのだという自覚と誇りをもう一度取り戻そうとの想いで作ったとまず語る。またこれはカバーアルバムなので、実は最初は簡単に作れるかもと考えていたが、それがいかに浅はかだったか痛感したという逸話も明かした。1曲1曲に特別な想いを持っている人たちがいるわけで、その想いを大切にしながら歌うのは本当に大変だったとのこと。そしてオリジナルシンガーに対し、ものまね芸をする人が本人に「すいませんっ!」と謝る気持ちがわかったという話でオチをつけた。
続いては、所属事務所の後輩ということでアルバムにもコーラス参加してもらった美郷あきさんのデビュー曲「君が空だった」。さらに「In the Chaos」、昔懐かしい「やつらの足音のバラード」と、遠藤さんのもうひとつの武器とも言えるバラードが並ぶ。力強い楽曲を歌うことが多い遠藤さんのバラードは、バラードなのに元気付けられる感じが面白い。
ここでまたMCが入り、昨年JAM Projectで世界を回った際の想い出を語る。世界の人々がいかに熱烈にアニソンを迎えてくれるかを熱弁し、また「『ENSON』聴きました!」とたくさんの人に言われて感激したと声を弾ませた。
ここからノリのいい曲をメドレーで一気に畳み掛ける。ロボットアニメやバトルアニメの歌はやはり相性が良く、原曲は女性ボーカルの「Go Tight!」や「Wing of Destiny」がENSONによってやたらと男臭いアニソンに変わるのが面白い。「鳥の詩」は歌姫Liaのクリスタルヴォイスがもちろん唯一無二のものだが、とにかく高音が伸びる“ENSONバージョン”も圧巻だ。ボーカリストが変わることで、元々の楽曲自体の素晴らしさが再確認できるのもENSONの効用だろう。
そしてENSONの中でも屈指の出来なのが「もののけ姫」。原曲がファルセットで歌われているのに対し、遠藤さんはそのままの声であの高音を出すため、声のパワーが圧倒的なのだ。米良美一さんの歌は幻想世界を感じさせるが、遠藤さんの歌には原生林の雄大さがある。ここまで来ると、どちらも“本物”なのだろう。
アカペラが特色の「ウルトラセブンの歌」では、コーラス隊としてランティスのみなさんが動物の被り物をつけて登場。リーダーのゴリラさんはわざわざ顔を隠し、「ウホウホ」としか喋らなかったのに、遠藤さんが「私は決してランティスの松村ではありません」と通訳をして台無しにしていた。
「明日へのbrilliant road」「愛をとりもどせ!!」と高音の魅力をたっぷり聴かせる激しい曲をたて続け、ブラック・サバスかというような「キン肉マン Go Fight!」、激しいタテノリの「創聖のアクエリオン」、ラストは遠藤さん世代の青春の曲「銀河鉄道999」で盛り上げた。
●感謝を込めたスペシャルセッション
アンコールは「GO GO POWER RANGERS」から。『パワーレンジャー』は日本のスーパー戦隊シリーズをアメリカで言わばカバーしたものだが、その主題歌を本家のスーパー戦隊シンガーが歌うわけで、これに関してはENSONのほうが本物と言えるほどの格を魅せた。原曲と別の魅力を表現するカバーは多いが、原曲の魅力を超えるカバーというのは珍しい。
20数年前にプロのミュージシャンを目指して活動を始め、ようやくプロになったものの苦難の日々が続き、14年前にアニソンという世界に呼ばれてようやく道が拓けたと、訥々と語る遠藤さん。「やっとここに立てました。みんなのおかげです。ありがとうございます」という心からの感謝に、会場からは大きな拍手と歓声が湧き上がる。そして、悩んでいた時期に手を差し伸べてくれ、この人がいなかったら今の僕はないと評するランティス社長の井上俊次氏を呼び込む。今まで井上氏に面と向かって「ありがとう」と言う機会がなかったからと、この場を借りて真正面から頭を深々と下げる遠藤さんには井上氏も逆に照れ気味に。場がほのぼのとしたところで、遠藤さんが『ENSON』でセルフカバーした「あの河を越えて」を、遠藤さんたっての希望による井上氏のピアノでセッションする。
続いて、もう一人の大切な恩人として影山ヒロノブさんをコール。影山さんも「Good-bye to Yestearday」のギター演奏を頼まれたが、コーラスについては「なんで俺がキーの高いお前のそのまた上をハモらなあかんねん!」と文句を言い、会場を笑わせる。また去年の正月にみんなで近い目標を語り合った時に、遠藤さんが「O-EASTでワンマンでやりたい」と語り、それがついに実現したなという話で感動も振りまいた。
アンコールラストは「最後はみんなで歌って終わりたいと思います!」と、持ち歌から「爆竜戦隊アバレンジャー」「勇者王誕生!」を会場全体で大合唱。最後までまったく衰えない声量で歌い上げ、ボーカリスト・遠藤正明の魅力をたっぷりと魅せつけた。
遠藤正明『サイショでサイゴ!?のENSONライブ』
[09.1.24 渋谷O-EAST]
M-1 ETERNAL BLAZE(TVアニメ『魔法少女リリカルなのはA's』) M-2 空色デイズ(TVアニメ『天元突破グレンラガン』) M-3 ゆずれない願い(TVアニメ『魔法騎士レイアース』) M-4 God knows...(TVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』) M-5 嵐の中で輝いて(OVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』) M-6 アンインストール(TVアニメ『ぼくらの』) M-7 君が空だった(TVアニメ『舞-HiME』) M-8 In the Chaos(TVアニメ『ギャラクシーエンジェル』) M-9 やつらの足音のバラード(TVアニメ『はじめ人間ギャートルズ』) M-10 <メドレー> スケッチスイッチ(TVアニメ『ひだまりスケッチ』) Butter-Fly(TVアニメ『デジモンアドベンチャー』) M-11 <メドレー> Go Tight!(TVアニメ『創聖のアクエリオン』) マブラヴ(PCゲーム『マブラヴ オルタネイティヴ』) Wing of Destiny(PS2用ソフト『ギャラクシーエンジェル 絶対領域の扉』) 鳥の詩(TVアニメ『AIR』) キミガタメ(PS2用ソフト『うたわれるもの 散りゆく者への子守歌』) M-12 もののけ姫(映画『もののけ姫』) M-13 ウルトラセブンの歌(特撮『ウルトラセブン』) M-14 明日へのbrilliant road(TVアニメ『宇宙のステルヴィア』) M-15 愛をとりもどせ!!(TVアニメ『北斗の拳』) M-16 キン肉マン Go Fight!(TVアニメ『キン肉マン』) M-17 創聖のアクエリオン(TVアニメ『創聖のアクエリオン』) M-18 銀河鉄道999(劇場版『銀河鉄道999』) ENC-1 GO GO POWER RANGERS(特撮『マイティーモーフィン パワーレンジャー』) ENC-2 あの河を越えて(TVアニメ『虹の戦記イリス』) ENC-3 Good-bye to Yestearday(TVアニメ『魔装機神サイバスター』) ENC-4 爆竜戦隊アバレンジャー(特撮『爆竜戦隊アバレンジャー』) ENC-5 勇者王誕生!(TVアニメ『勇者王ガオガイガー』) |