劇団「乙女企画クロジ☆」福圓美里さん、松崎亜希子さんインタビ..

あふれる芝居スピリット! 話題の劇団「乙女企画クロジ☆」主宰の福圓美里さん、松崎亜希子さんにインタビュー[後編]

2005年の立ち上げから第6回公演を経た現在に至るまで、アニメや舞台ファンだけでなく、業界関係者からも注目を集めている劇団「乙女企画クロジ☆」から、主宰の福圓美里さんと松崎亜希子さんのインタビュー後編をお送りいたします。

劇団「乙女企画クロジ☆」といっても、主な構成メンバーは声優としても活躍されている、福圓美里さん、松崎亜希子さんの2人のみ。公演ごとに違う作・演出家を招いて、さまざまなフィールドで活動する役者陣たちと共に、オリジナル作品を精力的に発表している劇団です。

今回も、「乙女企画クロジ☆」主宰のお2人のインタビューをお届けします。声優との両立についてや、お互いの関係など、たくさん語っていただきました。次回公演も12月に近づく「乙女企画クロジ☆」、要チェックです。

≫前編のインタビューはこちら!

謎?のポージングでカメラマンを惑わす(笑)福圓美里さん(左)と松崎亜希子さん(右)。毎回チケットが完売となる人気劇団「乙女企画クロジ☆」。興味のある人はぜひ一度チェックしてみよう。

謎?のポージングでカメラマンを惑わす(笑)福圓美里さん(左)と松崎亜希子さん(右)。毎回チケットが完売となる人気劇団「乙女企画クロジ☆」。興味のある人はぜひ一度チェックしてみよう。


●舞台活動と声優としてのジレンマ

――学生時代から演劇には触れていらっしゃったんですか?

福圓さん:私は小学校のときから舞台が好きで。プロとしてやっていたわけではないんですけど、本当に趣味でもなんでもいいから、一生板の上に立てていられたらいいやと思っていた。学生時代はずーっと演劇部にいて、そのあとは30人くらいしか入らないような小劇場で、ホコリまみれになりながら芝居をしていた時期もありました。

松崎さん:私は学生のときから演劇部で、とにかく芝居をやりたいとずっと思っていたんです。それと、私が声優の事務所に入ろうと思ったきっかけって、実はクロジからなんですよ。名刺がわりじゃないけど、ちゃんとした何かを持っていないと、私たちの団体がバカにされてしまうと思ったので、「私、事務所に入ります」と話をして、所属したんです。

――動機が逆付けな感じで珍しいですね。

松崎さん:その前から、ナレーションにも興味があって勉強していたんですけれど、舞台がやりたいんだったら舞台でいけ、声優がやりたいんだったら声優の事務所に行け、みたいな風潮がいまいち消化できなくって。「どうしたらいいんだろう?」と思いながらも、舞台が好きだからと舞台をやっていたんですけど、一度、本当に芝居をやりたいのかどうかが分からなくなり、芝居から離れていた時期もありました。それで、資格を取ったり、いろんなことをやってみたりしたんですが、やっぱり芝居がやりたいと思って、自分でプロデュース集団を立ち上げたんですね。そうして、「やっぱり芝居がやりたいんだ」と思ったときに、ちょうど「乙女企画クロジ☆をやりませんか?」という話になった。だったら、ちゃんとしたものを持っていないとダメだなと思って、事務所に入ろうと決めて。

福圓さん:舞台か声優かっていうのは、すごく難しくて。私が声優をやっていることで、応援してくださる方もいらっしゃるし、宣伝媒体の皆様もこうしてお力を貸してくださり、それは私も誇りに思っています。でも、かたや舞台だけをやっている方には、2足のわらじのように軽く見られることもあるんですよ。私は、どちらに対しても本気だし、他の演劇人よりも演劇を好きな気持ちが劣っているとは思わなくて、ずっと「なんで?」と思ってきました。「声優さんなのに舞台をやるんですね」なんて言われてしまうこともありました。でも、ここ最近は、「お前たちの演劇を好きな気持ちをくみ取って、力を貸してやる」という仲間が本当に増えてきて。一つのことを思い続けていけば、思わぬところで解決することってあるんだなと、今は本当にありがたく思っています。

松崎さん:結局、出したものが、いいか悪いか、好きか嫌いかということでいいんじゃないかなと思うんです。自分たちがお客さんに誇ってみせられるもの、恥ずかしくないものを提示できてさえいたら、どんな劇団でも関係ないと思っていて。

福圓さん:本当にここ数ヶ月の話なんですけど、舞台を中心に活動していらっしゃる方たちから、「これだけストイックに芝居のことを考えてやっている座組はそうそうあるものじゃない」と、協力してくれるだけじゃなくて、クロジを好きにもなってくださって、もう嬉しくって!! だから、これからも絶対に初心を忘れないで、参加してくださる方が舞台を愛せるような、そんな純粋なカンパニーでありたいなと思っています。


●作家とコラボレーションでオリジナル

――オリジナル作品では、どういうふうにコンセプトなどを決められるのでしょうか?

福圓さん:公演をやっている間に、「あれをやりたいなー」というのが私の中にボボボボって出てきて、それを松崎に「次、あれやりますか」と言うんです。で、亜希ちゃんが、「いいね!」と乗ってくるときと、「それはちょっと…」と言うときがあって。却下されたものに関しては、何か気分が乗らないんだろうなと思って、私も言わなくなるんですけど。

松崎さん:「いいね」って言ったときは。

福圓さん:「でしょ!」って盛り上がって。

松崎さん:でも、私たちは台本を書かないので、この人に書いていただきたいという作家さんのところに行って、お願いするんですよね。

福圓さん:前は、やりたいことはあるけど、それを産んでくれる人がいないから、「う~~む…」とずっと詰まっている感じだったんですね。でも、最近は「あの人が書くこれが見たい」というふうになって、非常に健康的です(笑)。今までは、出てきたのもが思い描いていたものと違うから「根本を書いて」なんて言ってしまい、そのたびに「クロジが書けばいいじゃないか」って、作家さんに言われてしまうことがよくあった。

松崎さん:それも「なるほどな」と思いつつ、書けないから言っているんじゃん!って(笑)。

福圓さん:『桜屋敷』の場合は、脚本の森さんがほとんど考えたものですね。ファンタジックなことがやりたいなと思い、2年くらい前に「おとぎ話みたいな話をやらない?」と話をして。それで、森さんに「そういうので1本書けないかな?」と振ったら、1週間後にもうプロットが上がってきて、それがほとんど『桜屋敷』の原型だった。最初は和風なものをイメージしていたので、想像していたものとは全然違っていたんですけど、私たちの発想の中にない世界観だったので、「これいいね!」となって。

松崎さん:私たちの想像通りも、もちろん嬉しいんですけど、それだとやっぱり2人だけの世界になるので。その作家さんの世界観がプラスされることにより、思ってもみない展開がすごく面白かったりして。『桜屋敷』は、「そんなことが!」みたいなことがいっぱいあって好きでした。

――12月に公演予定の第7回はどんなものになりますか?

福圓さん:私がずっとあたためていた企画なんです。5回公演のとき、本当は『アニメ大国ニッポン』じゃなくて、別にやろうとしていたものがあったんです。でも、当時は上手い形で出せなくて、急遽企画を変更したんですよ。そのずっと眠っていた企画を、渋谷幸平さんという小劇場で活躍されている方に出会い、「この人だったらあれを上手く世の中に出してくれるかもしれない」とお願いしたんです。『桜屋敷』とは180度違う、もうちょっと現実的な話になると思います。テーマはノスタルジックで攻めてみようかなと。

松崎さん:この段階でノスタルジックなんですけど、出来上がってみて全然違っていたらすいません(笑)。でも、今まで観に来てくださっている方に「第7回はこう来たか!」と思われるような、新しいクロジをお見せできるんじゃないかなと思っています。


●2人はまるで熟年夫婦!?

――芝居をやっていると、そこにいろんなエネルギーを持って行かれて、生活などのバランスをとるのは大変なのでは、と思います。

福圓さん:でも、芝居のことを始めると自分がどうなるか、なんだか分かってきましたね。芝居にかかっている間はスーパースターです。オーディション受かりまくりますし(笑)。

松崎さん:そう、舞台をやる前後の方が、みんな仕事が忙しくなるんですよ。

福圓さん:芝居のやり方が分かるのかな。一つ一つの仕事に対する準備期間はやっぱり減ってしまうんですけど、それでも演じるキャラクターが何を言いたいのかが一気に見えてくるし、眠くならないし、ナチュラルハイだし(笑)。

松崎さん:基本常にナチュラルハイでしょ(笑)。

福圓さん:(笑) 食事や睡眠の感覚が若干狂い始めるんですけど、今は慣れてきて、「きたきたこの時期!」みたいになって。それは心地いいですね。

――生活のリズムとは違う自分のモチベーションがあって、それが生活を凌駕して、波に乗るみたいな楽しさがあるんですね。

福圓さん:そうですね。それがすごく自由で。私は人見知りで、普段はあまり言いたいことも言わないんですけど、その時期だけ人と対等に喋ることができる(笑)。

松崎さん:たぶん一番人格にも影響されるのが福圓です(笑)。

福圓さん:でも、事務所がなによりも守ってくれていて。私のことをずっと見守ってくれているマネージャーさんが、舞台をやることに賛同してくれているんですよ。最初はやっぱり心配されたんですけど、毎回見に来てくれて。「この子は舞台をやっていないとダメになる」ということを、誰よりも理解してくれています。

――お互いの存在については、どのように感じていらっしゃいますか?

福圓さん:これは解決したことだから言えるんですけど、1回だけ解散しましょうという話が出たことがあるんです。それまで3人でやってきたものが、2人になり、そうするとお互いの見ているビジョンがどうしてもずれてしまい、もう無理かなぁと思ってしまって。でも、今は綺麗に見えているので大丈夫。これでもかというくらい。「夫婦」ですね(笑)。

松崎さん:前は「恋人」とよく言われていたんですけど、もう何かを超えてしまった(笑)。ちなみに、福圓が旦那で、私が妻なんですけど、クロジでの役割も、お父さん、お母さんになっていて。もともと、2人とも好きなものややりたいことって、けっこう似ていたんですけど、今はどのワードに対してどう反応するのかが2人とも同じなんです。以前、遠くで誰かが喋ったワードに反応して、2人ともハッと顔を上げたとき、鏡越しで眼が合ったことがあって、ある意味ちょっと気持ち悪いくらい(笑)。「ああ、今こう思っているんだろうな」っていう空気がもう互いに筒抜けで、毛穴から“もわ~ん”って何かが出ているんです(笑)。

福圓さん:役割みたいなものは、私がクロジをこうしていこうとか、今回はこの方に頼んでこうやりましょう、という道筋を引いていって、亜希子ちゃんがその交渉をやってくれるんです。で、何か起きたときには、「どう対応しようか」みたいなことを外枠から私が見て、稽古場の空気は亜希子が作ってくれるという。

松崎さん:計画と実行じゃないけど、うまく役割が分かれているんですよね。2人になったばかりの頃は、何が自分の役割で、何が相手の役割か分からなくて、ぐちゃぐちゃになったんですけど、今は自分のやるべきフィールドみたいなものが分かってきて。反対に、これは相手に任せておけば安心だ、っていうのがある。

福圓さん:ある!

松崎さん:喰いついた(笑)。たまに確認しあって大丈夫だねって言って、お互いまた自分のフィールドの仕事をやって、みたいな感じで、今、綺麗に分かれています。

福圓さん:で、仕事を任せたら任せたで、会話が少なくなるじゃないですか。それはそれでダメだと思っていた時期もあって、小さいことから話すようにしていたんですけど、今はそれすらも意識しなくてもよくなりました。会話が必要なときは自然と2人で寄っていくし、しなくて大丈夫なときは離れていくし。同じ時に感じられる、みたいなね。

松崎さん:新婚夫婦じゃなくて、熟年夫婦です(笑) 。


●観客が一生忘れられない舞台を

――今後は、より大きな劇場や、より長い公演など、規模も広がっていくのでしょうか。

福圓さん:とりあえず10回目までは、やることがうっすら決まっていて。

松崎さん:決めておかないと、リアルな話、劇場が取れないんですよね(笑)。

福圓さん:それと、クロジの夢物語だったことが、2009年の秋に叶いそうなんです! そうなってくると、何年でどれぐらいのことが実現できるのか、ということも見えてくるじゃないですか。

松崎さん:いくつかやってみたいことがあるので、それをどのタイミングで織り込んでいくのかは、また会議で決めて。10回公演までのフラグは立っているので、それに向けてどういうルートを歩んでいこうかということも考えながら、劇場も決めていきたいなと思っています。

――結果も上々で舞い上がりかねないところですが、やはり1回目からの経験が、一番の武器になっているんですね。

福圓さん:今ここで気を抜いたり、舞い上がったりすると、どういう結果が出るのかが分かるようになってきて。経験や、続けていくことって大事だと思います。

―――ちなみに、お話を聞いていると、劇団としてのテーマに掲げていらっしゃる、「女」と「虚構と生々しさ」にも、今後はあまりしばられないのでしょうか?

福圓さん:いえ、「虚構と生々しさ」は、やっぱりやっていきたいことの一つです。全くリアルだとつまらないと思うし、ちょっとしたファンタジーの要素って絶対あった方が面白いと思うので。でも、やりたいことはファンタジーじゃなくて、ファンタジーを通して見せる人間の何か、なんですね。それを色濃く出していきたいなって。「女」については、次回公演は男性作家さんなので、もしかしたら離れていくかもしれませんが。

――今後の展望は?

松崎さん:もっと、自由になっていけたらいいなって思います。最初の頃は、こうしなきゃいけない、こうしないとダメだと思うことが多かったんですけれど、回を重ねるごとに周りの方のいろんな協力を得て、クロジはいろんなことができるんだと分かってきた。思いついたことや、楽しそうなことを、もっといろいろできるんじゃないかなと、自由にやっていけたらなと思っています。

福圓さん:観る方の胸をえぐるような、一生忘れられないような舞台を作れるまでは頑張っていきたい。これは1回目から思っていることなんですけど、本当にそれだけですね。

――それでは、最後に記事を見てくださっている方へ、メッセージをお願いします。

松崎さん:第7回公演は、今までのクロジの中でもまた異色の作品になると思うんですけど、「こうきたか!」「こういうクロジもいいな」と思ってもらえるように、頑張っていきたいと思っています。

福圓さん:まだ、クロジの舞台を観たことがないという方がたくさんいらっしゃると思いますが、興味本位でいいので、ぜひふらっと遊びに来てください。そうしたら、絶対ソンをさせない自信があります。そして、いつもクロジを応援してくださっている方、これからも“妥協を許さない”をテーマに奮闘していきたいと思いますので、どうかウチについてきてください!

福圓さん・松崎さん:よろしくお願いします!


Stage■乙女企画クロジ☆第7回公演「僕の愛した冒険」
公演日:2008年12月25日(木)~28日(日)
会場:新宿・シアターモリエール
作・演出:澁谷光平(スプリングマン)
キャスト:市来光弘、木村はるか、波多野和俊、福圓美里、藤波瞬平、松崎亜希子、武藤啓太、若林直美ほか(五十音順)
一般チケット発売日:10月26日(日)

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